植生学会誌
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36 巻 , 1 号
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原著論文
  • 黒田 有寿茂, 小舘 誓治
    2019 年 36 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    1. カキノハグサは近畿,東海地方に分布する日本固有の多年生草本である.本研究では兵庫県南東部 (六甲山地,帝釈山地) のアカマツ・コナラ二次林におけるカキノハグサの生育地を調査地とし,その生育状況と立地環境の特徴を把握するために,分布調査,毎木調査,下層の植生調査,土壌調査を行った.また,本種の生育適地について検討するために個体密度と立地環境条件に関する調査を,国内における生育地の気候条件やハビタットの多様性について情報を得るために標本調査 (腊葉標本の閲覧と採集地情報の収集) を行った.

    2. カキノハグサはいずれの山地においても主稜線周辺の頂部斜面に偏って分布しており,斜面下部や谷部では認められなかった.

    3. 毎木調査の結果から,カキノハグサ生育地と非生育地の林分は,いずれも樹林の放置に伴い常緑広葉樹の繁茂が進行しているアカマツ・コナラ二次林と考えられた.一方,カキノハグサ生育地の林分は非生育地の林分と比較して落葉広葉樹がより多く,相対的に常緑樹の繁茂の程度が小さかった.また,カキノハグサ生育地の林分では多年生草本の組成比が高く,疎林,林縁,草原などを主なハビタットとする植物が多く含まれていた.

    4. カキノハグサ生育地の林分は非生育地の林分と比較してL層の厚さ,F-H層の厚さ,電気伝導度が小さく,指標硬度が大きい傾向にあり,より浅く未熟な土壌に成立していた.一般化線形モデルによる解析では,カキノハグサの個体密度と開空度および指標硬度に正の相関が,個体密度とL層の厚さに負の相関が認められた.

    5. 以上の野外調査の結果から,カキノハグサの生育適地はアカマツ・コナラ二次林の中でも森林構造や土壌の発達程度の低い林分であると推察された.本種の頂部斜面への偏った分布は,このような特徴をもつ二次遷移初期段階の群落が頂部斜面で残りやすいことに因っていると考えられた.

    6. 標本調査では地形や植生タイプに関する記述として「山頂」,「林道沿い」,「grassy open ridge」など,森林タイプや光環境に関する記述として「明るい二次林林床」,「On sunny edge of Chamaecyparis plantation」などが確認された.これらは野外調査で認められたカキノハグサの分布状況や生育立地特性と共通性の高いものであった.また,採集地の標高および気候条件の範囲・度数分布から,本種の生育地の多くは暖温帯の照葉樹林成立域に含まれると判断された.

    7. カキノハグサの生育地で常緑広葉樹の繁茂が認められた場合には,伐採・刈り取りにより植生遷移の進行を抑制し,光環境の改善を図ることがその保全に必要と考えられた.

  • 齊藤 みづほ, 星野 義延, 吉川 正人, 星野 順子
    2019 年 36 巻 1 号 p. 17-31
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    1. 沖縄県西表島の渓流辺植物群落(渓流帯に成立し,渓流沿い植物を主な構成種とする群落)の成立立地と冠水頻度の関係について,流積と集水域面積の2軸で冠水頻度を指標した渓流帯テンプレートを用いて明らかにすることを目的とした.

    2. 西表島の7河川において277の植生調査資料を収集した.また,河川横断面図の作成と冠水痕跡の調査から,平水位と年最高水位における流積を算出して渓流帯テンプレートを作成し,西表島の河川における渓流帯の範囲を推定した.

    3. 得られた植生調査資料から,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集,ヒナヨシ-シマミズ群集,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集の3群集を識別した.植分あたりの出現種に占める渓流沿い植物の割合は,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集,ヒナヨシ-シマミズ群集,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集の順で大きかった.

    4. 識別された3群集の分布を渓流帯テンプレート上にプロットした結果,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集とヒナヨシ-シマミズ群集は,年1回かそれ以上の頻度で冠水する立地に成立する渓流辺植物群落であると判断された.とくに前者は冠水頻度が高い立地にも成立していた.一方,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集は,年1回程度の増水では冠水しない立地に成立しており,渓流辺植物群落ではないと考えられた.

    5. 西表島の河川では,定期的な冠水による攪乱が,渓流辺での通常の陸上植物の生育を妨げ,冠水に適応した種からなる渓流辺植物群落を発達させていると考えられた.そのため,冠水頻度を低下させるような河川の人為的改変が行われた場合,渓流辺植物群落が衰退するおそれが高いことを指摘した.

短報
  • 中西 弘樹, 山本 武能, 鈴木 浩司, 出口 敏也, 上田 浩一
    2019 年 36 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/30
    ジャーナル フリー

    1. これまで知られていなかったヒロハネムとオオバネムノキの分布と生育立地について調べ,文献と野外調査から分布図を作成した.

    2. ヒロハネムとオオバネムノキの新産地を,それぞれ2ヵ所ずつ発見した.

    3. ヒロハネムは奄美大島からトカラ列島を経て,九州西岸を長崎県対馬まで分布しており,「九州西廻り分布型」の分布を示した.

    4. オオバネムノキはインド,東南アジア,中国,台湾から隔離的に日本と韓国南部に分布し,日本では奄美大島,トカラ列島の中之島,宮崎県北部,長崎県五島にやや不連続に分布する.

    5. ヒロハネムは海岸低木林のマサキ-トベラ群集の中にも生育するが,主な生育地はオオバネムノキと同様に,道路の法面など攪乱された立地にイヌビワ,アカメガシワなどと共に亜高木林または低木林を構成し,クサギ-アカメガシワ群団に属する群落を形成する.

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