都市地理学
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論説
  • 森川 洋
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 1-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     今日,日本国土の抱える最大の問題は東京一極集中と辺地市町村における人口激減である.国勢調査(2020 年)を中心としてこれらの問題について検討した結果,次のことが明らかとなった.  市町村の年齢階級別人口構成は人口増減率と密接な関係にあり,沖縄県を除くと年少人口率の地域差は比較的 小さく,後期高齢者率の乖離値が大きい.中核都市(県庁都市,準県庁都市)以上の大都市では後期高齢者卓越 タイプは皆無で, 人口減少率は低いのに対して,遠隔(辺地)の中小・零細都市(3 万~ 20 万人未満)や町村部 では後期高齢者卓越タイプの市町村が多く,人口減少は将来も続くものと推測される.  大都市圏の市町村では通勤通学率がきわめて高く,日々膨大な通勤通学者が流動しており,居住地内でのみ生 活する人は少なく,地方住民の生活とは大きく異なる.東京特別区の通勤通学圏は1都3県だけでなく茨城県に も広がる.一方,東京特別区に人口を供給するのは全国の大規模な都市である.最大転出超過先とする市町村は 252 を数え,南関東を超えて広く分布し,東京特別区のいわゆる「遠郊地域」が大きく拡大している.福岡市や 札幌市は広域中心都市として域内に強い勢力をもつが,仙台市は東京特別区によって勢力を奪われ,広島市の状 態に近づきつつある.地方の中小都市や町村部の若者の多くは中核都市に流出し,直接東京特別区に向かうもの は少ない.  製造業就業者率を都道府県単位にみると,東京圏・関西圏では低下がみられるものの,滋賀県から東海・北陸・ 北関東にかけて高率の地域が広がり,東京の影響力は強化され,国土の中央部を中心とする地帯性が顕在化して いるようにみえる.  東京一極集中の是正には「遠郊地域」や地帯性まで含めて考慮すべきであるが,東京一極集中の是正と人口激 減地域の改善には別途の施策を必要とする.中枢中核都市がダム機能を発揮した場合には,遠隔地方都市や辺地 町村からの人口を今日以上に吸引する可能性が強いからである.  国勢調査の実施ごとに定期的に国土構造の変化を正確に捉え,国土政策に生かしていくことが大切である.
  • 中村 努
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 22-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     名古屋市緑区に本部を置く南医療生協では,班をベースとして,支部(小学校区),ブロック(中学校区), 地区(市)と介護保険や行政との交渉力も念頭に入れたボトムアップ型のガバナンスを形成している.同組合では, 台風被害や公害問題への対応を契機にした住民自治の長年の蓄積によって,組合員による組織運営への主体的関 与が実現している.その特筆すべき成果として,①再開発地区への移転,②おたがいさま運動による生活支援が 挙げられる.とりわけ,後者の相互扶助機能は,豊明市による公的保険外サービスを実現するために活用された. すなわち,豊明市の事例では,①既存の住民の相互扶助機能の活用,②自治体首長のリーダーシップ,③コーディ ネーターの窓口機能によって,有償ボランティアが生活支援ニーズを満たしている.
  • 杜 国慶, 佐藤 大祐, 康 乃馨
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 35-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は東京都区部を事例として,中国人観光者の空間的飲食選好構造を解明した.観光支援アプリに 掲載されている738 軒の飲食店の情報をもとに,GIS を用いて各飲食店の最寄駅となる73 駅を抽出し,飲食店の 料理分類26 種類ごとにクチコミ投稿数と一人あたり消費額を分析した.最寄駅の飲食店数には格差が目立ち,ま た中国人観光者の飲食選好は主に肉類と海産物,ラーメン,カフェ・喫茶に集中していた.さらに,各最寄駅の 空間的なポテンシャルを示す指数を考案し,指数の平均値と標準偏差に基づいて73 駅を5 次に区分した.この駅 間の空間的階層性に飲食店を結びつけて分析した結果,基本的には銀座と新宿の2 極構造であり,山手線と銀座 線が2 極と浅草を繋いでいた.銀座とその周囲では外国人観光者に定番の料理が選好され,新宿とその近傍では クチコミやSNS に動因を有すると思われる消費がなされていた.加えて,料理分類26 種類を,5 中心駅との関係 を重視して特化型,依存型,分離型に区分したところ,駅間の階層性が加味された空間的飲食選好構造が明らか となった.
  • オランダ・レーウワールデンを事例に
    池庄司 規江
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 48-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     本研究は,2018 年「欧州文化首都」の一つであるオランダ・レーウワールデンにおける文化事業のうち, 街を構成する要素として残るミューラルを中心とするアートワークスに着目しながら,「多様性のなかの統一」を 実現するための事業において「欧州」がいかに表現されたかを明らかにすることを目的とした.結果,多くの市 民は生活の場である住宅地で統一性(欧州的なもの)と多様性(オランダ的なもの)の双方,そして通勤・通学 を通して旧市街地や駅周辺,あるいは道路沿いなどにおいてその他や無題のアートワークスを目にする.住宅地 における統一性と多様性のアートワークスの混在は,欧州人としてのオランダ人,あるいはオランダ人としての フリジア人という市民アイデンティの混在,すなわちその重層性と重なる.また,戴冠年である2018 年に大型 のミューラルが公共施設壁に描かれたものの,2018 年以降もミューラルの制作は継続的に行われている.この事 業の継続性は「欧州文化首都」の市民を文化によって動機付け,コミュニティを強化するという事業の目的に合 致するものであることが言えよう.
