植生学会誌
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33 巻 , 1 号
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原著論文
  • 宮崎 卓
    2016 年 33 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
      1. 中国雲南省紅河哈尼族彝族自治州から87地点(上新寨72地点,梁子遙寨15地点)の水田雑草群落の植生資料を集め,その種組成を日本,中国海南島,インドネシアスマトラ島,韓国,北朝鮮の資料と比較した.その結果,中国雲南省,海南島,そして沖縄県西表島と宮古島の植生資料を新群集ケミズキンバイ-コナギ群集 Ludwigio adscendentis - Monochorietum vaginalis ass. nov.として記載した.
      2. 本群集はサンショウモ亜群集 salvinietosum natantis subass. nov.,ホシクサ亜群集 eriocauletosum cinerei subass. nov.,ヤナギスブタ亜群集 blyxetosum japonicae subass. nov.,イヌホタルイ亜群集 schoenoplectetosum juncoidis subass. nov., キダチキンバイ亜群集 ludwigietosum octovalvis subass. nov.の5亜群集に下位区分された.また,サンショウモ亜群集はさらにヒメガガブタ変群集 Nymphoides cristata variant,典型変群集Typical variantに下位区分された.
      3. 本群集は標徴種・識別種の地理的分布と分布域の最寒月平均気温から,低温期の気温が分布制限要因と考えられる.
      4. 本群集にはイネクラスの標徴種・識別種が出現するので,上級単位はイネクラス,タマガヤツリ-イヌビエオーダー,イネ-イヌビエ群団と考えられる.
  • 石田 弘明, 黒田 有寿茂, 岩切 康二
    2016 年 33 巻 1 号 p. 15-32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    1. オオバヤドリギは樹上に生育する半寄生の常緑低木である.オオバヤドリギは比較的希少な種であるが,宮崎県立平和台公園の敷地内には本種の寄生を受けている樹木(以下,宿主木)が数多く分布している.また,これらの多くではシュートの枯死が認められる.このような樹木の衰退はオオバヤドリギの寄生に起因していると推察されるが,オオバヤドリギの寄生と樹木衰退の関係について詳しく検討した例はみられない.
    2. 本研究では,オオバヤドリギの宿主選択特性とその寄生が樹木に与える影響を明らかにするために,平和台公園においてオオバヤドリギの寄生状況と宿主木の衰退状況ならびにこれらの状況の経年変化を調査した.
    3. 今回の調査では27種,422本の宿主木が確認された.宿主木の樹高の範囲は1.4-27.0 mで,その96.9%は林冠木であった.種別の幹数はマテバシイが最も多く,総幹数の62.8%を占めていた.
    4. 本研究と既往研究の間でオオバヤドリギの宿主木を比較した結果,総種数および総科数はそれぞれ67種,29科であった.このことから,オオバヤドリギは少なくとも67種29科の樹木に寄生しうることが明らかとなった.
    5. マテバシイの寄生率は樹高と共に増加する傾向にあり,樹高が寄生率の高低に関係していることが示唆された.また,マテバシイとアラカシの寄生率は林冠木の方が下層木よりも有意に高く,林冠木がオオバヤドリギの寄生を受けやすいことが示唆された.
    6. 樹種に対するオオバヤドリギの選好性について検討した結果,マテバシイ,コナラ,スギ,ヒサカキはオオバヤドリギの寄生を受けやすく,逆にシイ類,クスノキ,ハゼノキ,コバンモチ,ナンキンハゼ,アカメガシワなどは寄生を受けにくいことが示唆された.
    7. 宿主木の衰退の程度を5段階で評価した(衰退度1-5;衰退度5は衰退の程度が最も大きい).その結果,全宿主木の86.7%は衰退度2以上であった.また,これらの中には衰退度5の宿主木も複数含まれており,その幹数は全宿主木の19.7%を占めていた.さらに,マテバシイの衰退度とオオバヤドリギの被覆面積との間には強い正の有意な相関が認められた.これらのことから,調査地における宿主木の衰退の主な要因はオオバヤドリギの寄生であると考えられた.
