植生学会誌
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27 巻 , 2 号
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原著論文
  • 服部 保, 南山 典子, 小川 靖彦
    原稿種別: 本文
    2010 年 27 巻 2 号 p. 45-61
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 万葉集に詠まれている植物,植物群落,立地条件をもとに同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せおよび植物群落を解析し,万葉時代の植生景観について考察した.
      2. 万葉集に詠まれている維管束植物種数は145種(1650首),植物群落数は44(235首)であった.
      3. 同じ歌の中の植物間の組合せや植物と立地条件の組合せは現存植生の種組成や植物と立地条件の組合せとほとんど矛盾しておらず,万葉集の写実性の高さが確認できた.
      4. 「浜」,「里」,「野」,「山」における植生分布は万葉時代も現在も大きな差はなく,田畑,クロマツ林,チガヤ草原,ススキ草原,ヨシ草原,里山林などが当時広がっていたと推定した.万葉集の「山」は,現在使用されている用語でいうと「里山」に該当すると考えられた.
      5. 万葉時代の西日本の暖温帯における「奥山」の植生はスギ・ヒノキ個体群と照葉原生林の混生林か,両者が地形的にすみ分けていた樹林と考えられた.「奥山」は,その後人の土地利用によって里山化が進み,万葉時代の「奥山」は現在では里山放置林やスギ・ヒノキの人工林に変化している.
      6. 万葉集にもっとも多く詠まれていた植物はススキクラスの植物であった.しかし,「庭」に植栽されているススキクラスの植物を詠んだ歌が多く,その点を考慮すると,万葉集でもっともよく詠まれた植生景観は「庭」の景観であった.
  • 山下 寿之, 伊藤 哲, 大塚 久美子
    原稿種別: 本文
    2010 年 27 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    九州南東部の低地に分布するカシ林のうち,アラカシ林,イチイガシ林および絶滅危惧種であるハナガガシの林分に着目し,12調査区から得た植生資料および文献から得た65の植生資料を用いて,これら3種の優占する林分の種組成を比較した.また,12調査区での植生資料および立地環境の測定結果から,これら3接の優占する林分の立地環境を比較した.TWINSPANの結果,77のスタンドがホソバタブとコバノカナワラビを指標種として2つのグループに分けられ,1つのグループではイチイガシあるいはハナガガシが優占し,もう1つのグループではアラカシが優占していた.前グループの下位分類では,イチイガシを指標種とするイチイガシ優占林とアラカシおよびコジイを指標種とするハナガガシ優占林の2グループが検出された.既存の研究や本研究のTWINSPANの結果から,ハナガガシ優占林はイチイガシ-ルリミノキ群集と似た種組成を持つことが明らかとなったが,上級単位を比較すると,アカガシ-シキミオーダーの標徴種・識別種よりもスダジイ-タイミンタチバナオーダーの標徴種・識別種の出現頻度が高く,ハナガガシとコジイの共存する頻度が高いという既存の研究結果から,低標高域におけるハナガガシ優占林はスダジイ-ミミズバイ群集であることが示唆された.12調査区の植生資料および立地環境調査で得られた結果をCCAによって解析した結果,ハナガガシ優占林はイチイガシ優占林よりも急斜面で土壌が薄い場所に成立していることが明らかとなった.それぞれの優占種として見た場合も,ハナガガシはイチイガシとアラカシの中間的な立地に生育することが明らかとなった.さらにハナガガシとイチイガシの立地環境の違いは,土壌水分以外の微地形などの要因を反映していることが示唆された.
  • 小川 滋之, 沖津 進
    原稿種別: 本文
    2010 年 27 巻 2 号 p. 73-81
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 東日本太平洋側の落葉広葉樹林において,カバノキ林は二次林とのみかたが一般的であったため,林分が形成される立地環境や維持機構についての研究は少なかった.そこで,ヤエガワカンバ,シラカンバ,ミズメのカバノキ属樹木3種の林分からこれらを検討した
      2. 埼玉県外秩父山地の高篠山北側斜面を調査地として,相観植生とカバノキ属樹木の個体分布の調査を行った.さらにカバノキ林と外秩父山地の主要植生となるコナラ林において,土壌と斜面傾斜の調査,毎木調査を行った.
      3. カバノキ林は,斜面中腹の地表攪乱に由来する土砂礫が堆積する区域にパッチ状に分布していた.コナラ林は,地表攪乱が無く腐植土が厚い平坦地を中心に広く分布していた.
      4. カバノキ林とコナラ林を比較すると,カバノキ林はカバノキ属樹木の優占度が12.3%から33.0%であり,コナラの優占度が低く,多様な樹種により構成されていた.コナラ林はコナラの優占度が60.0%以上となり,出現種数は少なかった.
      5 成長段階ごとのカバノキ属樹木の個体分布をみると,カバノキ林内では樹高12m以上の成木に個体が集中し,幼樹はみられなかった.稚樹や当年実生の分布をみても,成木の直下では少なく,カバノキ林と他の林分や人為的開放地との境界付近にみられた.
      6. カバノキ林の形成には,比較的近年に発生した斜面崩壊による地表攪乱が関与していることを指摘した.斜面崩壊により土砂礫が堆積する開放地が出現し,そこに先駆種であるカバノキ属樹木がいち早く侵入することでカバノキ林が形成されたと考えられる.
      7. カバノキ林は,カバノキ属樹木の個体寿命より早い周期で地表攪乱が発生することにより維持されると考察した.カバノキ属樹木は,後継樹により林分内で順次更新しているわけではなく,地表攪乱による開放地の出現で一斉に更新している可能性が高い.地表攪乱については,高篠山では基盤岩の地形形成特性により数十年周期で斜面崩壊が発生している.斜面崩壊により開放地が出現するたびに,カバノキ属樹木は一斉に侵入して林分を形成していると考えられる.したがって,カバノキ林は将来にわたり維持されると結論付けた.
  • 鎌形 哲稔, 原 慶太郎
    原稿種別: 本文
    2010 年 27 巻 2 号 p. 83-94
    発行日: 2010/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
      1. 神奈川県丹沢大山の東丹沢の25km^2の山岳地を対象に,超高空間分解能衛星リモートセンシングデータを用いたオブジェクトベース画像解析を行ない,植生図化における植生界抽出と分類精度の評価を行なった.
      2. 領域分割処理によって抽出された植生界と写真判読によって抽出された植生界の一致度を検証した結果,面的一致度において完全性,正確性,品質はそれぞれ76.8%,63.8%,49.6%であり,線的一致度は78.7%であった.
      3. IKONOS画像に対するオブジェクトベース分類の総合分類精度は72.7%,総合Kappa統計量は0.526であった.
      4. 本研究の結果から,超高解像度衛星リモートセンシングデータに対するオブジェクトベース分類を用いた植生図化の有効性が示された.
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