植生学会誌
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23 巻 , 1 号
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原著論文
  • 原 正利
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 八溝山地および阿武隈山地,北上山地を中心とする東日本太平洋側におけるブナの分布について,標本(196点)および文献(233件),研究者からの私信(28件)を情報源として分布情報データベースを作成した.さらに,これに基づいて72地域で現地調査を行い,あらたに206個体のブナの分布データを得た.
      2. 上記の分布情報を解析した結果,ブナはこれらの山地に点々とではあるが水平的に広く分布し,垂直的にも海抜約100m前後から1000m以上の広範囲に分布することが確認された.
      3. ブナの垂直分布下限は暖かさの指数WI=90℃・月,寒さの指数CI=-10℃・月,1月の平均気温=1℃とほぼ一致した.ブナは常緑広葉樹の分布上限(北限)に平行して,一部,分布を重複させつつ,分布下限(南限)を形成していることが明らかとなった.
      4. ただし,内陸に位置する八溝山地中部の鶏足,鷲子の両山塊とその周辺地域では,ブナの垂直分布下限が著しく下降しWI=105℃・月まで達していた,この地域は関東平野内陸における常緑広葉樹の分布北限域であり,冬期の低温や季節風が常緑広葉樹の分布を限定的なものとしていることや,植生史的にみて常緑広葉樹林の分布拡大が遅れたために,ブナの個体群が低海抜地に遺存分布していると考えられた.
      5. ブナの分布下限を規定する要因として,常緑広葉樹との競争関係が重要と考えられた.
      6. 東日本太平洋側において,ブナが種としては低海抜地まで分布するにもかかわらず,ブナ優占林の分布が比較的,高海抜地に限られる原因について推論した.
      7. ブナの垂直分布域は,緯度的に南部に位置する八溝山地・阿武隈山地では山地の山頂付近を除き大部分,下部温帯域に含まれるが,北上山地では,上部と下部を含む温帯全域に及んでいることを指摘した.
  • 川西 基博, 崎尾 均, 久保 満佐子, 島野 光司, 大野 啓一
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    奥秩父大山沢流域において,微地形の違いが植生単位の分化と生活形組成とに与える影響を検討した.大山沢流域の微地形は頂部斜面,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面,谷底面に区分された.植物社会学的群落分類の結果,ヤマタイミンガサ-サワグルミ群集(オオイタヤメイゲツ亜群集,ギンバイソウ亜群集),スズタケ-ブナ群集(典型亜群集,オクモミジハグマ亜群集),アズマシャクナゲ-ヒノキ群集が認められた.コドラート内多様性と微地形単位内多様性をみると,樹木では,土壌攪乱がほとんどみられない上部谷壁斜面と頂部斜面で種多様性が高いのに対し,林床植物では,土壌攪乱が高頻度で起こる下部谷壁斜面と谷底面で種多様性が高かった.スズタケ-ブナ群集とアズマシャクナゲ-ヒノキ群集の識別種群には,それぞれ頂部斜面,上部谷壁斜面に分布する樹木が多く含まれており,ヤマタイミンガサ-サワグルミ群集の標徴種群には下部谷壁斜面や谷底面に分布する林床植物が多く含まれていた.このように微地形単位間で種多様性を比較すると,その傾向は生活形によって異なっており,これによって特異な生活形・種組成をもつ植生単位が微地形単位に応じて成立していると考えられた.
  • 黒田 有寿茂, 向井 誠二, 豊原 源太郎
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    コシダ群落およびウラジロ群落の種組成および群落構造を西南日本瀬戸内地方西部に位置する宮島において調査した.コシダおよびウラジロの優占度に基づいて区分された4スタンド型,コシダ型(DT),ウラジロ型(GT),これら2種を全く欠くかあるいはほとんど欠くシダ非優占型(NT),シダ優占型(DTおよびGT)とシダ非優占型(NT)の間の中間型(IT)で種組成を比較した結果,個々のスタンド型を特徴付ける種はほとんど見出されず,これら4スタンド型間の種組成には明確な違いがないことが示された.しかし,高木層,亜高木層および草本層における種の豊かさおよび種多様度は,中間型およびシダ非優占型よりもコシダ型およびウラジロ型において有意に低かった.これはシダ優占型においてはコシダやウラジロが圧倒的に優勢であり,他種の定着に利用されるセーフサイトが著しく減少していることに因ると考えられる.また中間型は,種の豊かさおよび種多様度に関して,シダ優占型とシダ非優占型との中間の値を示した.種の豊かさおよび種多様度と,草本層の植被率には負の相関関係が認められ,コシダおよびウラジロの他種に対する排他的効果はこれらシダ植物の被度の増加に伴って大きくなることが示唆された.シダ葉群下における照度の減少の程度は,ササ葉群下と同程度であった.また,コシダおよびウラジロ生葉の分散構造を解析した結果,コシダおよびウラジロ生葉は,チマキザサやワラビなどのクローン植物の地上部がその優占群落において示すのと同様に,ランダム分布する傾向が認められた.本研究を通じて,コシダ群落およびウラジロ群落は,高い競争能力を有していることが示唆された.最後に,攪乱を受けた森林植生の機能回復および生態系保全の点から,コシダとウラジロがもつ生態的役割について議論した.
  • 辻井 令恵, 中田 誠
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 37-54
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 本研究は新潟県佐渡島の棚田放棄地において,さまざまな植物群落が成立している原因を,土壌,地下水,地形などの環境要因との関連から明らかにすることを目的とした.