    8. 宿主木の中には追跡調査時に枯死が確認されたものが数多く含まれていた.このことから,オオバヤドリギの寄生は宿主木の枯死を引き起こすことが明らかとなった.
    9. 衰退度5の総幹数は83本で,このうちの89.2%はマテバシイであった.また,追跡調査時に枯死が認められた宿主木の85.4%はマテバシイであった.これらのことから,マテバシイはオオバヤドリギの寄生によって著しく衰退し,場合によっては枯死に至る種であると考えられた.
    10. 平和台公園にはマテバシイが優占する「放置状態の照葉二次林」がまとまった面積で分布しているので,このことが本公園におけるオオバヤドリギの繁茂に強く関係していると考えられた.
  • 沖津 進, Pavel Vitalevich KRESTOV, 百原 新, 中村 幸人
    2016 年 33 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    1. ロシア沿海地方最南部ウスリー川源流域でチョウセンヒメバラモミ-チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林の土壌乾湿分布を調査し,その結果から中部日本山岳域の最終氷期以来の植生変遷を展望した.
    2. 土壌乾湿傾度に沿って,乾性から中湿性立地ではモンゴリナラが優占し,イタヤカエデ,ヤエガワカンバ,ときにアムールシナノキが混在する落葉広葉樹林に,チョウセンゴヨウが混生,チョウセンヒメバラモミも点在分布するタイプの林分が分布していた.中湿性から湿潤立地ではチョウセンヒメバラモミが優占し,チョウセンゴヨウが混在する針葉樹林に,イタヤカエデ,アムールシナノキ,ときにチョウセンミネバリが混在するチョウセンヒメバラモミ-チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林が成立していた.最も湿潤な立地ではドロヤナギ,ハルニレ,ヤチダモを主体とし,チョウセンヒメバラモミが散在する,よく発達した河畔林が成立していた.チョウセンヒメバラモミ-チョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林全体としては乾性立地よりも中湿性から湿潤立地がより適した分布地といえる.
    3. 沿海地方のチョウセンヒメバラモミの土壌乾湿分布から,バラモミ節樹木は最終氷期時には,現在の分布とは異なり,斜面中・下部から渓流域の河岸段丘や氾濫原に分布の本拠があった可能性が高い.チョウセンゴヨウは,チョウセンヒメバラモミと比べると,やや乾性な立地が分布適域であった.
    4. 中部日本の植生変遷を展望すると,最終氷期には,低地・低山帯では,大陸型の亜寒帯性針葉樹林要素とされたバラモミ節樹木,チョウセンゴヨウが,実際には,中湿性から湿潤立地を中心に,異なる落葉広葉樹と混交しながら冷温帯林を構成していた.山地帯の乾性から中湿性立地には現在とほぼ同じ構成のトウヒ,シラベ,コメツガ,時にバラモミ節樹木,チョウセンゴヨウを含む常緑針葉樹疎林が分布していた.湿潤立地にはハイマツ低木林やダケカンバ林,オオシラビソ小林分などが点在していた.これは現在のシホテ-アリニ山脈の垂直分布と類似しており,現存する植生垂直分布と整合している.
    5. 後氷期には湿潤,多雪化で土壌形成が進み,バラモミ節樹木やチョウセンゴヨウは亜高山帯の岩礫地に追いやられた.とりわけ,バラモミ節樹木の衰退には多雪化が大きく影響した可能性がある.かわって山地帯では立地ごとに異なる落葉広葉樹林が低地・低山帯から広がった.
    6. バラモミ節樹木やチョウセンゴヨウが分布する立地は大型植物化石が堆積・残存しやすく,そのために産出量も多くなる.一方,トウヒ,シラベ,コメツガが分布していた立地は大型植物化石が堆積しにくく,そのために産出量も少ないと考えられる.このことから直ちに,トウヒ,シラベ,コメツガが最終氷期当時,現在よりも分布量が少なかったとみなすことは危険である.
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