植生学会誌
Online ISSN : 2189-4809
Print ISSN : 1342-2448
ISSN-L : 1342-2448
26 巻 , 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 大森 威宏, 山村 靖夫, 堀 良通
    原稿種別: 本文
    2009 年 26 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    尾瀬ヶ原湿原においてヤチヤナギMyrica gale var.tomentosaの分布と微地形の関係を解析した.ヤチヤナギは1970年代に行われた調査以来尾瀬ヶ原での増加が指摘され,それに伴う生態系への影響が危惧される低木である.ヤチヤナギの有無,樹高,微地形の解析には1辺25mのメッシュを用いた.尾瀬ヶ原を構成する3地域(上田代,中田代,下田代)の間ではヤチヤナギの出現頻度は有意に異なった.ヤチヤナギは中田代では全体の71.1%に出現したが,上田代では25.8%,下田代では2.1%のみに出現した.同一の植生単位であってもヤチヤナギの出現頻度は中田代で高く,下田代で最も低い傾向を示した.ヤチヤナギの分布は流域の上流側や河床との比高が大きい場所で欠落する傾向があった.ヤチヤナギの種子は,主に水面を浮上して散布されるため,このような立地では種子供給の機会が低いと考えられる.ヤチヤナギの樹冠高は,河川との比高が小さい平坦地や林縁部で高く,河川や森林からの距離が遠くなると低くなる傾向があった.新たにヤチヤナギが侵入したと考えられる地点はいずれも木道沿いか,木道から近い場所であった.また,木道沿いではヤチヤナギの樹冠高が高くなる傾向があった.木道の敷設による局所的な環境改変が,ヤチヤナギのサイズ増大や分布拡大をもたらしていると考えられる.
  • 岡 浩平, 吉崎 真司, 小堀 洋美
    原稿種別: 本文
    2009 年 26 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 海浜植物の個体群の維持・拡大における種子繁殖の役割を明らかにするために,静岡県遠州灘海岸において多年生の海浜植物5種の実生の発生と生存について調査を行った.
      2. コウボウムギは,前砂丘後背の打ち上げ帯において実生の定着が高密度で確認された.打ち上げ帯の漂着物は,土壌中の主要な栄養塩であるN-NO_3^-を上昇させる効果があり,コウボウムギ実生の生長に影響していると考えられた.また,コウボウムギは,打ち上げ帯によって裸地部に個体群を拡大していたと考えられた.
      3. コウボウムギとハマヒルガオ,ハマニガナの3種は,前砂丘内において実生の発生密度や生存率に関係なく,成個体の優占度が比較的高かった.また,実生の定着は,前砂丘内のくぼ地など限られた立地で起きていた.この3種は,横走地下茎によって個体群を拡大できることから,前砂丘内では個体群の維持・拡大において種子繁殖よりも栄養繁殖に依存していると考えられた.
      4. ケカモノハシとビロードテンツキは,前砂丘内の成個体が生育している微地形において,実生の定着が高密度で確認された.この2種は,横走地下茎によって個体群を拡大することが困難なため,前砂丘では個体群の維持・拡大において栄養繁殖よりも種子繁殖に依存していると考えられた.
      5. 前砂丘内において,個体群の維持・拡大のための種子繁殖への依存度は,海浜植物によって異なると考えられた.また,実生の定着特性は,打ち上げ帯と前砂丘,さらに前砂丘内の微地形によって異なると考えられた.
  • 石井 浩之, 中田 誠, 加々美 寛雄, 平 英彰
    原稿種別: 本文
    2009 年 26 巻 1 号 p. 21-32
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. これまで研究事例のなかった,標高的な森林限界に達していない山岳の亜高山帯針葉樹林域に高山性植物群落が成立している要因を明らかにするため,長野県黒姫山のカルデラ内壁の岩塊斜面下部において,植物群落の特性,立地・気象要因について調査した.
      2. TWINSPANの解析によって区分された各群落は,斜面下部から上部へ向かって順に,チシマザサ群落,コメバツガザクラ-ミネズオウ群集,コケモモ-ハイマツ群集,アカミノイヌツゲ-クロベ群集(オオシラビソ群集のコメツガ亜群集),オオシラビソ群集に相当すると考えられた.
      3. 黒姫山の岩塊斜面は最終氷期の中期ころ形成され,天狗の露地に成立している高山性植物群落(コメバツガザクラ-ミネズオウ群集)は,そのころに分布していた極地性植物群落に由来すると考えられた.
      4. 高山性植物群落の成立に対して積雪が影響を及ぼしているとは考えられなかったが,風穴から吹き出す冷気は高山性植物の繁殖や生存に影響を及ぼしている可能性が考えられた.
