植生学会誌
Online ISSN : 2189-4809
Print ISSN : 1342-2448
ISSN-L : 1342-2448
28 巻 , 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著論文
  • 大津 千晶, 星野 義延, 末崎 朗
    原稿種別: 本文
    2011 年 28 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.秩父多摩甲斐,八ヶ岳,南アルプス地域の山地帯・亜高山帯草原へのニホンジカの影響を把握するために,1980年代に植生調査が行われた地域で追跡調査と,ニホンジカの利用度を推定するために糞粒数のカウントを行った.
    2.得られた植生調査資料からDCAによって種組成の変化傾向を調べた結果,DCA第1軸の1980年代と2008年のスタンドのスコアの変化量とニホンジカの糞粒数との間に正の相関関係がみられた.このことからニホンジカの草原利用が種組成変化に大きな影響を与えていることが明らかになった.
    3.パス解析を用いて,草原の種組成変化に影響する要因間の相互関係を調べた.その結果,積雪深の浅い地域の人工建造物からの距離が遠い草原をニホンジカが選択的に利用していることがわかった.ニホンジカが選択的に利用する草原で種組成変化が大きく,次いで林縁から近い草原で,種組成変化が大きい傾向があった.
    4.地域別に種組成変化の大きさをみると,八ヶ岳山域に属する地域では種組成変化が相対的に小さく,ニホンジカの影響が少なかった.逆に南アルプス山域の櫛形山は種組成の変化が大きかった.秩父山地では東側の奥多摩地域や,秩父山地の主稜線に近い地域ほど種組成の変化が大きい傾向にあった.
    5.ニホンジカの影響が強くなるにつれて種数は増加から減少に転じる傾向があった.遷移度の変化率から,遷移は停滞段階,退行段階,進行段階の順に推移する可能性が示唆された.
    6.ニホンジカの影響が強くなるにしたがって,中型から大型草本の減少,裸地の形成を経て,グラミノイド類を中心とした小型の草本種,木本種の増加が起きることがわかった.以上の結果から,ニホンジカの影響により遷移の退行,進行段階に推移した草原に防鹿柵を設置すると,逆に木本種などの侵入を促進してしまう可能性がある.そのため在来草本群落の保全のためにはより早期にニホンジカの影響を低減させることが望ましいと考えられた.
  • 加藤 ゆき恵, 冨士田 裕子, 井上 京
    原稿種別: 本文
    2011 年 28 巻 1 号 p. 19-37
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.北米・北欧を中心に分布する北米要素の多年生草本ムセンスゲCarex livida(Wahlenb.)Willd.は,極東地域ではカムチャッカ,千島列島,サハリン北部,朝鮮北部及び北海道に点在し,北海道内でも北部の猿払川流域の低地湿原と大雪山高根ヶ原の山地湿原に隔離分布する.周北極地域を中心に分布するムセンスゲが生育する湿原の植生と立地環境を明らかにすることは,日本列島北域における北方系植物の植物地理学的研究の重要な手がかりとなることから,本研究は,猿払川流域のムセンスゲ生育地の植物社会学的位置を明らかにすること,湿原の立地環境からムセンスゲ生育地に共通する条件を考察することを目的とした.
    2.猿払川中流域の3ヶ所の湿原の87コドラートでコケ植物と維管束植物について植生調査を行い,群落を区分した結果を北海道内及び本州の湿原の植生と比較した.また,ムセンスゲが生育する2ヶ所の湿原で微地形測量を行った.
    3.植生調査の結果,4群落を区分し,2群落ではその中で2つの下位単位を区分した.シュレンケ群落は高層湿原シュレンケ植生のホロムイソウクラスのホロムイソウ-ミカヅキグサ群集(北方型)に相当し,草本ブルテの群落は中間湿原植生のヌマガヤオーダーのホロムイスゲ-ヌマガヤ群集に相当すると考えられた.
    4.ムセンスゲはシュレンケとその周辺の群落に生育し,シュレンケ内において常在度が高かった.
    5.微地形測量の結果,2ヶ所の湿原においてケルミ-シュレンケ複合体が形成されていることを確認した.ムセンスゲの分布中心である北欧・北米では,ムセンスゲはpatterned fenと呼ばれる微地形を有する湿原に生育し,本調査地も小規模なpatterned fen(patterned mire)と考えられることから,ムセンスゲはこれらのような帯状の起伏が連続する微地形上の,シュレンケとその周辺部が生育適地であると考えられる.
