植生学会誌
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22 巻 , 2 号
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原著論文
  • 石田 弘明, 服部 保, 橋本 佳延
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 2 号 p. 71-86
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    九州南東部に位置する宮崎県には,人為干渉の種類や程度が異なる3タイプの照葉樹林が分布している.すなわち,(1)比較的まとまった面積で分布している上に,原生状態あるいはそれに近い状態を維持している照葉樹林(照葉原生林),(2)著しく断片化している上に,不定期で部分的な人為攪乱を被っており,原生状態とはいえない照葉樹林(照葉自然林),(3)薪炭林として利用されていた照葉萌芽林(照葉二次林)の3タイプである.本研究では,これら3タイプの照葉樹林を相互に比較することで,照葉樹林の種組成および種多様性に対する人為攪乱と断片化の影響について検討した.調査対象とした樹林に100m^2の調査区を合計62区設置して,全ての維管束植物を対象とした植生調査を行った.照葉自然林は照葉原生林と照葉二次林の中間的な種組成を有しており,3タイプの間には種組成に明らかな相違が認められた.また,照葉原生林および照葉自然林のDCA第1軸スコアと樹林面積の間には強い有意な相関がみられた.これらのことから,種組成は人為攪乱と断片化の影響を強く受けていることが明らかとなった.照葉原生林と照葉自然林の種組成を比較したところ,照葉自然林では陰湿地を好む種や着生植物が欠落する傾向にあった.このような現象の一因として,エッジ効果による土壌の乾燥や空中湿度の低下が考えられた.種多様性(species richness)の尺度として100m^2あたりの出現種数を算出し,その平均値を森林タイプ間で比較したところ,全出現種と照葉樹林要素の出現種数は照葉原生林,照葉自然林,照葉二次林の順に減少する傾向にあった.これらの出現種数と樹林面積の間には明瞭な対応関係は認められなかったが,照葉原生林や照葉自然林に偏在する種の出現種数と樹林面積の間には正の有意な相関がみられ,樹林の断片化が種多様性に負の影響を与えていることが示唆された.
  • 川西 基博, 石川 愼吾, 三宅 尚, 大野 啓一
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 2 号 p. 87-102
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.四国のサワグルミ林内における林床植生の成り立ちを明らかにすることを目的とし,林床植生における群落の空間的分布・配列と微地形単位との対応を検討した.
      2.サワグルミ林が成立している範囲における微地形単位を,その形状と表層物質(細粒物質の粒度組成,礫径,有機物含有量)から把握した.崖錐は,全体的に粗大な礫が卓越する微地形で,その礫間充填物は有機物を多く含んでいた.下部谷壁斜面の礫間充填物は,シルト・粘土が最も多く含まれる粒径組成を示したのに対し,麓部斜面と流路では砂礫を最も多く含んだ粗粒な充填物であった.土石流段丘の礫径および礫間充填物は変動が大きかった.
      3.崖錐では構成種数が少ないタニギキョウ群落が成立していた.それ以外の微地形単位では複数の群落が成立していた.シコクスミレ群落は有機物含有量の大きい下部谷壁斜面に,オオマルバノテンニンソウ群落は流路の影響は及ばない高位土石流段丘から下部谷壁斜面に成立していた.ラショウモンカズラ群落は麓部斜面の有機物含有量が比較的低い堆積物上に,テンニンソウ群落は,堆積物が粗砂と礫で構成される低位土石流段丘と麓部斜面に成立していた.ワサビ群落は源頭部の流路に成立していた.
      4.四国におけるサワグルミ林の林床植生では,微地形単位に直接結びつく群落が存在する一方で,微地形単位内部のより微細な立地に対応する群落も存在し,これらの群落が複合することによってサワグルミ林全体の種組成が決定されている.
  • 阿部 聖哉, 梨本 真, 松木 吏弓, 竹内 亨, 石井 孝
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 2 号 p. 103-111
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.動物の生息環境として重要な林床植生分布の推定方法を検討するため,秋田駒ヶ岳のイヌワシ行動圏において,植生図と植物社会学的調査資料からGISと統計的手法の一つである分類木を用いて林床ササ被覆度の予測地図を作成することを試みた.
      2.林床ササ被覆度は林冠優占種と高い相関のある場合もあったが,コナラ林のように林冠優占種が同じでも様々な被覆度を示す場合があった.
      3.分類木を用いて林床ササ被覆度に影響を与える要因を解析した結果,林冠優占種,林冠高,夏至付近の日射量指標が被覆度の判別に寄与する要因であることが明らかになった.得られた分類木の判別正答率は76.3%となり,これをもとにGISによってササ被覆度の予測分布図を作成した.