  • 申 知燕, 山本 健太
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 59-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     本稿は,東京で働く美容師が都市空間のなかでどのようにキャリアパスを形成し,またそのような行動が 都市空間にどのような影響を与えているのか,その一端を明らかにしたものである.美容師は日本では国家資格 職であるが,都市経済の中では一般にグレーカラー労働者として位置づけられている.かれらは激戦区でのキャ リアを通して,技術やセンスを磨いていく.職場の人間関係や顧客との関係,自身のライフステージの変化をきっ かけに,転職や独立をする.その際には,東京近郊において,地縁・血縁関係への依存,雇用形態の変更などの 方法を駆使しながら起業し,美容師としてのキャリアを継続しようとする.独立に際しては,激戦区でのキャリ アが技術とセンスを担保することになることから,かれらのキャリア形成過程は,大都市中心部の文化が郊外へ と伝播していくダイナミズムのひとつの形であると言える.
  • 個人と地域の格差の視点から
    西原 純
    原稿種別: 論説
    2019 年19 巻 p. 69-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
     日本にとって1990 年代前半期は少子高齢化や東京一極集中現象が激しくなり,その後の大変動(経済の 停滞,非正規雇用者の増加など)の開始時期であった.筆者はNishihara(2022)にてこの時期を対象に,政府 の基幹統計である就業構造基本調査の66 万人分の全就業者標本データ(非集計レベル)を,同基本調査と同じ方 法で日本全体の就業者6,400 万人分データに復元し,個人と地域の格差形成の視点から,独自に就業者所得格差 の集計と分析を行った.本稿は,筆者自身のこの旧稿に新しい視点・手法を加えて改稿したものであり,以下の 結果を得た.(1) 個人の社会属性の枠組みによる構造的な個人格差が明瞭で,特に男性で顕著である.パス解析を 援用して整理した所得格差形成のメカニズムには男女の違いがある.結婚が女性のキャリアパスの旋回軸となり, 所得の多寡に強く影響している.(2) 女性に比較して男性には,地帯(中心−周辺構造)/都市システム(都市階 層)という2段階の地域の枠組みによる明瞭な地域格差がある.主要80 都市を対象にした都市システム内での都 市単位の分析では,男性で3大都市圏でも大阪大都市圏諸都市の低位が,地方圏でも国土の縁辺部の県域中心都 市の低位が明瞭であった.極言すると日本での所得の地域格差とは男性の地域格差によって形成されている.所 得の地域格差は,就業者の不均等分布による地域での社会属性の異なった就業者の構成状態(構成効果)と,同 じ社会属性の就業者での所得の違いなどの地域の階層的特性(階層効果)という2つの形成要因に整理されるが, 産業分野を例として分析すると階層効果がより大きい.特に男性の3大都市圏と地方圏の所得において,階層効 果はそれぞれ全国平均値から12% 程度押し上げる,低下させる作用があった.(3) 地理的階層分散分析によると 就業者全体の格差に対する地域格差(地帯/都市システム)の割合は非常に小さく,個人格差の割合が90% 超を 占めた.(4) 就業者を単位に所得を目的変数とする実験的な回帰モデル分析では,地帯/都市システムや個人の社 会属性からなる変数で説明できる割合(固定効果)は30% 程度で,モデルで捉えきれない個人的事情による部分(ラ ンダム効果)が大きい.特に女性でその部分がより大きい.
研究ノート
  • 福岡県福津市を事例として
    岡 祐輔
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年19 巻 p. 87-
    発行日: 2019年
    公開日: 2026/09/13
    ジャーナル フリー
    近年,観光まちづくりを進めるにおいて,地域の寛容性が地域外人材の定住を促し,地域の経済,文化, 社会的活性化をもたらす要件として注目されている.しかし,観光地化が進んでいない地域における地域外人材 や受け入れ側の住民の意識が,どのように形成されているかは明らかにされていない. そこで本稿では,福岡市近郊の観光地である福岡県福津市津屋崎地区において,地域外人材の移住・起業の動機 やまちづくり活動を起こした経緯を整理した上で,観光による社会的効果と,寛容性の形成との関連に着目しな がら,地域外人材に対する先住の移住・起業者および住民が物件を紹介したり,地域活動を支援したりする動機 を検討した. 結論として,津屋崎地区では,観光地化が進んだ地域のように多くの移住・起業者の相談のコミュニティが存 在しているわけではなく,少数のイノベーション人材による影響が大きかった点や,彼(女)らによって次の地 域外人材に対する支援が行われ,イベントなどによって交流人口が増えたり,移住者が増えて地域が活性化した りすることは,既存住民の地域活性化への参画意識や地域への誇りが形成されていく要因になっていた点を指摘 した.
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