      5. 天狗の露地には高木性樹種の種子が供給されていたが,岩塊上では土壌の発達がきわめて悪く,薄い植物腐植しか堆積していないため,定着した高木性樹種はその生育が著しく抑制されていた.
      6. 本調査地の高山性植物群落に侵入し,その生育地を縮小させるパイオニア的役割を果たしている樹種は,ハイマツと低木状のコメツガであった.
      7. 本調査地の岩塊斜面上での植物群落の変遷は,高山性植物群落からコメツガ群落,オオシラビソ群落へと進んでいったと考えられ,岩塊斜面に侵入した植物によるリターの供給と有機物層の堆積が重要な役割を果たしていた.
      8. 岩塊斜面の下部に位置する天狗の露地では,粗大な岩塊の影響で土壌の発達が妨げられているために高木性樹種が定着しにくく,高山性植物群落が遺存できたと考えられた.
  • 杉村 康司, 沖津 進
    原稿種別: 本文
    2009 年 26 巻 1 号 p. 33-48
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 茨城県筑波山のスギ・ヒノキ人工林を対象に,コケ植物の分布と微地形との関係を明らかにするため,植生調査を行った.コケ植物の分布と顕花植物ならびにシダ植物の分布を比較し,それらをもとにスギ・ヒノキ人工林内におけるコケ植物の地形分布と種多様性における微地形の生態的意義を検討した.
      2. 微地形条件に対応した種の割合は,コケ植物,シダ植物,顕花植物の順に多かった.特に,谷底面のみに出現した種はコケ植物が多かった.微地形との対応関係はコケ植物,シダ植物,顕花植物の順に明瞭であった.
      3. 各微地形のコケ植物,シダ植物,顕花植物の平均出現種数は,頂部平坦面,頂部斜面,上部谷壁斜面,下部谷壁斜面,麓部斜面,谷底面の順に増加していた.各微地形間における有意差は,コケ植物,シダ植物,顕花植物の順に明瞭であった.
      4. コケ植物の地形分布は,顕花植物よりもシダ植物の地形分布と類似していた.5.スギ・ヒノキ人工林における植物の分布は,流路からの距離の違いに伴って谷底面,麓部斜面,下部谷壁斜面,上部谷壁斜面,頂部斜面,頂部平坦面と変化する微地形条件を反映していると考えられた.
      6. スギ・ヒノキ人工林における種多様性の維持にとって,谷底面が最も重要性が高く,谷底面のみに出現するコケ植物種群の役割が大きいことが明らかになった.
  • 服部 保, 栃本 大介, 南山 典子, 橋本 佳延, 澤田 佳宏, 石田 弘明
    原稿種別: 本文
    2009 年 26 巻 1 号 p. 49-61
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 九州南部の熊本県市房山,宮崎県綾町川中,宮崎県大森岳,鹿児島県栗野岳,鹿児島県白谷雲水峡に分布する照葉樹林において,宿主木の樹幹・枝条に付着する植物の調査を行い,着生植物の種多様性と宿主木のDBHや樹種との関係および5調査地の種組成の相違について比較考察した.
      2. イスノキ,タブノキ,アカガシなどの宿主木45種,586個体に着生する植物を調査した結果,着生植物37種を確認した.国内の照葉樹林の着生植物はシダ植物(24種)とラン科(11種)によって特徴づけられていた.
      3. 5調査地間の着生植物の種組成を調査地ごとにまとめた出現頻度(%)と平均被度(m^2)によって示された種組成表によって比較した.市房と栗野の種組成が類似し,市房・栗野,川中,白谷が各々異質であった.
      4. 5調査地の宿主木をDCAによって配置した.白谷と川中の宿主木が両極に,中間部に市房,栗野,大森が配置された.市房,栗野,大森の混在が顕著であり,組成の類似性が認められた.種組成を示した表とDCAの結果はほぼ一致していた.
      5. 5調査地の種組成の違いは気温条件,降水量条件などの環境条件と整合している点が多かったが,種群の詳細な生態的特性等については明らかにできなかった.
      6. 全樹種を対象とした着生植物種数(着生多様性)と宿主木のDBHには5調査地共に有意な強い正の相関が認められた.着生多様性とDBHとの回帰式はy=ax+b(y:着生植物種数,x:DBH cm,a・b:定数)で示すことができた.調査地間の回帰式の差は降水量,樹雨量などの水分条件に依ると考えられた.
      7. 各樹種においても,着生多様性とDBHには有意な正の相関が認められたが,同じ調査地の異種間および異なった調査地の同種間でも回帰式に差が認められた.異なった調査地の同種間の差は調査地の降水や雲霧などの条件の差に基づき,着生多様性の樹種間の差は樹種のもつ樹皮の性質の違いに基づくと考えられた.着生されにくい樹種としてヒメシャラなどが,されやすい樹種としてタブノキ,イチイガシなどが認められた.
feedback
Top