1.塩類集積地における作物生産性を評価するために,周辺植生の群落分類から立地の塩集積程度を推定し,春播きコムギ収量との関係を考察した.
2.周辺植生の群落分類では,Salsola collina-Eriochloa villosa群落, Suaeda glauca群落, Lactuca tatarica-Suaeda heteroptera群落, Phragmites communis群落, Suaeda heteroptera群落, Suaeda heteroptera-Aeluropus littoralis群落の6群落が識別された.
3.本調査の総出現種数はわずか20種で,いずれの調査区でも出現種類は5種以下と少なかった.また,いくつかの調査区では1種または2種の優占により特徴づけられた.
4.群落区分間で土壌の理化学性を比較すると,塩類濃度は,S. heteroptera-A. littoralis群落で最も高く0.74%, S. heteroptera群落で0.48%, P. communis群落で0.42%, L. tatarica-S. heteroptera群落で0.27%, S. glauca群落で0.24%, S. collina-E. villosa群落で0.06%と低下した.Na, ClおよびSO_4含量は塩類濃度の変化とおおむね対応した.K, Ca, Mgの各含量は,いずれもS. collina-E. villosa群落で有意に低い値を示した.NO_3含量では群落間で有意な差は認められなかった.
5.コムギ収量は稈長,穂数,果実重,1000粒種子重を測定し,いずれも土壌塩類濃度,Na, Cl, SO_4含量の変化と負の相関を示した.またこれらは土壌塩類濃度に対して,0.3%付近より急激に低下し,0.4%以上ではほとんど収穫されなかった.
6.以上の群落区分を指標として行ったコムギ栽培適地の推定ではコムギはS. collina-E. villosa群落,S. glauca群落の成立する立地において一定の収量を確保することが可能と考えられた.なお,L. tatarica-S. heteroptera群落の成立立地では減収が,その他の群落の成立立地ではほとんど収穫は期待できないと予想された.
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