植生学会誌
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25 巻 , 2 号
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原著論文
  • 尹 鍾学, 福嶋 司, 金 文洪, 吉川 正人, 本間 秀和
    原稿種別: 本文
    2008 年 25 巻 2 号 p. 75-93
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 韓半島東南部と九州北部,および周辺島嶼の済州島,鬱陵島,対馬の5地域において,自然性が高い森林群落の種組成と垂直分布を比較し,地域間の森林植生帯の構造と種組成の類似性,異質性について検討した.
      2. 1204の植生調査資料を用いて地域ごとに組成表を作成し,28群落を識別した.区分された群落の組成的関係を地域間で整理したところ,地域ごとの独自の種群と,いくつかの地域にまたがって出現する種群の存在,さらに落葉および常緑フロラからなる種群の対立が,群落の分化に関わっていた.特に鬱陵島は多くの固有種を含んでいることから群落の独立性が高かった.また,韓半島と九州北部・対馬との間で大きな組成的違いがみられたが,済州島では高海抜地は韓半島と,低海抜地は九州北部や対馬との共通種群をもっていた.
      3. 調査地域内での垂直的な森林植生帯は,常緑広葉樹林から落葉広葉樹林,常緑針葉樹林へと推移することで基本的には共通していた.
      4. 低地の常緑広葉樹林では,スダジイ優占群落が済州島,九州北部,対馬に,タブノキ優占群落が全地域に分布していた.いずれも北上するにしたがって群落構成種が欠落し,種組成が単純化していた.
      5. 丘陵帯の常緑広葉樹林では,アカガシ優占群落とモミ優占群落が九州北部や対馬に特徴的であり,明瞭な森林帯を形成していた.しかし,韓半島ではこれにあたる植生帯が欠けていた.
      6. 山地帯の落葉広葉樹林では,韓半島と済州島でコナラ亜属のモンゴリナラとコナラが優占種となるのに対して,鬱陵島と九州北部ではブナ属のタケシマブナ,ブナが優占していた・また韓半島では山地帯上部にトウシラベの優占群落が出現し,モンゴリナラとともに針広混交林となって植生帯を構成していた.
      7. 調査地域内では,典型的な亜高山帯針葉樹林はみられなかったが,済州島のチョウセンシラベ優占群落は,日本の亜高山帯針葉樹林に比較的近い種組成をもっていた.
      8. DCA法による群落の序列化では,各地域の常緑広葉樹林は第1軸において低い値の領域にまとまって配置され,種組成が類似していることが示された.それ以外の森林群落では,地域ごとに大きく離れて配置され,地域内の植生帯間の差異よりも,地域間の同一植生帯どうしの差異のほうが大きかった.地理的に離れて分布する高海抜地域の群落ほど,固有種を含む独自の種群が群落構成要素に加わり,地域間の違いが大きくなっていた.
      9. DCAの第1軸は,WI,CI,降水量のほか,気温年較差とも相関があった.すなわち,落葉広葉樹林帯より上部での群落の組成的差異は,海洋性気候から大陸性気候への傾度と対応していた.
  • 大塚 俊之, 横澤 隆夫, 大竹 勝
    原稿種別: 本文
    2008 年 25 巻 2 号 p. 95-107
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 富士北麓の青木ヶ原溶岩流上には,いわゆる青木ヶ原樹海と呼ばれるヒノキとツガを中心とする広大な針葉樹林が成立している.本研究は,永久方形区を用いて個体の成長や生残についての調査を行い,青木ヶ原樹海の森林構造とパッチ動態について明らかにすることを目的とした.
      2. 青木ヶ原樹海内に0.25ha(50m×50m)の永久方形区を設置して2001年に樹高1.3m以上のすべての個体について毎木調査を行った.また,林床の相対光量子密度の測定と樹高1.3m以下の実生の分布調査も行った.2005年には個体の生残と成長に関する再調査を行い,さらに主要優占種において成長錐を抜いて樹齢を推定した.
      3. 永久方形区内ではヒノキ(胸高断面積合計の45.4%)とツガ(26.3%)が優占し,両種とも逆J字型の直径階分布を持っていた.次に優占度の高いミズメ(3.9%)は,10-20cmのクラスにピークを持つ1山型の直径階分布を持っていた.ミズメ(0.0158y^<-1>)やミズナラ(0.0126y^<-1>)などの落葉樹のRGRDは非常に高かったが,ツガ(0.0041y^<-1>)とヒノキ(0.0056y^<-1>)のRGRDは全個体の平均値を下回った.全体では直径が小さいほど枯死率が大きくなり,5cm以下の個体では4%を超えていたが,ツガ(1.4%)とヒノキ(0.5%)の枯死率は低かった.
      4. TWINSPNを用いて25個のサブコドラート(各100m^2)をツガパッチと落葉樹パッチの2つのグループに分割した・直径20cm以上のツガ個体のほとんどがツガパッチに分布しており,落葉樹は少なかった.ヒノキは両方のパッチに広く出現したが,直径が大きな個体はツガパッチのほうに分布する傾向があった.一方で,落葉樹パッチにはミズメやミヤマザクラなどの落葉樹が集中的に分布しており,さらに直径5cm以下のヒノキやツガが多く出現した.落葉樹パッチは,春に落葉樹の葉が展開するまでツガパッチに比べて林床が明るく,ツガパッチにはほとんど見られないヒノキとツガの実生が非常にたくさん出現した.
      5. ツガパッチでは,ツガの最大樹齢が約330年でヒノキの最大樹齢が約220年であり,ヒノキよりもツガが先に侵入していた.一方で林冠に達するような直径が15cm以上の個体では,ヒノキよりもツガのほうがRGRDが低かった.落葉樹パッチではミズメの樹齢は60-70年で揃っており,針葉樹に比べてミズメのRGRDは非常に高かった.
