植生学会誌
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20 巻 , 1 号
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原著論文
  • 池田 正, 大野 啓一
    原稿種別: 本文
    2003 年 20 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.本州中部の太平洋側を対象にブナ林の植生単位とその立地条件のうち気候および地質条件を把握し,対応関係を調べた.
      2.本地域のブナ林からは,3群集1群落7亜群集2亜群落が識別された.確認された植生単位は,スズタケ-ブナ群集と,その下位単位の典型亜群集,ナツツバキ亜群集,オクモミジハグマ-ブナ群落とその下位単位の典型亜群落,イヌブナ亜群落,ヤマボウシ-ブナ群集とその下位単位の典型亜群集,ヤマトリカブト亜群集,ヒメシャラ亜群集,コアジサイ-ブナ群集とその下位単位の典型亜群集とミヤマタニソバ亜群集である.
      3.植生単位と気候条件の間に明瞭な対応関係が見られた.スズタケ-ブナ群集とオクモミジハグマ-ブナ群落典型亜群落は,WIとCIがともに低い地域に分布し,さらに,スズタケ-ブナ群集は降水量の多い地域に,オクモミジハグマ-ブナ群落は降水量の少ない地域に分布していた.ヤマボウシ-ブナ群集はWIとCIが高く,降水量も年間を通して多い地域に分布しており,コアジサイ-ブナ群集は最もWIとCIが高く,降水量も多い地域に分布していた
      4.植生単位と地質条件の間に対応関係が見られた.スズタケ-ブナ群集,オクモミジハグマ-ブナ群落は中生界堆積岩類の山地に成立していた.ヤマボウシ-ブナ群集典型亜群集とヤマトリカブト亜群集は新第三系火山岩類,ヤマボウシ-ブナ群集ヒメシャラ亜群集とコアジサイ-ブナ群集は第四紀火山岩類の地域に成立していた.
      5.本州中部太平洋側のブナ林では,群集レベルの種組成の違いは,気候条件と地質条件の両方が影響することで生じる.亜群集レベルの種組成の違いは,分布域の広いオクモミジハグマ-ブナ群落やヤマボウシ-ブナ群集では,群集の分布域内の温度傾度に沿ったもので,分布範囲が狭いスズタケ-ブナ群集やコアジサイ-ブナ群集では,湿性立地のような土地的な条件により生じると考えられた.
  • 中越 信和, アンガラ エウゼビオ・ヴィラ, 根平 邦人
    原稿種別: 本文
    2003 年 20 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    広島県の江田島の山火事跡地において,5個の永久方形区の種組成の変化を20年間に渡って調査した.山火事跡地の2次遷移は,残存種による再生からはじまり,初年度の1年草の侵入とその後の消滅,新たな木本種の侵入という過程であった.亜高木層の発達は萌芽再生した広葉樹を中心としていたが,18年後には高木層ではアカマツの優占状態を生じた.山火事跡地でのアカマツ林の再生を実際に確認することに成功し,従来の比較年代から推定されていた遷移系列を永久方形区の経年調査により実証した.
  • 服部 保, 浅見 佳世, 小舘 誓治, 石田 弘明, 南山 典子, 赤松 弘治
    原稿種別: 本文
    2003 年 20 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.照葉樹林の種組成・種多様性と微地形条件・土壌条件との対応関係を明らかにするために,宮崎県東諸県郡綾町川中において,植生調査および土壌調査を行った.
      2.調査地の微地形単位を麓部斜面,下部谷壁斜面,上部谷壁斜面,頂部斜面,岩角地の5タイプに区分し,各微地形単位ごとに225m^2の調査区を3-7区(合計26区)設置して植生調査を行った.岩角地を除く微地形単位において土壌調査を実施した.
      3.調査区を微地形単位による5つのスタンド群にまとめ,各々の種の各スタンド群における出現頻度と平均被度を算出した.それらをもとに各々の種の分布の中心によって出現種を8群に区分した.
      4.今回得られた微地形条件に対する出現種の分布傾向は他地域の結果とよく一致した.同属の植物間では分布の中心が異なる例が多数認められた.
      5.種多様性(species richness)は麓部斜面がもっとも高く,頂部斜面に向かうにつれて低下した.麓部斜面の高い種多様性は照葉低木や多年生草本類の豊かさによっていた.
      6.土壌調査の結果,斜面最下部にあたる麓部斜面で容水量,採取時水分量が相対的に低く,それより上部の微地形単位で高くなる傾向が認められた.麓部斜面でもっとも高い数値を示したのは最小容気量であった.最小容気量の高い数値は土壌の発達を示しており,麓部斜面の豊かな種多様性は,発達した良好な土壌によると考えられた.
