植生学会誌
Online ISSN : 2189-4809
Print ISSN : 1342-2448
ISSN-L : 1342-2448
13 巻 , 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 上條 隆志
    原稿種別: 本文
    1996 年 13 巻 2 号 p. 59-72
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.伊豆諸島八丈島の垂直分布と遷移ならびに主要構成樹種のニッチ拡大をあきらかにするために,種が豊富で八丈島と気候的,地質的に類似している南九州の黒島(更新世火山)および開聞岳(完新世火山)との間で,垂直分布の比較研究をおこなった.
      2.八丈島の八丈富士(完新世火山)ではタブノキ林が優占していたのに対して,三原山(更新世火山)ではスダジイ林が優占し,山頂部周辺のみにタブノキ林が分布していた.このような分布様式は,大局的にはタブノキ林からスダジイ林への遷移的関係により成立しているものと考えられた.
      3.開聞岳や黒島と比較すると八丈島のスダジイ,タブノキならびにヒサカキは,カシ類を欠くことによって垂直的な優占域の拡大,すなわち,その垂直的なニッチを拡大していた.特に,三原山山頂部周辺のタブノキ林は,カシ類の欠如によるタブノキの優占域拡大により成立した特異的な森林タイプと考えられた.
      4.種の垂直分布パターンは,八丈富士と開聞岳,三原山と黒島とは異なっていたのに対して,生活形の垂直分布パターンは類似していた.いずれも山頂部は常緑小型葉樹が多くなるが,新しい火山(八丈富士と開聞岳)でより顕在的になっていた.このことから生活形の垂直分布はフロラが異なっても,類似した環境下では一定のパターンを示すものと考えられた.
      5.以上のように,八丈島では,カシ類をはじめとする樹種が欠けることによって,それらの種が占めていた分布域を島に生育する他の樹種(スダジイ,タブノキ,ヒサカキ)が埋めること,すなわち,島に生育する種のニッチの拡大が生じていることがあきらかになった.
  • 西尾 孝佳, 福嶋 司
    原稿種別: 本文
    1996 年 13 巻 2 号 p. 73-86
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 九州地方のブナ林の組成分化の実態を明らかにするために,ブナ林と隣接群落から収集した450の植生調査スタンドを基に組成と環境要因の両面からの考察を試みた.
      2.群落組成の検討では,九州のブナ林の島状の分布形態を反映して隣接群落との組成的関連性が強かった.そのうちでも渓谷林との関係が密であった.DCA法による解析の結果では,1軸は温度,海抜高度と,2軸は地形を介した水分環境と高い相関がみられた.
      3.群落単位とDCA法の展開結果との関係でみると,第四紀の山岳では地形形成作用の歴史が浅く,立地環境の変化が小さいため,群落分化も進んでいないが,古生層の山岳では逆に多様な立地の形成を反映して,湿性に偏る多くの群落が発達していた.そして,第三紀の山岳はその中間的な性質であった.
      4.地質に関係して地形の発達程度が異なり,ブナ林内部の組成分化もこの影響を強く受けていた.特に古い地質の山岳では,湿性群落への分化が明瞭である.湿性群落への分化に強く影響を与えたのは,渓谷林に分布の中心を持つ襲速紀要素の種であった.
  • 林 一六, 中村 徹, 黒田 吉雄, 山下 寿之
    原稿種別: 本文
    1996 年 13 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.長野県野辺山(標高1,350m)のやや湿った立地に成立したミズナラ林の成長を測った。測定は40年前まで薪炭林として用いていた二次林と、その林床および隣接した草原に植栽したミズナラ幼樹について行った。林床にはミズナラとブナの幼樹それぞれ16本ずつ、隣接した草原には100本のミズナラを植栽した。幼樹のサイズはミズナラ平均0.47m、ブナ1.53mであった。草原に植栽したミズナラ幼樹は0.53mであった。測定は1983年から1995年までであった。幼樹の計測は1983年から1993年までであった。
      2.林床に植えたブナは1986年の遅霜で14本が枯死したが、ミズナラはその時まだ開葉していなかったので、霜の害に遭わなかった。しかしその後、生き残った2本のブナは成長し続けたが、ミズナラは1995年までにすべての個体が死亡した。林外の草原に植えたミズナラは順調に成長した。成木のミズナラの平均胸高直径は1983年に11.5cmで、1995年には14cmとなり、12年間に2.5cm(1年間に2.1mm)成長した。その間に密度は400m^2当たり84本から73本に減少した。樹高は1983年に平均8.4mであったものが1995年には9.4mに成長した。
      3.林外に植えたミズナラの幼樹の根元の直径は1993年には平均1.1cmであったが10年後の1993年には5.8cmとなった。樹高は1983年に平均0.53mであったものが1993年には2.21mとなり、1年間に0.168m成長した。
      4.成林したミズナラ林の胸高直径のヒストグラムは1983年には正規分布からずれていたが、1986年にはほぼ正規分布となり、その後、正規分布への収束とそれからのずれが循環しているようにみえた。
      5.草原に植えたミズナラの樹高と根元の直径の積の相対成長率(RGR)の変動と雨量、気温との間の重回帰分析によると、その年のミズナラの成長には5月の雨がマイナスに作用していることがわかった。これは、その時期の雨そのものの効果ではなく、葉を展開するこの時期に天気がわるく日射量が少ないせいだと考えられた。
  • Putu Oka Ngakan, 田川 日出夫, 湯川 淳一
    原稿種別: 本文
    1996 年 13 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 1996/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    南九州霧島栗野岳の植生は、標高600m付近のタブノキ林、700m付近のイスノキ林、800mから頂上にかけてのミモ林からなる植生帯を構成している。ミモ林帯にはウワミズザクラやシキミを優占種とする二次林がふくまれ、この二次林は毎年襲来する台風による破壊が原因となっている。各森林について小方形区を設置し、1992年4月から1995年4月にかけて、一部の小方形区では1991年8月から実生の調査を行った。栗野岳の森林では殆どの実生種が母樹種と共存関係にあり、一部で母樹種がプロットにない種であった。一方水俣の国際生物学事業計画のための研究林では、大部分の散布子の種はプロット外からのもので、わずかな種のみがプロット内で自給されていた。この関係は、水俣の森林では多様化の過程にあり、栗野岳の森林は成熟の過程にあると考えられる。タブノキ林では台風で破壊された林冠の下で多数のイイギリの実生が発生したが、1年後にはその殆どが枯死した。一方、林冠種のタブノキの実生も発芽後急速に枯死するが、林床に残るわずかな実生の生存率は高く、次の豊作年まで生き残る。林冠を形成する種の実生の大発生はタブノキ以外では見られなかった。栗野岳頂上付近では二次種の実生が多く見られたが、極相林としてのモミ林へ移行する何らかの兆候は、短い観察期間に関する限り見られなかった。
短報
feedback
Top