    6.海外のムセンスゲ生育地の植生・立地環境と比較したところ,本調査地におけるムセンスゲの生育環境はカナダ大西洋岸地域と類似していた.生育地が限られる希少種が生育しているという点だけでなく,高緯度地域の湿原とも類似する立地環境を有する猿払川湿原は,貴重な湿原環境を残す我が国の重要な湿原の1つと言える.
  • 斎藤 達也, 大窪 久美子
    原稿種別: 本文
    2011 年 28 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    外来植物オオキンケイギクは日本の砂礫質河原の植生にしばしば侵入する.本研究は,土性型(礫質,砂質,ローム質,粘土質)はオオキンケイギクの侵入に影響を及ぼすかを明らかにし,その侵入に影響される河川固有植生を抽出することを目的とした.日本中部長野県の三峰川下流部沿いの砂礫堆において,我々は,164個の2m×2m方形区を用いて,各土性型上の河川敷植生を調べた.礫質型上のオオキンケイギクの被度は他の土性型のものよりも有意に低かった.オオキンケイギクの被度は礫質型から粘土質型にかけて高くなる傾向があった.他の土性型より礫質型はオオキンケイギクにとって不適な環境であったと考えられた.礫質型では観察されなかったが,より細粒の土性,特にローム質土性では,オオキンケイギクの被度と全河川固有植物の積算被度との間に負の関係が見られた.したがって,主にカワラヨモギとカワラサイコから構成されるローム質型上の固有植生はオオキンケイギクの侵入の影響を被りやすいと考えられた.土性型間の河川固有植物に対するオオキンケイギクの影響の差異は,土性型間における本種の優占性の違いによる可能性がある.土性型は砂礫質河原におけるオオキンケイギクの侵入状態に影響を与える要因の一つであり,ローム質型のような細粒の土性上の固有植生はその侵入の影響を被るであろう.
  • 久保 満佐子, 小林 隆人, 北原 正彦, 林 敦子
    原稿種別: 本文
    2011 年 28 巻 1 号 p. 49-62
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.草原性のチョウ類が多く生息する富士山麓の上ノ原草原において,人為的管理が出現植物の種組成,吸蜜植物の開花,チョウ類の種組成に与える影響を調べ,チョウ類の多様性を維持する草原の管理方法を提案した.
    2.上ノ原草原にある1)草刈り後に草を持ち出している防火帯(防火帯),2)草刈り後に草を放置している植栽地(草刈地),3)草刈り後に草を放置している未舗装作業道路(道),4)管理放棄後3年以上経過した草原(放棄草原),5)クロツバラが優占する低木疎林(低木林)の5つの環境を調査地として,各調査地で出現植物の種組成と吸密植物の開花数,チョウ類の種組成を調べた.
    3.出現した植物および開花した吸蜜植物の種組成について二元指標種分析を行った結果,両種組成は,第一に植生構造の違いにより低木林に対してその他の調査地に区分され,次に管理方法の違いにより防火帯に対して草刈地と道,放棄草原に区分された.開花した吸蜜植物の種組成における指標種は,防火帯が7月,草刈地と道,放棄草原が8月と9月を中心に開花する種であった.開花数は,管理が行われている調査地で放棄草原や低木林より多い傾向があった.
    4.チョウ類の種組成について二元指標種分析を行った結果,防火帯に対してその他の調査地で区分された.防火帯のチョウ類の指標種は7月に発生する種であり,吸蜜植物における指標種の開花季節と一致した.
    5.本草原では,季節を通して吸蜜植物の開花があり,発生時期の異なるチョウ類が生息していることが特徴であった.さらに,低木林は,草原とは異なる遷移段階に依存するチョウ類の食樹であり,これらの種の主要な発生源となっている可能性があった.このため,本草原のチョウ類群集を維持するためには,草原の中で管理方法や植生構造の違いを含む植物群落の多様性を維持する管理の工夫が必要であると考えられた.
  • 原稿種別: 文献目録等
    2011 年 28 巻 1 号 p. 64-
    発行日: 2011/06/30
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
feedback
Top