ウラリカ
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特集:フィン・ウゴルの口承文学
論文
  • — A case study of Japanese L1 speakers learning Hungarian as an L2 —
    Kiyoko Eguchi
    2025 年19 巻 p. 25-46
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/17
    ジャーナル フリー

     本研究は、日本語母語の中級 (CEFR B1) レベルのハンガリー語学習者が、垂直方向の複雑経路局面を含む移動事象をどのように表現するかを検討するものである。Talmy (1985, 1991, 2000) の移動表現の類型論では、ハンガリー語は日本語とは異なる類型に属するとされ、ハンガリー語では主に動詞接頭辞と格接辞といった動詞以外の要素によって経路が表現されるのに対し、日本語では主動詞によって表現される。

     本研究では、映像を用いた口頭産出実験により、垂直方向の複雑経路局面を含むジャンプ場面(例:箱の中から椅子の上へ飛び上がる)を対象として、日本語母語のハンガリー語学習者の表現 (H-L2(j)) の特徴を分析した。その結果、H-L2(j)では、これらの場面では本来不要であるダイクシス動詞を様態動詞の代わりに主動詞として選択し、それを動詞接頭辞と組み合わせる傾向が明らかになった。このことは、学習者がハンガリー語の「動詞接頭辞+動詞」という構造を、日本語における経路動詞の代替表現として用いている可能性を示唆するものであり、このパターンは日本語の経路表現の影響を受けたものと考えられる。さらに、動詞接頭辞および格接辞の選択に関しても、H-L1との乖離が観察された。

  • Mayuko Fujita, Kiyoko Eguchi
    2025 年19 巻 p. 47-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/17
    ジャーナル フリー

     本研究は、ハンガリー語における直示移動動詞jön「来る」とmegy「行く」の選択原理を明らかにすることを目的とする。Sawada (2018) が日本語に対して提案した語用論的枠組みに基づき、(i) 話し手自身が移動主体となる場合、(ii) 他者が移動主体となる場合、(iii) 話し手と他者が共に移動する場合の3タイプの状況を設定し、ハンガリー語母語話者を対象とした2つの質問紙調査を行った。その結果、動詞選択は単に話し手の物理的位置のみによっては説明できないことが示された。とりわけ、目的地が話し手の「ホームベース」と捉えられ、かつ移動主体を迎え入れる意図が顕在化している場合には、話し手はその場に物理的に不在であってもjönが使用されうることが明らかとなった。また、話し手と他者が共に移動する場合には、jönの使用が広範に認められる一方で、目的地がホームベースでない場合にはmegyの使用が増加するという、日本語に類似した傾向も観察された。これらの結果は、ハンガリー語がCOME/GO動詞の使用において英語型と日本語型のあいだに位置づけられることを示すとともに、直示動詞の選択において目的地の語用論的な構築が重要な役割を果たすことを示唆している。

  • —双数名詞句の形式と意味に着目して—
    長谷川 朝香
    2025 年19 巻 p. 69-94
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/17
    ジャーナル フリー

     イナリ・サーミ語の一致形式には完全一致と部分一致の2種類があり, これらの一致の選択条件には主語名詞の有生性, 特定性および語順が関係しているとされてきた。本研究では主語名詞が双数を示す文例について, コーパスを用いた名詞句の有生性や形式と一致に関する定量的調査を行った。本稿の成果は次の4点である:(i)完全一致が起こる境界は有生 / 無生にある。ただし無生物名詞でも完全一致を起こしうる。(ii)双数名詞句の形式は一致の選択と関係する : [kyehti ‘two’ + NSG]は部分一致を好み, [NSG1+ ‘and’ +NSG2]は3人称単数の動詞との共起を好むむ。(iii)[NSG1+ ‘and’ +NSG2]が主語となる場合, 動詞に近い名詞の有生性が一致に関わる。(iv)3つの数(単,双,複数)にのみ部分的に一致し, 人称は3人称に中和する「一致」体系が存在する。

研究ノート
  • 大島 一
    2025 年19 巻 p. 95-110
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/17
    ジャーナル フリー

     本稿では,ハンガリー語の周辺方言,特に,オーストリア共和国ブルゲンラント州に居住するハンガリー語方言およびスロヴェニア共和国のプレクムリェ地方のハンガリー語方言における複数所有形のバリエーションについて記述する。これらのハンガリー語方言ではハンガリー本国の標準ハンガリー語における複数所有形とは異なり,単数所有に複数形を付加するといった方略を取る。また,オーストリア・ブルゲンラントで使用される複数形は,標準ハンガリー語でいう結合複数(associative plural)であり,スロヴェニア・プレクムリェでは通常の複数,すなわち累加複数(additive plural)であることも大きな特徴差である。両地域におけるハンガリー語話者たちは,それぞれドイツ語(ブルゲンラント),スロヴェニア語(プレクムリェ)との二言語使用者であるが,この複数所有における差から,それぞれの地域で支配的な言語と母語であるハンガリー語との言語接触から,オーストリア・ブルゲンラントではドイツ語の影響が少なからず見られるのに対して(複数マーカーの場所など),スロヴェニア・プレクムリェではスロヴェニア語の影響(双数など)は見られないことが観察された。

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