高層の建築物は都市の景観を形成する重要な一要素である.本稿では,東京での近年における超高層建築の著しい建設増を踏まえ,東京の景観が如何に変容しているかを明らかにし,その背景についての考察を行った.東京における超高層建築の建設動向は大きく3 つの時期に分けられるが,時を経るに従って建築数は加速度的に増加している.特に2002 年に成立した「都市再生特別措置法」は,超高層建築の建設に際しての様々な規制を大きく緩和し,建設増を著しく加速化させたものと考えられる.地域別に見ると,西新宿が早期から際立ったスカイラインを形成していたが,1980 年代後半からは都心部やウォーターフロント地域でも著しく高層化が伸展するようになった.ただし,様々な高さ規制により,どの地域でも超高層建築が自由に高く伸びることはない.とりわけ航空法による高さ規制は,東京のスカイラインの形状を大きく規定しているものといえる.
本稿は,1都7県に立地する287 店舗のコンビニエンスストアを,POS データに基づく販売特性からタイプ分類した上で,平日と週末での販売特性の差異を把握し,その背景にある地理的要因を検討する.分析の結果,287 店舗のコンビニエンスストアは7つの店舗類型に区分できる.各店舗類型を規定する因子は,主として外出先因子(昼間人口),家庭内因子(夜間人口),他業態代替因子(競合状況)の3因子である.また7つの店舗類型は,国道16 号線の内側に卓越する5類型と,外側に卓越する2類型に大別され,国道16 号線を挟んで店舗類型が大きく変化している.次にPOS データを平日・週末に分け,各別に店舗類型を作成すると,含まれる店舗は変化するものの,店舗類型そのものは平日と週末とでほぼ共通している.平日と週末とで属する類型が異なる店舗は,来街者の数や質が平日と週末で大きく異なるオフィス街や学校・駅周辺に多く分布する.
本稿は,愛知県春日井市東部の丘陵に建設された高蔵寺ニュータウンについて,その開発自体と,その過程においてなされた地形改変とを紹介するものである.1959 年当時と2002 年現在の都市計画図を入手し,それぞれの地図に50m メッシュを設定して,範囲内の標高分布を読み取ったり,両地図での標高の差分すなわち標高変化を求めることで,ニュータウンの開発に伴う地形変化を明らかにしたりすることを目指した.その結果,ニュータウンの範囲の大部分は埋め立て・盛り土によって造成された可能性があることが明らかとなった.とくに,本来の地形を活かすために,もともと谷であったところに設けられている傾向のある自動車用道路沿いが,実際には埋め立てによって造成されている可能性が高いことが明らかとなった.こうした造成は地盤の弱い箇所を生むが,住民の多くはそうした造成過程を知らず,地震などの災害時への対応が懸念される.
2012 年にテレビアニメとして放映された作品「氷菓」をめぐっては,その舞台となった岐阜県高山市を訪れる観光客の動き「アニメ聖地巡礼」が確認されている.本研究は,それら「アニメ聖地巡礼」者だけでなく,同市市街地を訪れている観光客の層と,それらの観光客の動きの特色を分析したものである.2014 年6 月に高山市内の5 つの調査地点において質問紙調査を行い,計623 組,1,958 名以上分の観光客から回答を得られた.その結果,回答観光客全体では,名古屋大都市圏からは多くの観光客が日帰りで,関東地方および近畿地方からは多くの観光客が宿泊を伴って,高山市の市街地を訪れていたことが明らかになった.このうち48 組(全体の7.7%)が,アニメ作品「氷菓」を視聴した上で高山市を訪れていた.また,回答観光客全体は幅広い世代にまたがっていた一方で,「氷菓」を視聴した観光客は20 代が圧倒的に多くを占め,男性のみの団体観光客が目立った.さらに,回答観光客全体では,歴史的町並みの広がる「さんまち」地区と高山駅との間といった狭い行動範囲にとどまるのに対して,「氷菓」を視聴した観光客は「聖地」を求めて,広範囲かつ頻繁な動きをみせることが明らかになった.
本稿は,日本最大のゲイバー集積地である新宿二丁目を対象として,ゲイ・ディストリクトの発達モデルを参照しながら,ゲイ・ディストリクトの空間的特徴と存続条件を検討した.ゲイバーの立地傾向の分析,ゲイバー経営者やテナント供給者への聞き取り調査の結果,新宿二丁目では,ゲイバーの経営方針によって店舗の立地に差異がみられ,コストを抑えるリース店舗の存在やカミングアウトの軽減,物件供給に携わるキーパーソンの存在によって維持されている一方で,ゲイ・ディストリクトの消失につながる地域住民との緊張関係も潜在的に存在していることが明らかになった.ゲイ・ディストリクトとしての新宿二丁目は,発達モデルおよびそのモデルに対する批判的論文において示された特徴を部分的に有しており,このことは各都市のゲイ・ディストリクトをより広い枠組みで解釈する必要があることを示唆している.
高蔵寺ニュータウンの開発と地形改変
公開日: 2020/04/08 | 4 巻 p. 51-61
山元 貴継
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日本に一番近い街 -韓国・釜山の都市誌-
公開日: 2020/02/29 | 1 巻 p. 50-58
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敗戦後長崎県佐世保市の歓楽街形成史
公開日: 2019/04/07 | 10 巻 p. 61-77
吉田 容子
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東京における超高層建築の著増と都市景観の変容
公開日: 2020/02/29 | 1 巻 p. 3-18
芳賀 博文
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上海市の人口分布の現状と問題
公開日: 2020/02/29 | 1 巻 p. 69-73
王 徳
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