植生学会誌
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22 巻 , 1 号
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原著論文
  • 石田 弘明, 服部 保, 武田 義明
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    人工林以外の日本の照葉樹林は自然性の違いによって大きく3つのタイプに区分される.すなわち,(1)ほとんど人の手が加わっておらず,原生状態を維持している樹林(照葉原生林),(2)薪炭林のような定期的伐採や下刈りは行われなかったが,社寺林のように,不定期で部分的な人為攪乱や著しい断片化によって自然性が低下し,原生状態とはいえない樹林(照葉自然林),(3)かつて薪炭林として利用されていた萌芽林(照葉二次林)の3タイプである.本研究では,これらの森林タイプの種組成および種多様性の相違と人為攪乱および断片化の関係を明らかにすることを目的として,対馬の照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林に100m^2の調査区を合計76区設置し,全ての維管束植物を対象とした植生調査を行った.全層の種組成の類似性に基づいてDCAによるスタンドの序列を行った結果,(1)照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林の種組成は互いに明らかに異なっていること,(2)照葉自然林は照葉原生林と照葉二次林の中間的な種組成を有していることが明らかとなった.また,照葉原生林および照葉自然林のDCA第1軸スコアと樹林面積の間には高い有意な相関が認められた.これらのことから,森林タイプ間の種組成の相違は人為攪乱と断片化の程度を大きく反映していると考えられた.照葉原生林ではイスノキとスダジイが優占していたが,照葉自然林や照葉二次林ではイスノキはほとんど優占していなかった.この現象は,イスノキの萌芽力の低さと自然林および二次林で行われた樹木の伐採に起因していると考えられた.種多様性(species richness)の尺度として調査区あたりの出現種数を算出し,この値を森林タイプ間で比較した.全出現種と照葉樹林要素の出現種数は森林タイプによって有意に異なっており,照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林の順に減少する傾向にあった.全出現種および照葉樹林要素の出現種数と断片化の間には明瞭な対応関係は認められなかった.しかし,照葉原生林や照葉自然林に偏在する種の出現種数は樹林面積と高い正の相関関係にあったことから,森林タイプ間の種多様性の相違には人為攪乱だけでなく断片化の影響も関係していると考えられた.
  • 伊藤 哲, 野上 寛五郎
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.準絶滅危惧種ヤクシマサルスベリの分布域である屋久島低地の渓畔域において,渓畔林35林分の植生および立地環境を調査し,斜面の46林分と比較した.
      2.クラスター分析によって植物種の出現傾向の類似性を解析した結果,上部照葉樹林型,下部照葉樹林型,尾根植生型,および先駆木本・湿性型などのギルドが検出され,ヤクシマサルスベリは先駆木本・湿性型に区分された.
      3.TWINSPANによって分類された植生タイプは,同地域の照葉樹林型の種組成と二次林・湿性型の種組成の二類型を反映していた.渓畔林は8植生タイプのうち5タイプに分離し,一部は典型的な照葉樹林の組成と一致した.
      4.これら渓畔林の種組成の違いは,河川の集水面積,川幅,堆積幅/川幅比,標高などの立地条件を反映していた.ヤクシマサルスベリは小規模河川の堆積型立地に限られた.
      5.以上のことから,ヤクシマサルスベリを含む渓畔林の立地条件として,小規模河川における土砂堆積が重要であることが示唆された.
  • 三上 光一, 小池 文人
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.間接傾度分析により,小笠原諸島母島における木本種の分布特性,および外来木本種と在来木本種の分布域の重複を調べた.
      2.82箇所に10×10mのコドラートを設置し,出現種とその立地環境を調査した.出現種を1次変数,立地環境を2次変数とした正準対応分析(CCA)により各コドラートの序列化を行った.CCAによって選択された1軸と2軸によって定義された二次元空間を母島の森林のニッチ空間とし,空間内における主要木本種の出現頻度の分布を明示した.そして,各種の出現頻度分布を基に,ニッチの広さと最大出現頻度,外来種と在来種のニッチ重複度を計算した.
