植生学会誌
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23 巻 , 2 号
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原著論文
  • 岩渕 祐子, 星野 義延, 福嶋 司
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    関東地方に生育するコナラ88個体の果実(堅果と殻斗)を2001,2002年に採集し,各果実形態について計測した12形質と,採集地点の環境要因(標高,暖かさの指数,年平均気温,降水量)との関係を調べた.堅果の全形質と殻斗の3形質,殻斗の柄の1形質は,標高および果実成長期間降水量との間に有意な負の相関を,暖かさの指数および年平均気温との間に有意な正の相関を示した.したがって,降水量が多くWI値が低い地域では,堅果,殻斗,殻斗の柄の形態が小さくなることが明らかになった.この果実形態にみられる傾向は,採集地点間での果実成長期間長の相違によるものであると考察した・コナラの果実形態を示す形質は,果実成長期の中でも成長期後期の降水量と有意な負の相関関係を示した.したがって,コナラの果実形態は,果実成長期後半の少降水量と強く関係することが明らかになった.しかし本研究では,果実形態に対する温度,降水量の影響を分離して解析することはできなかった.さらに,コナラの堅果長は堅果幅と比べて,温度条件に対してより高い依存性を持つことが明らかとなった・堅果長の温度条件への高い依存性は,8月以降堅果幅の成長が頭打ちになるのに対して,堅果長は8月以降にも成長を続けるという,発達パターンの違いによるものと考察した.
  • 比嘉 基紀, 石川 愼吾, 三宅 尚
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 89-103
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 複断面化した高燥な砂礫堆上でアキニレが分布を拡大している一方で,エノキとムクノキの分布拡大がみられない要因を明らかにするため,高知県物部川の砂礫堆上で各種の実生と稚樹の定着立地の調査を行い,また実験室内で種子の発芽実験,圃場で実生の定着実験と成長実験を行った.
      2. 砂礫堆上での3種の実生・稚樹の定着立地は異なっていた.アキニレの種子は,裸地や草本群落内で多くの実生・稚樹が確認された.エノキとムクノキの実生・稚樹は,木本群落内で多くの個体が確認され,裸地や草本群落内では定着個体が少なかった.このことは,アキニレの種子は風散布型であるのに対して,エノキとムクノキの種子は鳥散布型であることが影響していると考えられた.
      3. アキニレとムクノキの種子は一次休眠性がなく,乾燥状態で保存した種子の発芽も可能であった.一方,エノキの種子は一次休眠性があり,湿潤状態で保存された場合にのみ休眠が解除されることから,高燥立地で発芽できる可能性は低い.
      4. アキニレの種子は扁平で接地した面から幼根を伸長させ,高燥な立地での定着も可能であると考えられた.一方,エノキの種子では上や横向きに発芽する個体もあり,これらは乾燥によって幼根が損傷を受けて定着は困難であった.
      5. 3種とも,実生期の生存率は乾燥条件下で低いものの,生残できた個体の成長は良好なことから,高燥な砂礫堆上でも生育が可能である.
      6. 以上のことから,アキニレは高燥な砂礫堆に侵入し,発芽・定着して成長していくうえでの阻害要因が少ないので,早く分布を拡大することが可能であるが,エノキとムクノキは,種子の散布と発芽,実生の定着の段階で制限や阻害を受けると考えられ,高燥な砂礫堆上での大規模な侵入・定着は観察されないと考えられる.
  • 小川 みふゆ, 上條 隆志, 磯谷 達宏, 福田 廣一
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 105-117
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 鬼怒川源流部の山地帯と亜高山帯の移行部に成立している原生状態の針広混交林の種組成,構成種のサイズ構造および更新特性を,標高的に上下に位置する森林と比較した.これらにもとづいて,この地域の針広混交林が,本州の他地域の針広混交林の中で植生地理学的にどのように位置づけられるかについて検討した.
      2. 手白山北西斜面の標高1340-1780mの範囲において,ブナ-トチノキ林,ウラジロモミ-シウリザクラ林,トウヒ-コメツガ林およびコメツガ-クロベ林に方形区を設定して,樹高1.3m以上の樹木の種名,胸高直径,樹高を測定した.樹高1.3m未満の樹木に関しては方形区内に稚樹調査枠(2×2m)を設定して樹種と高さを記録した.
