植生学会誌
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19 巻 , 2 号
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原著論文
  • 西尾 孝佳, 一前 宣正, 〓 景玉, 劉 小京, 但野 利秋
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.塩類集積地における作物生産性を評価するために,周辺植生の群落分類から立地の塩集積程度を推定し,春播きコムギ収量との関係を考察した.
      2.周辺植生の群落分類では,Salsola collina-Eriochloa villosa群落, Suaeda glauca群落, Lactuca tatarica-Suaeda heteroptera群落, Phragmites communis群落, Suaeda heteroptera群落, Suaeda heteroptera-Aeluropus littoralis群落の6群落が識別された.
      3.本調査の総出現種数はわずか20種で,いずれの調査区でも出現種類は5種以下と少なかった.また,いくつかの調査区では1種または2種の優占により特徴づけられた.
      4.群落区分間で土壌の理化学性を比較すると,塩類濃度は,S. heteroptera-A. littoralis群落で最も高く0.74%, S. heteroptera群落で0.48%, P. communis群落で0.42%, L. tatarica-S. heteroptera群落で0.27%, S. glauca群落で0.24%, S. collina-E. villosa群落で0.06%と低下した.Na, ClおよびSO_4含量は塩類濃度の変化とおおむね対応した.K, Ca, Mgの各含量は,いずれもS. collina-E. villosa群落で有意に低い値を示した.NO_3含量では群落間で有意な差は認められなかった.
      5.コムギ収量は稈長,穂数,果実重,1000粒種子重を測定し,いずれも土壌塩類濃度,Na, Cl, SO_4含量の変化と負の相関を示した.またこれらは土壌塩類濃度に対して,0.3%付近より急激に低下し,0.4%以上ではほとんど収穫されなかった.
       6.以上の群落区分を指標として行ったコムギ栽培適地の推定ではコムギはS. collina-E. villosa群落,S. glauca群落の成立する立地において一定の収量を確保することが可能と考えられた.なお,L. tatarica-S. heteroptera群落の成立立地では減収が,その他の群落の成立立地ではほとんど収穫は期待できないと予想された.
  • 石田 弘明, 戸井 可名子, 武田 義明, 服部 保
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 2 号 p. 83-94
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.大阪府の都市部に残存する孤立二次林(孤立林)を対象にして,二次林生種の種数および分布と面積の関係について調査し,その結果を兵庫県三田市フラワータウンの孤立林の研究結果(服部ほか1994)と比較した.
      2.種数と面積の間には,Gleason (1922)のモデルとArrhenius (1921)のモデルのいずれを適用した場合にも高い正の相関が認められた.また,この結果は服部ほか(1994)の結果と同じであった.
      3.単位面積あたりの種数を本調査地域とフラワータウンとで比較したところ,本調査地域の孤立林の種数は,いずれの面積についてもフラワータウンのそれより10-20種程度少なかった.この種数の地域差の主な要因は,里山における人の収奪の歴史やその程度の違いと,孤立化してからの経過時間の違いの2つであると考えられた.
      4.小面種化に対する分布傾向の類似性に基づいて,出現種を3つの種群に区分した.すなわち,約10000m^2以上の孤立林に分布が偏るA群,約1000m^2以下の孤立林で欠落傾向を示すB群,小面種化に伴う欠落傾向が認められないC群である.
      5.A-C群の構成種の生活形を種群ごとに調べた結果,多年生草本,特に好適湿性のシダ植物が小面積化に伴って著しく欠落する傾向が認められた.こうした好適湿性の多年生草本の欠落傾向は,フラワータウンの孤立林で認められた傾向と共通していた.好適湿性多年生草本の欠落には,エッジ効果などによる土壌の乾燥化と小面積化に伴う適湿性微地形の欠落が大きな影響を及ぼしていると考えられた.
      6.フラワータウンでは小面積の孤立林にも生育しているが,本調査地域では欠落する傾向にあるという種が数多くみられた.このような分布傾向の地域差には,種数の地域差と同様に,里山における人の収奪の歴史やその程度の違いと,孤立化してからの経過時間の違いが強く関係していると考えられた.
  • 菊池 亜希良, 恩田 裕一, 中越 信和
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 2 号 p. 95-111
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.湧水湿地の植生の植生配分を明らかにするため,地下水の流動に着目した.
      2.地下水位は観測井戸を用いて,地下水流動は長さの違う複数のピエゾメーターを併用して調査した.
      3.地下水位の変動は平水期における地下水位の低下に起因していたため,安定して湿潤な環境は平水期に地下水位が高い立地であった.
      4.コシダ-オタルスゲ群落は,種組成の検討と地下水位による群落の序列から湿地植生と斜面植生の推移帯に位置付けられた.
      5.それ以外の湿地植生,すなわちコイヌノハナヒゲまたはオオミズゴケの生育によって特徴付けられる湿地性の群落は,地下水位が豊水期に-20cm以上,平水期に-30cm以上で,これらの変化幅が15cm以下の立地に分布していた.しかし,測定された地下水位は,低茎および中茎草本群落と高木の湿生林で同一レベルだった.
      6.湿地中央域の低茎草本群落では,安定した上向きの地下水流動がみられた.
      7.湿生林は平水期の下向きの動水勾配に対応していた.ただしハンノキ林では豊水期に上向きの流動がみられた.
      8.湿地周辺部の土層では,地下水が特定の部分から内部流出する傾向があった.このため,そこに向けた地下水流動が浸透流を生じさせていた.
      9.湧水湿地では,泥炭の堆積作用が期待できないため,地下水を媒体とした物質の動態が植生配分に影響していると考えられた.
  • 杉村 康司, 沖津 進
    原稿種別: 本文
    2002 年 19 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2002/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.茨城県筑波山の森林を対象に,落葉と岩の被覆率の違いに着目して設定した調査地点ごとに林床蘇苔類の分布状況を調査し,上層植生,落葉,岩と蘇苔類の分布様式との関係を総合的に検討した.
      2.低山帯の林床に出現する蘇苔類の種類や種数は,高木層まで発違した森林植生であれば,高木層の高さや植被率あるいは森林タイプの違いにより大きく変化することはなかった.
      3.落葉の被覆率が低く,岩の被覆率が高い林床では,蘇苔類の出現種数が多かった.逆に落葉の被覆率が高く,岩の被覆率が小さい林床では,出現種数が少なかった.
      4.落葉に被われにくい岩は,林床蘇苔類にとって最も重要な生育環境を提供していた.特に大きな岩が存在することが,林床蘇苔類の分布にとって重要な条件となっていた.
      5.低山帯における岩上においても,大きな岩では生育形数が増加し,階層構造が複雑化していた.
      6.低山帯における林床蘇苔類の種多様性は,岩の分布量,特に大きな岩の分布量により規定されていた.
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