      2. 18ヵ所に調査プロットを設定し,植生,土壌,地下水位の調査を行うとともに,土壌と水のサンプルを採取し,化学性の分析を行った.
      3. 本調査地の植物群落は,優占種の生育形や樹高,草本植物の種組成により,中生高木林,湿生高木林,中生低木林,湿生低木林,ヨシ群落の5タイプに分けられた.
      4. 調査したすべての土壌断面で,棚田として利用していたころの作土層と心土層を確認でき,作土層の上部には,腐植を多く含んだ黒色層が形成されていた.
      5. 平均地下水位は中生高木林と中生低木林で低く,逆に湿生高木林と湿生低木林,ヨシ群落で高く,両者の違いが明瞭だった.
      6. 多くの土壌断面中にグライ層が存在し,その現れる深さは平均地下水位と強い相関を示した.
      7. ヨシ群落では土壌表層に堆積した泥炭の影響で,他の群落タイプよりもC,N含有率が高かった.また,ヨシ群落と中生および湿生低木林では,中生および湿生高木林よりも土壌中のCaが多く,pHが高かった.
      8. 斜面下部に位置するヨシ群落と湿生低木林では,斜面浸出水が地下水のおもな供給源と考えられ,中生および湿生高木林よりも地下水位の経時変動が小さく,各成分の含有率とpHが高かった.
      9. 林床植生のデータを用いたDCAによる第I軸上でのプロットの配列は,平均地下水位,土壌,地下水の多くの化学性との間で有意な相関を示し,地下水位の高さに起因した土壌の水分環境傾度に沿った空間的な植生構造の変化を反映していると考えられた.
      10. 棚田放棄後の植生遷移においては,畦および棚田間の法面の存在と周囲の植生の影響が大きく,高木林では,その内部を被陰することで林床植生の組成や優占度に影響を及ぼしていた.
      11. 棚田放棄後は斜面位置や傾斜といった地形条件の違いが地下水位の高さやその変動パターンを通じて異なる植物群落を成立させ,さらに土壌や地下水の化学性にも影響を及ぼしていると考えられた.
  • 並川 寛司, 肖 洪興
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    中国東北部吉林省の南東地域において,農地に接して広がる落葉広葉樹二次林を対象に,種組成と人為的な攪乱との間の関係について検討した.調査地域は丘陵地と山地に分けられ,前者では農民による管理,すなわち放牧,下草刈,芝刈り,伐採などが頻繁に行われ強く攪乱されていたのに対し,山地では直径10cm以下の小径木が稀に伐採されるのみであった.18調査区から得た植生資料を用い植物社会学的な表操作を行った結果,モンゴリナラ-オオサンザシ群落(2つの下位単位と3つの植分群を含む)とモンゴリナラ-トウハウチワカエデ群落(2つの下位単位を含む)に区分された.前者の群落ではいわゆる人里植物や陽地生植物の出現頻度が高く,後者の群落では調査地域の自然植生であるチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林の下層に高い頻度で出現する種が多くみられ,種組成に質的な違いが認められた.また,各群落の下位単位あるいは植分群と攪乱の質および強さとの間の密接な関係がみられた.全種を込みにした種の豊富さは,人為的な攪乱の強さと負の相関を示したのに対し,生活形別にみた種の豊富さと攪乱の強さとの間の関係はそれぞれ異なり,一年生草本は攪乱の強さと正の,木本性蔓植物および地上植物は負の相関を示した.一方,地中植物の種の豊富さは攪乱の強さと相関を示さなかった.木本性蔓植物と地上植物を込みにした非森林生の種の豊富さは攪乱の強さと相関を示さなかったのに対し,地中植物のそれは正の相関を示した.これらの結果は,人為的な攪乱が種組成に与える影響は質的な変化として現れること,伐採など直接的な影響によって木本性の種の豊富さは減少するのに対し,攪乱による森林内の環境の変化が相対的に陽性の非森林生植物の種の豊富さをもたらすことを示唆している.
  • 前迫 ゆり, 和田 恵次, 松村 みちる
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 奈良公園平坦域の森林植生においてニホンジカの樹皮剥ぎに関する調査を行い,シカの樹皮剥ぎを樹種選択,樹木のサイズ選択および空間的環境傾度との関係から検討した.
      2. 奈良公園において樹高1.3m以上の樹木39種1041本について樹皮剥ぎの有無などを調査した結果,31種352本で樹皮剥ぎが確認された(樹皮剥ぎの個体数比率33.8%,種数比率79.5%).
      3. シカの樹皮剥ぎ樹木に対する嗜好性の指標としてIvlevの選択性指数Eを算出した結果,サルスベリ,サンゴジュ,イヌマキ,アセビなどが正の選択性を,クロマツ,ケヤキ,ナンキンハゼ,シラカシ,イチョウ,イヌシデ,ウメなどが負の選択性を示した.
      4. 全調査樹木(樹高1.3m以上)において,シカによる樹皮剥ぎは小径木で行われる傾向が認められたが,樹種別にみた場合,樹皮剥ぎのサイズ依存性は認められなかった.
      5. 春日山原始林あるいは若草山からの距離と不嗜好性種群(E≤-0.3)の個体数比率との間には有意な正の相関が,逆に,市街地からの距離と不嗜好性種群の個体数比率との間には有意な負の相関が認められ,シカの樹皮剥ぎと空間的環境傾度との関係が示唆された.
  • 原稿種別: 文献目録等
    2006 年 23 巻 1 号 p. 80-
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
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