植生学会誌
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30 巻 , 2 号
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原著論文
  • 鈴木 康平, 上條 隆志, Undarmaa JAMSRAN, 田村 憲司
    原稿種別: 本文
    2013 年 30 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.モンゴル・フスタイ国立公園におけるステップ植生への保護区設置効果を評価するために,国立公園内外の植生の比較を行った.
    2.公園内では1993年から家畜の放牧が禁止されており,公園外に位置するバッファーゾーンでは家畜の放牧が継続されている.
    3.公園内8スタンドとバッファーゾーン25スタンドの計33スタンドで植生調査を行い,種数,植物群落高,植被率,種組成の比較を行った.
    4.種数,植物群落高,植被率の値はバッファーゾーンより公園内で有意に高かった.種数に違いが見られたのは,自然保護区化以前から牧民により一定の保護がなされていたため,植物種の供給源が残っていた可能性がある.
    5.序列化の結果,公園内とバッファーゾーンのスタンドはそれぞれ分かれて配置されており,種組成についても公園内外で違いが見られた.これは,共通して出現した種の出現頻度が,家畜の採餌による直接的な影響と優占種等の被度の変化による間接的な影響により変化したと考えられる.
    6.公園内とバッファーゾーン間でみられた植生構造や種組成の相違は,保護区設置による効果であると評価できる.そして,これらの相違は,公園内における放牧禁止による植生回復と,バッファーゾーンにおける自然保護区指定以前からの植生の劣化の両方によると考えられた.
  • 宮崎 卓
    原稿種別: 本文
    2013 年 30 巻 2 号 p. 95-117
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.高知県中西部からウラジロガシ-ホソバタブ群落(宮崎2010)として報告されていた植生資料を,既存の常緑広葉樹林の資料1089点と比較して,群集同定を行った.その結果,既存のどの群集とも組成が異なったため,新群集ホソバタブ-ウラジロガシ群集として記載した.
    2.ホソバタブ-ウラジロガシ群集はその種組成から,上級単位はタイミンタチバナ-スダジイオーダー,イズセンリョウ-スダジイ群団に同定された.しかレアカガシ-シラカシ群団の区分種も出現し,アカガシ-シラカシ群団の群集との種組成的な共通性も認められた.
    3.ホソバタブ-ウラジロガシ群集の植分は4層構造からなり,優占種にはスダジイ,ウラジロガシ,クスノキ,ヤブツバキなどがあった.林冠構成種のスダジイ,ウラジロガシ,クスノキは実生を除いて,第2層以下へは出現しなかった.また,高木種であるホソバタブ,イヌガヤが林冠構成種にならず,主に第3層(高さ2-5m)に出現した.
    4.植分の一例,中土佐町加江崎での観察では,1970年代末以来,林冠高,第3層の階層の高さ,第4層の被度などに目に見える変化はなく,その群落構造は安定していた.
    5.ホソバタブ-ウラジロガシ群集の生育立地は海岸近くの急峻な地形であった.しかし,隣接群落のタイキンギク-エノキ群集が崩壊地などの限られた立地に成立していたのに対し,ホソバタブ-ウラジロガシ群集は安定した立地にも成立し,地域規模に広がっていた.
    6.ホソバタブ-ウラジロガシ群集の分布は高知県中西部と九州西部(先行研究の引用)で確認された.
短報
  • 山戸 美智子, 江間 薫, 武田 義明
    原稿種別: 本文
    2013 年 30 巻 2 号 p. 119-126
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.近畿地方中部の孤立的に残存している半自然草原を対象に,面積と出現種数の関係,小面積化にともない欠落する種の特性などについて調査を行った.
    2.草原生植物の出現種数と草原面積の間には,Gleason(1922)とArrehenius(1921)の両モデルで高い正の相関が認められ,小面積化が半自然草原の種多様性低下に影響を及ぼすことが明らかとなった.
