植生学会誌
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21 巻 , 1 号
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原著論文
  • 山戸 美智子, 浅見 佳世, 武田 義明
    原稿種別: 本文
    2004 年 21 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    沖縄諸島以南の琉球列島において,半自然草原の群落分類を再検討した結果,ススキクラスの3群団に,4群集と4下位単位が認められた.オーダーについては未決定とされた.琉球列島において,高速道路法面や飛行場といった除草管理下の都市域の造成地に広がるチガヤ型草原は,シロバナセンダングサ,コバナヒメハギ,アメリカホウライセンブリなどの出現によって,新群集のチガヤ-シロバナセンダングサ群集としてまとめられた.本群集は一年生植物,帰化植物,ヨモギクラス,シロザクラスの種の比率が高く,半地中植物やススキクラスの種の比率が低いという特徴をもつ.この特徴は,東北から九州にかけて同様の立地に成立するチガヤ-ヒメジョオン群集と類似しており,本群集は本土のチガヤ-ヒメジョオン群集に対応する琉球列島における除草草原型の群集と考えられた.また,ススキ型の群集として,ススキ-ホシダ群集が認められたが,本群集は2つの下位単位に区分され,この下位単位の分化は管理の有無に対応していた.管理の放棄された立地で認められた典型下位単位は,伝統的な管理地に見られるキキョウラン下位単位とは,種組成や相観の変化に加えて,種多様性も大きく低下していた.このように,琉球列島の半自然草原では,本土と同様に,除草,管理水準の低下といった近年の草原における環境条件の変化が,半自然草原の植物社会に新たな組成群の形成や種組成の単純化などの影響を与えていることが明らかとなった.さらに,旧来の半自然草原は,管理水準の低下だけでなく,草地改良などによっても急速に減少している.今後,生物多様性保全の観点から,琉球列島における半自然草原の詳細な現状把握や保全対策を早急に進める必要性が示唆された.
  • 川西 基博, 崎尾 均, 大野 啓一
    原稿種別: 本文
    2004 年 21 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.奥秩父山地大山沢のシオジ-サワグルミ林における林床植生の成立機構を明らかにすることを目的として,立地の攪乱的特性と,林床植物の分布と生活型の検討を行った.
      2.6つの地形型を取り上げ,堆積物,傾斜角度,窒素,炭素含有量からその属性を検討した.土石流段丘と沖積錐は,土石流による形成後,相対的に安定に維持される地形型で,段丘崖と新期崩壊地は斜面上方からの崩落物質によって斜面の脚部に形成される変動性の高い地形型,旧崩壊斜面と崖錐は同様に崩壊地としての特性を有しつつも顕著な攪乱性をもたない地形型であった.
      3.クラスター分析によって抽出された主要な3つの種群のうち,第1の種群には春期型や夏期型と貯蔵型根茎といった生活型,第2,第3の種群には,一年生草本,むかご型栄養繁殖,入れ替え型根茎の生活型が特徴的に含まれた.
      4.土石流段丘,沖積錐には第1の種群,段丘崖,新期崩壊地,旧崩壊斜面,崖錐には第2の種群が結びつき,後者でも特に侵食作用が卓越する段丘崖と新期崩壊地には,さらに第3の種群が結びついていた.
      5.土石流や斜面崩壊,物質の崩落といった斜面の脚部に組織的に発生する地表変動が地形を形成し,地表攪乱,傾斜角度,堆積物,土壌などの地形属性を規定し,それに対して,林床植物が栄養繁殖様式や物質貯蔵形態といった種特性に応じて立地を選択するという機構を通じて,サワグルミ-シオジ林の林床植生が成立すると考えられた.
  • 和田 美貴代, 菊池 多賀夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 21 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.沖積平野におけるハルニレ実生の定着に対する河川攪乱の役割を明らかにするため,長野県上高地の梓川の氾濫原および沖積錐末端部において,実生と稚樹の生育立地を,共存樹種であるヤチダモと比較しながら調査した.
      2.ヤチダモの実生は,河原の砂礫堆など乾燥しやすいと考えられる立地には発生していなかった.これを除けば,両樹種の実生は地表攪乱地,非攪乱地にかかわらず広い範囲の環境条件に対応して発生していた.
      3.河川攪乱を受けず,草本層の植被率が高い後背地のハルニレ林に発生した実生は,両樹種ともに発生1年後までにすべて消失していた.河原の砂礫堆に発生したハルニレの実生も,増水や乾燥のため4年後までにほぼすべてが消失した.
      4.稚樹生育地の環境条件は,実生のそれに比べてより狭い範囲に限定された.ハルニレの稚樹はヤナギ類やタニガワハンノキなどの林内に限って生育し,ヤチダモの稚樹はこれらに加えて,ハルニレ林内の流路跡などに生育していた.
      5.両樹種の稚樹の樹齢は,林冠を構成するヤナギ類やタニガワハンノキより10年から35年ほど若く,稚樹としての定着は,先駆樹種の林分が形成された後であった.
      6.ハルニレの稚樹はおもに先駆樹林下の砂質の土壌に定着しており,砂の堆積をもたらし,林床植生を比較的広範囲に破壊するような地表攪乱が稚樹の定着に先行しているものと考えられた.
  • 蛭間 啓, 福嶋 司
    原稿種別: 本文
    2004 年 21 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.太平洋側では広葉草本種の出現割合が高いタイプのブナ林が存在するが,日本海側にはそのようなタイプのブナ林は存在しない.このようなブナ林群落の地理的分化の背景を検討するために,東日本太平洋側の2つのブナ林亜群集に出現する維管束植物が,日本海側のブナ帯において,どのような立地環境に生育しているのかを,地形との関係で把握した.
      2.太平洋側2地域,日本海側2地域のブナ帯において植物社会学的植生調査を行い,同時に地形条件の記載を行った.微地形単位を頂部緩斜面,山腹斜面,谷,小谷の谷壁斜面の4つに区分し,各微地形単位毎に植生調査資料をまとめ,ブナ林に出現した維管束植物種の生育立地を地域間で比較した.その結果,生育立地のパターンから8つの種群が認識できた.
      3.太平洋側ではブナ林が成立する頂部緩斜面,山腹斜面に生育していたが,日本海側ではブナ林が成立しない谷,小谷の谷壁斜面に生育が限られるという,生育立地の地理的差異が確認できた.このように,生育立地に地理的差異がみられた種群には,広葉草本種が多く含まれていた.一方,太平洋側,日本海側を問わず,ブナ林が成立する頂部緩斜面,山腹斜面に生育していた種群や,日本海側においてのみブナ林が成立する微地形単位に生育がみられた種群には,木本種やシダ型草本種が多く含まれており,広葉草本種は少なかった.
      4.いずれかの地域においてブナ林に生育する広葉草本種のほとんどは,太平洋側においてのみブナ林に生育し,日本海側では分布するものの,ブナ林以外の群落に生育していると考えられた.
      5.太平洋側と日本海側のブナ林群落の大きな違いは,太平洋側では広葉草本種の出現割合が高い亜群集が存在するが,日本海側の2地域ではそのようなタイプが存在しないことであった.このようなブナ林群落の地理的分化を引き起こしている日本海側のブナ林における広葉草本種の貧化・欠落は,種が分布しないことによって生じているのではなく,それらの種の生育立地が,ブナ林から他の立地へとシフトしていることに起因していると考えられた.
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