  • 大塚 俊之, 後藤 厳寛, 杉田 幹夫, 中島 崇文, 池口 仁
    原稿種別: 本文
    2003 年 20 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.西暦937年,富士山の噴火の際に流出したとされる,剣丸尾溶岩流上には広い範囲にわたってアカマツのほぼ純林が形成されている.この群落は一次遷移系列上の先駆群落とみなされて来たが,その成因は明らかでない.このため,本研究では群落生態学的な現地調査と周辺の土地利用に関する文献調査からその起源を明らかにすることを目的とした.
      2.標高約1030mに設置した永久方形区での群落調査から,アカマツの直径階分布は20-25cmのクラスにピークを持つ一山型で,その密度は高かった.また,階層構造としてはほぼアカマツだけの林冠層とソヨゴを中心とする亜高木・低木層の明瞭な二層構造となっていた.
      3.アカマツの最大樹齢は90年で,その樹齢は直径サイズに関係なくほぼ80-90年生でそろっていた.
      4.剣丸尾周辺の森林利用の歴史についての文献調査により,江戸時代から剣丸尾上の植生は入会地として住民に利用されていたことが明らかとなった.また明治時代には剣丸尾周辺には桑畑が広がっており,養蚕業のためにかなりの濫伐が行われたと考えられた.
      5.その後,剣丸尾上の一部は1915年に恩賜林組合によって柴草採取区域に指定され適切な入会地管理がなされたため,これ以降に一斉にアカマツが侵入したものと考えられた.さらに1934年に部分林に再設定された際に雑木除去によるアカマツの天然更新施業が行われ,その後1960-70年代まではアカマツ林の林床植生は柴草として利用されていた.
      6.このように剣丸尾アカマツ林は溶岩流出後の自然の一次遷移系列上にある先駆群落とは異なり,長年の人為的な攪乱により遷移が停滞していた立地に,攪乱停止後に成立したアカマツ林である.また1934年の雑木除去と1960-70年代までの下層植生の利用が,現在のアカマツ林の林分構造に大きく影響していた.
  • 小島 久子, 鞠子 茂, 中村 徹, 林 一六
    原稿種別: 本文
    2003 年 20 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2003/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    長野県菅平にある筑波大学の樹木園に植栽されたブナとミズナラの開葉時期と,葉の霜に対する耐性について実験を行った.実験にはマイナス5度以下に調節できる生育箱と野外で同じような冷却条件が与えられる自然放射冷却装置を製作して用いた.この自然放射冷却装置は既報の論文を参考にこの実験のために製作した.同時にブナ群落の分布限界とされている黒松内を中心とした北海道南部各地の温量指数と遅霜出現時期を検討した.開葉時期は1988年から1994年までの7年間記録し,その平均を求めた.それによると,ブナはミズナラより平均10日ほど早く開葉し,それに要する日温量指数はブナで平均113℃日,ミズナラで182℃日であった.一方,開葉したばかりの葉の霜に対する耐性の実験では,ブナの開葉したばかりの葉は霜に遭うと枯死し,開葉前の芽の段階では霜にあっても枯死しなかった.ミズナラは枝の先端に複数の冬芽を付け,若葉が霜で枯れても側芽が開葉し,その後成長できた.それにたいして,ブナの頂芽は前年の8月ころから形成され,側芽をもたないので,開葉後,遅霜に遭うとその後の成長ができなかった.ミズナラは,開葉時期が遅いことと,側芽を持つことによって,遅霜の害を回避している.開葉時期の遅れは,遅霜のない地域では光合成の開始時期の遅れとなり,物質生産においてブナに対して不利である.ブナは光合成を早く開始する代わりに遅霜に遭遇する危険をもつ.この二つの実験から,ブナは日温量指数が113℃日に達した後遅霜がある地域には自然には分布できないが,ミズナラは上に述べた生態的特性によってその地域でも分布でき,より北に分布を広げることができると思われる.日温量指数が113℃日に達した後に遅霜がある地域を北海道南部で調べてみると,倶知安と岩見沢が相当する.ブナが分布できる黒松内と倶知安のあいだには羊蹄山,ニセコアンヌプリなどの山塊があり,この山塊付近が113℃日に達した後遅霜がある地域に当たりブナの自然分布を妨げていると考えられる.これをブナの北限を説明する開葉時期-遅霜仮説とする.この仮説から,日温量指数が113℃日に達する前に最後の遅霜のある地域では黒松内以北でもブナは生育できるので,人為的に植えればブナは生育できるであろう.
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