チカイエカ(Culex pipiens f. molestus)の吸血雌,あるいは無吸血産卵性の雌から生まれた卵粒数とそれぞれの雌の翅長に及ぼす温度と幼虫期の餌量の影響を明らかにするため,1982年5月から11月まで長崎市内のアパートで採集したチカイエカの吸血雌から産まれた卵塊の卵粒数とその雌成虫の翅長を月別に調べた.平均翅長は5月から8月にかけて短くなり,その後再び長くなった.平均卵粒数も翅長とよく似たパターンを示し,両者の間には高い相関がみられた.しかし,個体別にみると卵粒数も翅長も大きく変化し,5月と7月にのみ相関がみられた.一方,21℃で飼育した無吸血産卵性の雌は27℃のものよりも,成熟濾胞数が多く,翅長も長かった.雌の翅長は成虫の体の大きさを表す指標であり,幼虫期の温度の影響を受け,翅長に伴って成熟卵粒数が変化することが判っている.それ故,吸血雌の産んだ卵粒数は温度の影響を強く受ける可能性は低いと考えられる.また,本実験で設定した幼虫の餌量では雌の翅長や成熟卵粒数は餌量の影響をほとんど受けず,幼虫期の温度の影響を受ける.