      4.本研究の結果から,林床の光環境を間接的に指標する林冠構造や日射量指標のGISデータを用いて,林床のササ被覆度の予測分布図が作成できることが示唆された.
  • 冨士田 裕子, 井上 京
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 2 号 p. 113-133
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.北海道札幌市篠路町福移に残存する湿地の植生と水文環境を調査し,現状把握と保全の提言を行なった.
      2.湿地の植生は,5つの草本群落(ヌマガヤ-ミズゴケ群落,ヨシ群落,ヌマガヤ群落,ササ群落,ススキ・ササ群落)と1つの森林群落(シラカンバ・ハンノキ群落)に区分された.
      3.残存する群落の中で最も原植生に近いと考えられたヌマガヤ-ミズゴケ群落は,1976年と1996年撮影のカラー空中写真の比較から,表層部泥炭のはぎ取り跡に二次的に成立した群落であることが明らかになった.
      4.現地踏査と空中写真判読から,湿地内には多数の泥炭採掘跡のプールと数多くの排水路が存在し,周囲は道路や埋立地,排水路で囲まれ人為的撹乱を広範囲にわたって受けていることが明らかになった.
      5.地形測量結果から,湿地の数箇所で埋め立てや盛土によって生じた泥炭の地盤変状(側方流動)がみられ,周辺の土地利用の影響も加わった地形変化が著しいことが明らかになった.
      6.地下水位は群落の違いに関係なく,秋から融雪期まで安定した水位を保っているが,夏季に大きく低下し湿地全体が乾燥状態にさらされることが明らかになった.夏季の大きな地下水位変動は湿地内に掘削された排水路が一因と考えられた.
      7.泥炭層は約5m堆積しており,層位は篠路湿地が河川の氾濫の影響を受けながら形成された低位泥炭地から雨水涵養性の高位泥炭地に発達していった過程を示していた.表層から深さ50cm付近までの泥炭は,地下水位の低下によって分解が進んでいた.
      8.調査結果は,篠路湿地が湿地としての機能を維持するには危機的な状況であることを示している.今後は,乾燥化の防止と水供給の手法,積極的な湿地植生の保全・復元の手法の検討が必要である.当面,乾燥化の防止策として,湿地内の排水路の堰き止めと,雨水の流出防止策を考えるべきである.
  • 澤田 佳宏, 津田 智
    原稿種別: 本文
    2005 年 22 巻 2 号 p. 135-146
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1.日本の暖温帯の主要な海浜植物14種(在来海浜植物11種,外来植物3種)について,永続的シードバンク形成の可能性を明らかにするために,野外において約1年間にわたる播種実験および埋土実験をおこなった.
      2.地表0cmおよび地表面下5cmへの播種実験の結果,ハマエンドウ,ハマボウフウ,ハマヒルガオ,ハマゴウ,ネコノシタ,コウボウムギ,コウボウシバ,ビロードテンツキ,コマツヨイグサ,オオフタバムグラ,ボウムギの11種は播種から約1年後にも未発芽の生存種子が残されており,地表付近に永続的シードバンクを形成する可能性があると考えられた.
      3.ハマニガナ,オニシバ,ケカモノハシの3種は地表0cmおよび地表面下5cmへの播種から約1年後に未発芽の生存種子は残されておらず,地表付近には永続的シードバンクを形成しにくいと考えられた.
      4.地表面下100cmへの埋土試験の結果,対象とした14種はいずれも1年以上の埋土処理後にも発芽能力を維持しており,深く埋められたときには永続的シードバンクを形成する可能性が示された.また,ハマヒルガオを除く13種は,埋土条件下では発芽が完全に抑制されていることが観察された.
      5.地温の測定結果から,深深度では,冬季に十分に低温にならないために種子の休眠解除が阻害される可能性や,地温の日変化がほとんどないために種子の発芽要求が満たされない可能性が示唆された.
      6.埋土深度の違いによる温度環境のちがいが種子のふるまいを規定している可能性があることから,堆積速度が異なる場所ではシードバンクの成り立ちが異なるものと推察された.堆砂が激しい「不安定帯」では散布された種子が地表面下深く埋められるため,すべての種がシードバンクを形成する可能性が考えられた.一方,堆砂の少ない「半安定帯」では散布された種子は地表付近にとどまり,永続的シードバンクを形成するかどうかは種ごとの休眠発芽特性によって決まると考えられた.
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