植生学会誌
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19 巻 , 1 号
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原著論文
  • 紺野 康夫
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    比良山系の蓬莱山(滋賀県)山頂付近にあるイブキザサ草原において植生調査を行い,優占種であるイブキザサの高さや被度の違いが共存種にあたえる影響を検討した.イブキザサは斜面下部で丈が高く,密生した.しかし,尾根に向かって高さが低下した.また,刈り払いやノウサギによる食害をうけると高さと被度の両方が低下した.草本は,斜面下部で種数が少ないだけでなく,被度が1%を越える種はなかった.しかし斜面上部や,刈り払いのある所では,合計被度,種数ともに増加した.このことはイブキザサの競争排除能力は,生育適地では大きいこと,しかしイブキザサの生育量の減少とともに低下することを示す.一方,低木層の木本は,イブキササが食害をうけている場所では増えたけれども,斜面下部から尾根にむかって増えることはなく,刈り払いがある所でも増えることはなかった.イブキササの高さや被度が小さくなると木本が必ずしも増えなかった理由は,冬期の強風や刈り払いに対して,木本か弱いことにあると考えた.
  • 周 進, 内藤 和明, 高橋 佳孝
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 11-23
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    本州西南山地における放棄草地の二次植生について,1998年の夏に植生調査を行い,遷移段階を比較した.放棄複0-2年後の草地は植物種数が最も少なく,単層の植生構造であった.低木群落(放棄後32年)は,低木層と草本層の2層からなり,イヌツゲ,ススキ,ネザサが優占種で,高木種の幼植物が低木層の中に散在していた,若齢の二次林(放棄後20-30年)は,3-4層の構造を持ち,樹冠はアカマツで占められ,時々リョウブを伴った.壮齢二次林(放棄後33年)は,高木層から草本層までの4層構造が発達し,コナラとクリが優占種であった.概略的にみると,放棄草地の二次植生の構造は,放棄されてからの年数に規定される.放棄した後の年次が増すにつれ,植生の高さは増大し(最大25m),構造が複雑化した(4層の垂直構造).また,優占度(DD)と基底面積(BA)のいずれも極相林(DDは7438, BAは6109cm^2/100m^2)まで遷移の進行とともに増大した.一方,草本層の植被率は,合計植被率が遷移初期からほぼ一定であったにもかかわらず,極相林の18.3%まで遷移の進行につれて減少した.遷移中期において,種数(放棄後32年の尾根群落で40種/100^2),樹幹の密度(放棄後30年で115±52/100m^2),枯死木の割合(放棄後33年で樹幹密度は11.8%, BAは6.5%)が最大に達した.
  • 大塚 俊之, 木部 剛, 鞠子 茂, 小林 和彦, 足立 龍晴, 小泉 博
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    野外に一定のCO_2の高濃度条件を作り出すFACE (Free- air CO_2 Enrichment)システムが世界で初めて岩手県雫石町の水田に設置された.このシステムを利用して,水田雑草へのCO_2施肥効果について検討した.田面水は水深の変動が激しく水中の植物プランクトンのバイオマスは比較的少なかった.7月と8月のFACE (ambient+200μmol mol^<-1> CO_2)区での植物プランクトンのバイオマスはわずかに増加したが,AMBI (ambient)区と有意差はなかった.栄養生殖が盛んな田面水表面のウキクサ類(アオウキクサとウキクサの2種)へのCO_2施肥効果がもっとも大きく,FACE区のバイオマスは8月でAMBI区の3倍, 9月でも1.6倍となった.AMBI区とFACE区での,その他の水田雑草(土壌中に根を持つ抽水植物や陸上植物)の種組成や植被率,多様性などの群落構造に違いは観察されなかった.除草剤や人為的な除草によって水田雑草へのCO_2施肥効果は抑制されたと考えられた.
  • 前迫 ゆり
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.タブノキの実生サイズと土中営巣性海鳥であるオオミズナギドリによる林床撹乱との関係を明らかにするため,オオミズナギドリ営巣地(京都府冠島)と非営巣地(京都府蛇鳥)においてタブノキの実生の高さと葉面積を測定するとともに,冠島においてタブノキ落果前の6月に保護区と非保護区各20プロットを設定した.比較のため,8月に冠島で採取したタブノキの液果を実験的に播種した.これらの実生群間における実生サイズの比較検討により,生物による林床撹乱と実生サイズの関係を考察した.
