都市有害生物管理
Online ISSN : 2435-015X
Print ISSN : 2186-1498
10 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 辻 英明
    2020 年 10 巻 2 号 p. 47-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    前年(2016 年)5 月 2 日に屋外の樹洞で,大中小混合のクロゴキブリ越冬幼虫群が粘着トラップに捕獲され,著者により A 群と呼称された(辻,2018a).2017 年の 4 ~ 8 月に,同じ樹洞内越冬幼虫のより正確な発育と,成虫を含む餌への摂食行動を調べる目的で,一辺 14 cm の正三角形のケント紙上に合計 7 個の餌を付着させたものを樹洞の入り口に設置し,摂食する個体の自動シャッターカメラ撮影を行った.その結果,4 月 30 日には中~大型幼虫,7 月 3 日には大型幼虫,8 月 4 日には大型幼虫と成虫がケント紙上に出現して餌を摂食した.越冬幼虫の発育と羽化傾向が 2016 年の成虫出現傾向とほぼ一致したので,大型越冬幼虫は勿論,小中型越冬幼虫も年内に羽化するものと判断された.これにより「小型の越冬幼虫は大型幼虫となって再度越冬する」という従来の推定は変更すべきと判断された.
  • 吉田 貴大
    2020 年 10 巻 2 号 p. 51-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    日本の空港・港湾で輸入品に混入していたホソヒラタムシ科甲虫を調査した結果,94 個体の標本から 11 属 17 種を確認し,各種の識別法を検討した.このうち,10 種はこれまで日本から記録がなく, Telephanus 属と, Monanus 属の Monanops 亜属は属・亜属単位で記録がなかった.また,確認された種のうち 9 種はこれまで物資の移動による導入が確認されておらず, Monanops 亜属は亜属単位で初めての導入の確認となった.さらに,本研究を遂行するうえで,日本産本科の分類学的問題点が判明し,以下の変更を加えた:平野(2009, 2010)で分布疑義としながら,日本産種に含められていた Monanus antennatus Grouvelle の日本からの分布の削除;ミナミホソヒラタムシ Silvanus robustus Halstead の日本からの分布の削除.ミナミホソヒラタムシは平野(2009)によって記録されたが,本種は, Silvanus lateritius (Broun) か Silvanus castaneus MacLeay であることが判明した.
  • 槇村 浩一, 小森 綾, 藤崎 竜一, 田村 俊, 佐藤 一朗, アレシャフニ ムハンマドマハディ, 槇村 美保, 山西 千晶, 松田 浩幸 ...
    2020 年 10 巻 2 号 p. 67-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    ヒトの生活する環境における生物粒子を中心とした空気環境とその制御にかかる研究として,都内老人ホーム居室内における浮遊粒子および浮遊真菌を検討すると共に,市販の HEPA フィルター付き空気清浄ファンの短時間稼動による清浄化効果を評価することを目的とした予備的研究を行った.屋外の浮遊粒子数が室内より多い条件では換気によって室内の浮遊粒子数が 2 倍程度増加するが,換気を止めることによってそれ以前の粒子数に復元することが示された.また市販の HEPA フィルター搭載空気清浄ファン 30 分の稼働によって,室内における微小浮遊粒子数は 80%減少した.一方,真菌や花粉を含む小粒子に対する効果はこの短時間の稼働実験では明らかにできなかった.以上より空気清浄ファンの稼働は,屋外の大気汚染物質,並びに屋内のウイルス粒子に対して有効な室内環境管理法となる可能性が示された.
  • 宮ノ下 明大, 今村 太郎, 古井 聡
    2020 年 10 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    精米工場においてコクゾウムシ用の集合フェロモントラップを用いて,コクゾウムシのモニタリングを 2018 年 4 月から 2020 年 3 月まで 2 年間実施した.トラップは工場に 19 個設置し,1 カ月に一度回収して捕獲数を確認した.総捕獲数は,2018 年度は 1,378 個体,2019 年度は 2,042 個体であった.年間 100 個体以上の捕獲数の場所は,荷受室,粗選室,タンク室,精米室,糠室であり, 100 個体以下は精米室,無洗米室,包装室,出荷室,屋外であった.最多捕獲場所は,2018 年度は粗選室(278 個体),2019 年度は糠室Ⅱ(408 個体)であった.総捕獲数のピークは,2018 年は 8 月, 2019 年は 10 月であった.
短報
  • 宮ノ下 明大, 今村 太郎, 古井 聡, 曲山 幸生
    2020 年 10 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    七味唐辛子製品におけるノシメマダラメイガの発育について,28℃,相対湿度 70%,日長 16L8D の条件で調べた.七味唐辛子はそれぞれ製造元の異なる 5 製品を用いた.発育試験は,孵化幼虫 2 個体を各唐辛子 2.5 g に投入し,10 ~ 15 回繰り返した.羽化までの発育日数,羽化率,成虫生体重を記録した.七味唐辛子の 3 製品では平均発育日数は 32.3,34.4,37.5 日であり有意差がなかったが,2 製品では 41.6,45.7 日であり,他の 3 製品と比べると有意に長かった.唐辛子の揮発性成分には,昆虫に対する殺虫,忌避効作用が知られている.製品によって本種の発育日数に有意差があった結果は,唐辛子の揮発性成分量は製品毎に異なり,幼虫の発育に影響を与える可能性を示している.
  • 宮ノ下 明大, 今村 太郎, 古井 聡
    2020 年 10 巻 2 号 p. 87-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー
    精米工場において,玄米を精米する際に発生する微細な米糠が精米機内部で蓄積し固まったものは一般的に「糠玉」と呼ばれている.この糠玉が,工場内のノシメマダラメイガとコクゾウムシの発生源になり得るかを知るために,温度 25℃,相対湿度 70%,日長 16L8D で発育試験を行った.ノシメマダラメイガの糠玉での羽化率は 84.8%(n = 33),平均発育日数 ± SD は42.2 ± 4.7 日(n = 28)であった.成虫の平均生体重 ± SD は,雄で 6.9 ± 0.7 mg(n = 12),雌で 12.8 ± 1.5 mg(n = 16)であった.一方,今回の試験では,コクゾウムシは糠玉には産卵できないか,あるいは幼虫が発育できなかった.
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