      3.母島の植生は標高と接峰面高度が表す大スケールの地形の起伏と,ラプラシアンと微地形が表す小スケールの地形の起伏に強く影響を受けていた.これらの環境要因は全て水分条件と関係する環境要因であり,年降水量が1200mm程度と少ない母島において,水分条件が植生の配置に影響を与える重要な要因となっていると考えられる.
      4.母島において,いくつかの高木・亜高木種はほとんどのニッチ空間において高い頻度で分布していた.逆に分布域が狭いのにかかわらず高出現頻度の種は少数であったが,尾根の矮生低木林に分布する低木であった.
      5.母島の主要木本種の中で外来種はアカギ,シマグワ,キバンジロウ,ギンネムの4種であった.外来木本種の分布域は,アカギ,キバンジロウは中腹から山頂にかけての島内での湿性な環境に,シマグワ,ギンネムは中腹から海岸域にかけての乾性な環境であった.母島の木本種の中でアカギ,シマグワは分布域が広く,高頻度で出現する種であった.
      6.アカギは主要木本種31種中15種,シマグワは7種に対する分布域の重複が顕著であり,在来種への影響が大きいと考えられる.現状では固有種の多い山頂部の低木林において高頻度で出現する外来木本種はいないが,湿性環境を好むアカギとキバンジロウが侵入している事が示された.
  • 服部 保, 南山 典子, 松村 俊和
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.猪名川上流域における池田炭とクヌギ林の歴史について植生研究の視点から古文書・書籍を用いて調査を行った.  2.江戸時代の29の書籍に池田炭,クヌギ等についての記述を確認した.木炭の名称が池田炭であること,生産地が一庫であること,木炭の集散地が池田であること,木炭の原木がクヌギであること,生産方法として輪伐・台場クヌギ・植林が載せられていること,木炭の形態が切炭であり,菊炭であること,池田炭は茶道との関係が深く,高い評価を受けていることなどが記述の内容であった.
      3.古文書,伝承における木炭関係の記録として,1145年より1833年の間に27項目が確認できた.輪伐,御用炭,豊臣秀吉の賞用などが記録されていた.
      4.延宝検地帳には一庫,黒川,国崎,吉川などの村に「クヌギ山」が存在すること,一庫では御用炭を納めていたことなどが記録されていた.
      5.古文書・書籍の記述と現在の池田炭生産の状況を比較すると池田炭の原木,池田炭生産地,クヌギ林の分布,クヌギの植林,台場クヌギの存在,輪伐期などの点において一致した.
      6.池田炭は室町時代より続く国内で第一級の木炭であり,その木炭の原木を提供している猪名川上流域の里山林は歴史性が明らかであること,地域固有の伝統的な里山林管理が現在も行われていることなどの点において非常に重要であると認められた.今後,当地域のクヌギ林管理が必要であると考えられる.
  • 澤田 佳宏, 津田 智
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2005/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.日本の暖温帯に成立している海浜植生の主要構成種14種(在来海浜植物11種,外来植物3種)について,海流散布の可能性を評価するために,海水に対する浮遊能力と海水接触後の種子発芽能力に関する実験をおこなった.
      2.在来海浜植物のうちコウボウムギ,コウボウシバ,ハマエンドウ,ハマボウフウ,ハマゴウ,ハマニガナ,ネコノシタ,ハマヒルガオの8種は浮遊能力が優れており,また,海水接触後にも発芽が可能であったことから,長期間の海流散布が可能と考えられた.
      3.在来海浜植物のうちビロードテンツキは海水にほとんど浮かぼなかったため,海流散布が困難と考えられた.オニシバとケカモノハシは10日から20日程度で沈んだため,短期間であれば海流散布が可能と考えられた.
      4.海浜に優占群落をつくる外来種(オオフタバムグラ,コマツヨイグサ,ボウムギ)はいずれも,海水にほとんど浮かばなかったため,海流散布が困難と考えられた.これらの外来種は内陸にも生育が可能であることから,内陸を通じて海浜に侵入するものと考えられた.
      5.海浜における個体群の孤立化が進行した場合,「外来種」および「長期間の海流散布が可能な在来海浜植物」は局所絶滅後の再侵入が可能であるが,「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」では再侵入が起こりにくくなると考えられる.このため「長期間の海流散布が困難な在来海浜植物」は各地の海浜植物相から欠落していくおそれがある.
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