      6. 現在のツガパッチでは,ヒノキがツガよりも遅れて侵入し混交林を形成していた.また,細いサイズのツガやツガ実生が少ないことから,混交林はやがてヒノキ林へと遷移していくと考えられる。ミズメやミヤマザクラはヒノキ林の林冠を破壊するようなギャップにおいて先駆性パッチを形成すると考えられた.
      7. 本来の冷温帯林の極相種であるミズナラは,本数は少ないが300年を越す非常に古い個体が散在した.青木ヶ原樹海内では,落葉樹を炭焼きに利用していたことが知られており,ミズナラの位置づけについては今後再検討する必要がある.
  • 根本 真理, 星野 義延
    原稿種別: 本文
    2008 年 25 巻 2 号 p. 109-120
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 栃木県茂木町の丘陵地帯において,Rabinowitz(1981)による希少性の類型化手法を参考に,植生調査資料を用いて地域フロラ構成種の希少性を定量的・客観的に類型化した.
      2. 丘陵地の小集水域をサイトとし,14のサイトにおいてフロラ調査と植生調査を行った.得られた385の植生調査資料を用いて表操作を行った結果,53タイプの群落が区分された.調査地全域で672種を確認し,そのうちには絶滅危惧種が8種含まれていた.
      3. 各種の出現サイト数,出現群落数,出現時の平均被度を算出し,この3項目の多少の組み合わせから,種の希少性を8パターン(=2×2×2)に類型化し,地域フロラ構成種の希少性タイプを判定した.各類型化項目の多少のしきい値には中央値を用いた.
      4. 各希少性タイプに分類された種数の割合には偏りがあり,普通とされるタイプの種と,最も希少とされるタイプの種が多かった.希少性タイプ別の種数の割合はサイト間では大きな違いはなかったが,群落間では大きく異なっていた.水田雑草群落や,雑木林や植林地といった木本群落の構成種に希少とされる種の割合が高かった.調査地に出現した国レベルの絶滅危惧種で希少性を判定できた種はすべて,最も希少性が高いとされるタイプに分類された.
      5. 地域フロラを構成する種を希少性に基づいて分類することで,各種の地域での絶滅を引き起こす可能性のある要因を特定することができる.保全の必要性の高いサイト・群落の特定が可能になる本研究の手法は,種多様性保全及び生物多様性保全のための基礎的知見となると考えられる.
  • 小嶋 紀行, 藤原 一絵
    原稿種別: 本文
    2008 年 25 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 伊豆諸島の利島を対象に,東西斜面間での垂直分布の差異の実態と,西斜面の上部に特異的に存在するヤマグルマ-オオバエゴノキ群落の成因を検討した.
      2. 自然性の高い合計12の調査区において,毎木調査によって得られた資料から各種の優占度(RBA)を算出し,調査区間の類似度を求めてクラスター分析を行った結果,島の森林植生は低地のスダジイ-タブノキ型と,高地のヒサカキ-オオバエゴノキ型に分けられた.ヒサカキ-オオバエゴノキ型は,種組成の点でヤマグルマ-オオバエゴノキ群落と相同の植生であると考えられた.
      3. 東西斜面間でヒサカキ-オオバエゴノキ型の分布域を比較すると,分布下限高度が東斜面に比して西斜面で100mほど低く,垂直分布に東西較差がみられた.
      4. スダジイ-タブノキ型はスダジイとタブノキが優占し,発達した群落構造を示したが,一方のヒサカキ-オオバエゴノキ型は常緑広葉樹と先駆性落葉広葉樹が混生し,未発達な群落構造であった.
      5. 西斜面におけるヒサカキ-オオバエゴノキ型の分布域は,最寒月の平均気温が5.1℃,冬芽期の月平均気温の積算値が52.0℃・月となり,落葉広葉樹二次林の優占域と一致していたことから,ヒサカキ-オオバエゴノキ型は冬季の低温によって成立した植生であると考えられた.
      6. 偏形樹を調査した結果,偏形度の高い偏形樹が西斜面に集中分布していたことから,西斜面は強い季節風の影響下にあると考えられた.これより,冬季季節風の攪乱作用によってスダジイ-タブノキ型が欠落する西斜面の上部に,ヒサカキ-オオバエゴノキ型が成立していると考えられた.
短報
  • 松村 俊和, 武田 義明
    原稿種別: 本文
    2008 年 25 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 淡路島の水田畦畔法面における二次草原で,管理放棄後の年数と種数および種組成との関係を明らかにすることを目的として,管理が継続されている管理地と管理放棄後1-6年経過した放棄地で出現種とその被度および高さを調査した.
      2. 管理地の出現種数の平均値は25.3種で放棄地よりも有意に大きかった.放棄地での放棄後の年数と出現種数との間には,有意な負の相関が認められた.
      3. 積算被度と種数との間に有意な負の相関があった.また,0.2m以下の階層,0.2mを超え0.4m以下の階層および0.4mを超え0.6m以下の階層で,上層の積算被度と種数との間にそれぞれ有意な負の相関があった.
      4. 管理地の種組成は放棄後の年数が3年以内の放棄地とは類似していたものの,放棄後の年数が4年以上の放棄地とは異なっていた.
      5. 管理地には28種が特徴的に出現していたのに対して,放棄地に特徴的に出現していたのはネザサ類のみであった.
      6. 管理放棄による出現種数の減少と種組成の変化は,放棄後数年間という短期間に起こっていた.これは,草刈りによって被度の増加を抑えられていたセイタカアワダチソウやネザサ類が,管理の放棄とともに高さおよび被度を増加させたことによると考えた.
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