      2.播種実験において,タブノキの当年生実生は休眠することなく発芽し,初期成長過程のなかでは発芽後30日間の伸長生長速度がもっとも速かった.この時期はオオミズナギドリの巣穴補修活動・育雛活動にあたり,林床撹乱が活発な時期(8-9月)に相当する.
      3.冠島に設定した非保護区の当年生実生の高さは保護区に比べて有意に低いことが明らかにされたが,葉数は保護区と非保護区で有意差は認められなかった.
      4.タブノキの1年生以上の実生の葉面積(実生あたりの緑葉面積)の頻度分布は,冠島の実生群が逆J字型分布,播種実生個体群と蛇島実生個体群で正規分布型を示し,またそのレンジは冠島において顕著に低い値を示した.
      5.実生の高さ,葉長,葉幅,葉面積を冠島(営巣地),蛇島(非営巣地)および播種実験のタブノキ実生群で比較検討した結果,タブノキ当年生実生の伸長時期にオオミズナギドリによる物理的撹乱が働くことによって,その後の実生生長における伸長生長および葉面積の減少をもたらしていることが示唆された.
  • 石川 幸男, 沖津 進
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.中国黒龍江省,牡丹峰林場と大亮子河林場の発達途上のチョウセンゴヨウ林分において更新過程を調査し,十分に発達したチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林において観察されている林冠ギャップ内での更新過程との関係を明らかにした.
      2.牡丹峰の林分は調査した8方形区の平均胸高断面積合計が約38m^2/haと未発達であり,チョウセンゴヨウの優占性も低かった.これに対して大亮子河の林分は,胸高断面積合計が3方形区の平均で約57m^2/haと牡丹峰より発達しており,チョウセンゴヨウの優占性が約70%と高かった.
      3.成長錐コアによる年輪調査から,牡丹峰においては1950年代の山火事をきっかけとして,実生,前生稚樹双方に由来する一斉更新が起こっていた.また前生稚樹として待機していた長さは,最大で約100年に及んでいた.一方,大亮子河では1820年代から1860年代にかけて,現在の林冠層で優占する個体が定着していた.
      4.これら一斉更新後の発達途上にある2林分では,閉鎖林冠下においてチョウセンゴヨウの実生や稚樹はごく少なく,林冠がいくらか疎開している部分にわずかに見られた.
      5.林齢約50年の牡丹峰の林分のみならず,より老齢の個体から構成されている大亮子河の林分においても,林冠構成個体の樹冠サイズはチョウセンゴヨウの定着に適した林冠ギャップサイズよりは小さかった.このため,単木枯死による林冠ギャップが形成されても実生の定着は起こりにくいものと考えられた.
      6.調査した2林分に見られたような一斉更新後の発達途上の同齢的な林分では,次世代のリクルートは大規模撹乱に伴う次の一斉更新に依存する.これに対して,同齢林が十分に発達して初代の個体が林冠で枯死する段階まで移行できれば,単木的な林冠ギャップによる更新が可能となり,異齢的な齢構造をもつ森林へと移行すると結論した.
短報
  • 岡本 智伸, 中村 未樹, 椛田 聖孝, 王 〓生
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2002/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    Stipa baicalensis群落を採草利用した場合の特性を明らかにするため,中国東北部ステップにおいて隔年で採草利用されているStipa baicalensis-低木群落の植物種構成およびいくつかの植物生態学的指標を調査した.出現種数は37種であり,そのうち1種が低木(Prunus sibirica),36種が多年草であった.優占種はArundinella hirtaであり,Cleistogenes squarrosa, Artemisia scoparia, Carex duriuscula, Potentilla chinensis, Prunus sibirica, Leymus chinensisそしてStipa baicalensisが順に追従した.植被率,Shannon-Weaverの多様度指数(H')および遷移度(DS)はそれぞれ91%, 3.7bitおよび209.4DSであった.それぞれの構成種の積算優占度SDR_4 (y)はそれらの優占順位(x)の指数関数として以下の様に表された : y=64.8 exp (-0.11 x).採草利用されている群落は放牧利用されている群落とくらべ,構成種数が多いこと,いくつかの直立型および分岐型の種が出現すること,1年生および踏圧耐性種が出現しない点で異なった.
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