植生学会誌
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24 巻 , 1 号
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原著論文
  • 野田 浩, 吉川 正人, 辻 誠治, 平中 晴朗, 福嶋 司
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 河川沿いの沖積砂礫地に成立するコナラ林の植物社会学的位置付けをおこなうために,本州中部を流れる河川において植生調査をおこない,山地,丘陵地,台地に成立する既報のコナラ林の諸群集と種組成の比較をおこなった.
      2. 河川沿いのコナラ林は種組成的な独自性が高いと判断されたことから,ヤマブキ,ウメガサソウ,サワシバ,クロウメモドキ,イヌザクラ,アサダ,オニイタヤ,ウバユリを標徴種として,新たにコナラ-ヤマブキ群集を記載した.
      3. コナラ-ヤマブキ群集は山地,丘陵地,台地のコナラ林の諸群集に比べて,ハルニレ-シオジオーダーの種をより多く有し,逆にススキクラスの種が少い.これは土壌条件や農用林・薪炭林としての利用履歴などが異なっていることが関係していると考えられた.
      4. コナラ-ヤマブキ群集は,WI75℃・月から110℃・月,CI-25℃・月から-5℃・月に分布していた.このことから,本群集は気候的には中間温帯を中心に分布する群集であると考えられた.
      5. コナラ-ヤマブキ群集の分布は,内陸部の山地と低地の境界付近に集中しており,扇状地の分布と一致していた.また,主な成立立地は礫床河川沿いの砂礫地であった.
      6. コナラ-ヤマブキ群集は山地,丘陵地,台地のコナラ林ではほとんど出現しないキハギ,クモキリソウ,アブラチャン,オシダなど,河畔林や渓畔林との共通種を多数有していた.特に,同様の立地に成立するアカマツ-ヒメヤブラン群集や渓谷のケヤキ林との種組成的関連が強いことがわかった.
      7. コナラ-ヤマブキ群集はカシ類,ブナなどの気候的極相種をほとんど含まないことから,中間温帯域の礫床河畔における土地的極相群落の一つと考えられた.
  • 中西 弘樹, 中西 こずえ, 高木 麻美
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    ハマボウはアオイ科の落葉低木で,関東地方南部以西の本州,四国,九州と韓国済州島に分布し,河口付近や入り江などの塩湿地やその周辺に生育し,純群落を形成する.近年は河川改修や埋め立てなどによって生育地が少なくなり,個体群が孤立化したり,群落が縮小化している.本研究はハマボウの花と果実の形質を調べ,個体群多様性の重要性を明らかにする目的で行ったものである.調査は長崎県の西彼杵半島の東側に位置する大村湾沿岸の5つの個体群と,外海側に位置する半島の西側の4つの個体群を対象に行った.各個体群から5つの個体をランダムに選び,計45個体について,各個体から30ずつの花と果実を採集し,形質を調べ,比較した.測定した形質は,花弁長,花弁幅,花柱長,葯-柱頭距離,葯-葯距離,雄蕊数,果実長,果実径,1果実あたりの潜在的な種子数(胚珠数)である.その結果,同一個体群内において各個体はそれぞれ特徴的な形質をもっているが,形質によっては差がないものもあった.しかし,個体群間ではすべての形質において差が認められた.大村湾側個体群と外海側個体群とを比較すると,大村湾側個体群の方が,花弁長,花弁幅,葯-葯距離,果実長,果実径,1果実あたりの潜在的な種子数において値が小さかったが,葯-柱頭距離は値が大きかった.また,花柱長と雄蕊数は有意な差はなかった.大村湾は超閉鎖性の湾で,約7000年前に湖と海とが繋がり,海水が流入して成立したもので,海水が外海から流入した際に,湾外のハマボウが侵入し,大村湾側に拡がっていったものと考えられ,現在は隔離状態にある.大村湾側の個体群の形質の特徴は,ポリネーターが豊富な環境の下で,自花受粉をさけるように進化した可能性を示している.ハマボウ群落の保全や植生復元には,個体群レベルで考慮する必要があると考えられる.
  • 宮島 悠, 佐藤 利幸, 高橋 耕一
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 29-40
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    乗鞍岳の標高800mから3000mにおいて,木本植物(樹高1.3m以上),草本とシダの林床植物の標高傾度にそった植生変化を調べた.クラスター解析から,木本植物の植生はおおまかに3タイプに区分できた.山地帯落葉広葉樹林(標高800m-1600m),亜高山帯針葉樹林(標高1600m-2500m),そしてハイマツ低木林(標高2500m-3000m)である,草本とシダの林床植物も標高によって変化したが,それらの植生変化は木本植物とは一致しなかった.林床植物の植生はとくに標高1400mから2800mの広い範囲でクラスターを形成していた.ただし標高1400mから2000mではササが優占していたため,この標高帯で植生のサブクラスターが認められた.木本植物の種数は標高が高くなるにしたがい減少したが,林床植物ではそのような傾向は認められなかった.また,ササが優占している標高帯では,木本と林床植物の種多様度指数は減少した.したがって,この研究では,標高傾度にそった植生変化は木本植物と林床植物(草本,シダ)によってパターンが異なる,そして種多様性は標高だけでなくササによっても影響されることが示唆された.