      3. ウラジロモミは全ての林分に出現したが,ウラジロモミ-シウリザクラ林での胸高断面積合計比が最も高かった.シウリザクラはブナ-トチノキ林,ウラジロモミ-シウリザクラ林,トウヒ-コメツガ林に出現したが,ウラジロモミ-シウリザクラ林での胸高断面積合計比が最も高かった.
      4. ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林は群落高が35-40mと高かった.幹直径-樹高関係から針葉樹と落葉広葉樹の最大樹高を推定したところ,ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林では針葉樹の樹高が落葉広葉樹よりも高かった.
      5. ウラジロモミ-シウリザクラ林とトウヒ-コメツガ林は,樹高の高い針葉樹(ウラジロモミ,トウヒ)が上層を占め,その下層に落葉広葉樹が配置されるという点で北海道の針広混交林と構造的な類似性が認められた.
      6. ウラジロモミ-シウリザクラ林では,優占種のウラジロモミは,不連続なサイズ構造であった.ウラジロモミは,台風などに起因する大規模な攪乱が更新の機会になっている可能性があると考えられた.
      7. 奥鬼怒地域のウラジロモミ-シウリザクラ林およびトウヒ-コメツガ林は,本州の八ヶ岳や上高地にみられる針広混交林と種組成に共通性があり,上部温帯林と捉えることができた.
  • 平田 晶子, 上條 隆志, 中村 徹
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 119-136
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. スギ,ヒノキ,サワラのいずれかが植栽された人工林において,植物社会学的方法による植生調査を行った.
      2. 表操作法に基づく群落区分の結果,6つの種群によりスギ-フモトシダ群落,スギ-ドクダミ群落,スギ-ヘビノネゴザ群落,スギ-アオダモ群落の4群落に区分された.
      3. 人工林群落と自然林との分布域の対応関係をみたところ,スギ-フモトシダ群落は,WI≧120℃・monthのスダジイ-ホソバカナワラビ群集の成立域を中心に分布しており,スギ-ドクダミ群落は,100℃・month≦WI<120℃・monthかつMTCM≧2℃のスダジイ-ヤブコウジ群集の成立域を中心に,スギ-ヘビノネゴザ群落は,85℃・month≦WI<100℃・monthかつMTCM<2℃のウラジロガシ-サカキ群集の成立域を中心に分布していた.スギ-アオダモ群落はWI≦90℃・monthの暖温帯と冷温帯との移行域を中心に分布していた.
      4. 各群落の出現種の生活形を比較した結果,常緑木本はスギ-フモトシダ群落,スギ-ドクダミ群落に多く,落葉木本はスギ-フモトシダ群落スギ-ドクダミ群落,スギ-ヘビノネゴザ群落,スギ-アオダモ群落の順に多くなっていた.
      5. 各群落に出現する他の植生単位の標徴種,識別種の平均出現種数の割合を比較した結果,ヤブツバキクラスおよびその下位の植生単位の標徴種,識別種はスギ-フモトシダ群落やスギ-ドクダミ群落に多く,ブナクラスおよびその下位の植生単位の標徴種,識別種はスギ-ヘビノネゴザ群落やスギ-アオダモ群落に多い傾向がみられた.
      6. 人工林にはアカマツ-コナラクラスの標徴種,識別種も多数出現したが,コナラ二次林で比較的多いとされているススキクラスの種はほとんど出現せず,この点がコナラ二次林との種組成の違いであると考えられた.
      7. 人工林の構成種には,森林性の種のほかに,林縁性の種が多数含まれており,これらの種の存続には人工林の施業が影響していると考えられた.
  • 原 正利
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 137-152
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 八溝山地,阿武隈山地,北上山地を中心とする関東北部以北の太平洋側地域において,ブナの分布域を水平的,垂直的にカバーするように,54地点に植生調査区(投影面積111.3-1039.2m^2)を設置し,ブナを含む森林群落について,上層木(胸高直径5cm以上)の毎木調査と下層の植生調査を行った.