    3.面積に対して類似した出現パターンを示す種をまとめ,出現種を4つの種群に整理した.それらは,205000m^2以上の草原に分布が偏るA群,33000m^2以下の草原では欠落傾向を示すB群,1000m^2以下の草原において欠落傾向のあるC群,小面積化にともなう欠落傾向の認められないD群である.
    4.小面積化によって欠落傾向の認められた種は,総出現種数の約62%を占めていた.絶滅・絶滅危惧種は,面積の減少にともなう欠落が顕著であり,小面積化による影響を強く受けることがわかった.
    5.本調査地のなかで最も大面積を有していた曽爾高原においても,出現種数は総出現種数の約79%であり,地域の種多様性維持には不十分であった.また,錨山や市章山のように小面積であっても,これらの草原にしか出現していない種があることも確認された.
    6.半自然草原の保全・復元にあたっては,可能な限り大面積を確保することが重要といえる.さらに,本調査地域全体の種多様性を維持するためには,8カ所すべての草原の保全・復元が必要と考えられた.
  • 高橋 和弘, 植原 彰, 高槻 成紀
    原稿種別: 本文
    2013 年 30 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    この20年ほどのあいだに日本各地でニホンジカが増加したが,山梨県の乙女高原では最近の10年ほどでシカが増えた.乙女高原は1950年頃にスキーゲレンデとして森林を伐採して作られた草原で,多様な草原性の植物が生育することから,人々に親しまれてきた.2000年にスキー場が閉鎖されたあとも,毎年11月に刈り取りをすることで草原が維持されてきたが,その頃からシカが増加し,大・中型双子葉草本が減少してススキが増加したと言われている.2010年5月に3基のシカ防除柵を設置し,翌年の2011年6月にそのうちの一つ(15m四方)の柵内外で9種の中・大型植物を選び,各20個体をマーキングして9月まで毎月高さを追跡測定した.2012年に4種を追加して6,8,10月に測定した.その結果,のべ13種中11種(イタドリ,カラマツソウ,クガイソウ,シシウド,ヤマハギ,オオヨモギ,ワレモコウ,アマドコロ,キンバイソウ,タムラソウ,ツリガネニンジン)は柵内で有意に高くなっていたが,ススキとヨツバヒヨドリは柵内外で違いがなかった.この違いは,ススキは再生力があること,ヨツバヒヨドリはシカが好まないことによると考えられた.
総説
  • 高岡 貞夫
    原稿種別: 本文
    2013 年 30 巻 2 号 p. 133-144
    発行日: 2013/12/25
    公開日: 2017/01/06
    ジャーナル フリー
    1.地すべりと植生の関係に関する従来の研究成果を概観し,長期的な視点から地すべりの影響を明らかにするうえでの研究課題を示した.
    2.地すべり地の変動域は,滑落崖と移動体によって輪郭が構成され,移動体の内部には小崖,小丘,凹地,岩塊原などの微地形が形成される.地すべりの発生は気候,地質,地形の影響を受けて,時空間的に不均質な分布となる.
    3.地すべり地では地形や土壌が改変され,また新たな微気候条件・水文条件の場所が作り出されるので,多様な植生が成立する.
    4.地すべり地の遷移の経過は,地すべり発生後の年数,標高,方位,地質などの影響を受けるほか,個々の地すべり地における地表の安定性,土層の粒径分布,生物学的遺産の有無などの影響を受ける.
    5.地すべりの長期的影響を,山地の植生構造やフロラの形成の観点から検討することは重要な課題である.これは,発生年が推定された複数の地すべり地を比較検討するなかで明らかにされるべきである.
    6.地すべり地形は,周氷河地形や氷河地形と並んで,日本の高山植生景観を特徴づけていると考えられる.滑落崖背後の準変動域に形成される線状凹地の植生は,長期的な視点で地すべりと高山植生の関係を解明するための一つの研究対象となりうる.
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