  • 松村 俊和, 服部 保, 橋本 佳延, 伴 邦教
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 41-52
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 北摂地域の萌芽林において,遷移の進行に伴う常緑植物の量と種多様性および種組成との関係を明らかにすることを目的にして,常緑植物が少ないクヌギ群落,低木層で常緑植物が優占しつつあるコナラ群落,高木層および低木層で常緑植物が優占したアラカシ群落において植生調査を行った.
      2. 常緑植物積算被度と全出現種数,全階層の夏緑植物種数,草本層の出現種数および草本層の夏緑植物種数との間にはそれぞれ有意なやや強い負の相関関係が認められた.
      3. DCAの第1軸と第2軸により調査区を配置したところ,アラカシ群落でややばらつきがあるものの,優占種による群落区分と種組成による序列とがほぼ一致していた.固有値が大きく種組成の分化を最もよく表しているDCAの第1軸と常緑植物積算被度との間には,有意なやや強い正の相関が認められた.
      4. 100m^2あたりの出現種数はクヌギ群落(50.8種),コナラ群落(41.2種),アラカシ群落(19.3種)の順で多く,出現種数はクヌギ群落とアラカシ群落との間およびコナラ群落とアラカシ群落との間で有意な差があった.それぞれの群落に特徴的に出現していた種をみると,クヌギ群落では38種のうち33種,コナラ群落では15種のうち11種,アラカシ群落では11種のうち2種が夏緑植物であった.
      5. 常緑植物積算被度の増加による光環境の悪化によって耐陰性の低い種の生育が妨げられたたため,種多様性の減少と種組成の変化がおこったと考えられた.
  • 伊藤 哲, 大塚 久美子, 山下 寿之
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    九州東・南部に生育するブナ科アカガシ亜属の7樹種について,既存の植生資料と一部の原調査資料の解析により生態的な分布の特徴を明らかにした.標高傾度に沿ったそれぞれの樹種の分布解析,およびクラスター分析を用いた出現傾向の類似性の解析により,常緑カシ7種は高標高型4種(アカガシ,ウラジロガシ,シラカシおよびツクバネガシ)と低標高型3種(イチイガシ,アラカシおよびハナガガシ)の2つのグループに分けられた.アカガシは最も高標高域に分布し,斜面上部に偏って分布する傾向が認められた.ウラジロガシは7種の中で最も出現頻度が高かった.また,分布の標高幅も広く地形的な分布の偏りも認められないことから,7種の中では最も普遍的に出現する種と特徴付けられた.シラカシは前2種よりやや低標高に分布し,地形的な分布の特徴は検出できなかったが,調査対象地域内では内陸部に分布が集中した.ツクバネガシはシラカシと同様な標高分布を示したが,低標高域において斜面下部への分布の偏りが顕著であり,一種の渓畔要素となっていることが示唆された.低標高型3種のうち,アラカシはウラジロガシと同様に地形的あるいは地理的な分布の偏りがみられなかったが,種間クラスター分析では先駆種や雑木林などを生育場所とする落葉木本種と同じクラスターを形成し,攪乱に依存した性格が7種の中で突出していることが伺われた.イチイガシは,低標高の照葉樹自然林の標徴種群と同様の出現傾向を示し,地形に対する偏りも比較的弱かった.これに対してハナガガシは,最も低標高域に分布が限られ,地形的にも斜面上部での生育はほとんど認められなかった.
資料・報告
  • 久保 満佐子, 川西 基博
    原稿種別: 本文
    2007 年 24 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2007/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 山梨県の本栖湖岸にある治山堰堤のり面で,隣接地の森林土壌を吹き付ける緑化工法が行われた.この工法により出現した植物の種組成を,土壌採取地の埋土種子相および現存する森林の種組成と比較した.
      2. 本工法が行われたのり面では,フサザクラやフジウツギ,キブシ,ミズメ,バッコヤナギ,ヤマハンノキなど,崩壊地や明るい環境に生育する樹種が多く出現した.埋土種子相には,バッコヤナギやヤマハンノキは含まれていなかった.現存する森林の種組成はこれらと大きく異なっていた.
      3. 本調査地の埋土種子相には,現存する森林の種組成とは異なる先駆的な樹種が多く含まれていた.
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