      2. 各林分における種の存否に基づいたTWINSPANによる第3水準までの植生分類によって,調査林分はA-Eの5林分群に分かれた.A-Dの4林分群は,太平洋側の温帯,特に下部温帯の気候的極相と考えられる自然林であるイヌブナ林やモミ林,あるいはブナ林に広く出現する種を多く含んでいた.一方,E群は日本海型のブナ林と共通する種群を多く含んでいた.
      3. 優占型の点からは,A-Cの3林分群はブナのほかコナラ,アカシデ,イヌブナ,モミなど多様な種の混交した林分が多かった.D・E群は優占種数が少なく,ブナが優占する林分が多かった.
      4. A群からE群に至る林分群の配列は,気候傾度に沿ったもので,A群からE群に向かって暖かさの指数WIが低下し,これと並行的に冬期降水量と最深積雪深が増加していた.
      5. 地形的には全ての林分群を通じて,尾根や斜面上部に成立した林分が多かった.
      6. ブナの個体群については,A群からE群に向かって,1)優占度(胸高断面積の相対値RBA)の増加,2)局所的な個体群密度の増加,3)稚樹や小径木の少ない断続的なサイズ構造から連続的なサイズ構造への変化が認められた.
      7. 当地域のブナは本来,温帯域全体にまたがる広い垂直分布域を持ち,上部温帯域において優占林分を形成するだけではなく,下部温帯域においては,混交林の1要素として,密度こそ低いものの広範囲にメタ個体群構造をとりつつ分布していたと考えられる.
      8. 低海抜域に低密度で分布するブナ個体群の維持再生機構については未解明な点が多く,保全上からも今後の重要な課題である.
  • 伊藤 哲, 光田 靖, 魏 敦祥, 高木 正博, 野上 寛五郎
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 屋久島西部の国割岳西斜面を対象に,準絶滅危惧種ヤクシマサルスベリの潜在的なハビタットの推定を行った.
      2. 現地調査による個体分布と数値地形情報から算出された地形因子を基に12.5m×12.5mの11280セルについて,ポアソン分布を用いた一般化線形回帰分析(Poisson loglinear model)による個体密度推定モデルを構築した.
      3. 地形因子を1)対象セルそのものの地形特性,2)最近接流路との位置関係,3)最近接流路の属性,4)集水域の違いの4レベルに整理し,各レベルの因子を順次追加してモデルを構築することで,使用する因子の重要度を比較した.
      4. モデルの次数が大きくなるに連れてAICが減少しており,モデルの当てはまりのよさが向上した.この結果は,解析対象とするセルそのものの地形特性だけでは,ヤクシマサルスベリの潜在的なハビタットの推定が困難であることを示していた.
      5. 集水域の違いを考慮したモデルでは,他のモデルと比較して推定精度が飛躍的に向上した.これは,種子供給源と土砂生産源の存在の違いが影響していると考えられた.
      6. 以上の結果から,渓畔種であるヤクシマサルスベリの潜在的なハビタット推定には,近接流路との関係および流路の属性の考慮および集水域の違いに関わる要因として土砂生産源となる崩壊地の分布や種子供給源となる母樹の分布の把握が有効であることが示唆された.
  • 原稿種別: 文献目録等
    2006 年 23 巻 2 号 p. 176-
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
短報
  • 冨士田 裕子
    原稿種別: 本文
    2006 年 23 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 2000年3月31日に開始した有珠山噴火活動によって金比羅山山麓にできた2つの火口のうち,K-B火口湖岸の植生を2004年8月に調査した.
      2. 調査地付近には2001年春から植物の侵入・定着が認められ,2004年には抽水植物を含め21種の植物が確認され,植生は微地形に沿って変化していた.
      3. 確認された植物の多くは,風散布型植物と火口付近の治山事業や復旧活動にともない人が持ち込んだと推察される路傍雑草であった.
      4. 湖岸や水の停滞する場所では抽水植物の繁茂が著しく,それらの多くは鳥,特に水鳥によって散布された可能性が高い.
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