近年,
Schizophyllum commune (スエヒロタケ)などの担子菌(Basidiomycetes)を原因とする深在性真菌症の症例が広く認知されるようになってきた.しかしながら,生活環境における空中浮遊担子菌類の分布については報告事例が少なく,その実態が明らかにされていない.そこで,筆者らは,一般住宅の室内と近隣の児童公園3 か所を対象として,2017 年4 月から6 月にわたって空中浮遊担子菌類のサンプリング調査を実施した.調査の結果,担子菌類が含まれる白色糸状真菌が,全ての時期に調査対象場所から分離された.調査で分離された27 株の白色真菌を,ITS 領域の遺伝子配列解析によって同定した.その結果,26 株が担子菌門に属し,2 目4 科8 種に分類された.同定された菌株のうち,病原性担子菌として知られる
Trametes hirsuta(アラゲカワラタケ)が10 株と最も多く,次いでスエヒロタケが5 株だった.アラゲカワラタケは6 月に半数以上が分離され,季節性が示唆された.本調査の結果,住宅内や近隣の児童公園でアレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis)の原因として知られる担子菌類が普通に浮遊していることが明らかになった.
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