植生学会誌
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36 巻 , 2 号
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原著論文
  • 岩切 康二, 伊藤 哲, 光田 靖, 平田 令子
    2019 年 36 巻 2 号 p. 43-59
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/16
    ジャーナル フリー

    1. 間伐手法の違いが人工林内の草本種を含む下層植生の植物種多様性に与える短期的な影響を明らかにすることを目的に,連続したヒノキ人工林に点状間伐区(間伐率約35%の定性間伐),点状+列状間伐区(3残1伐の列状間伐と追加の定性間伐(全体として間伐率が約35%)),列状間伐区(3残1伐の列状間伐)および無間伐区を設定し,間伐前,間伐直後および間伐1年後の下層植生の状態を比較した.

    2. 間伐試験の結果,間伐作業に伴い下層植生では植栽木の本数間伐率と同程度もしくはそれ以上の攪乱が発生していた.特に列状間伐を行った2調査区では,植栽木の本数間伐率以上に減少していた.一方,間伐による種数の減少には,間伐手法の違いによる明瞭な差異は認められなかった.

    3.間伐1年後の時点で,草本層は被度および種数の両方で間伐前の水準,もしくはそれ以上に回復していたが,低木層では間伐1年後時点では間伐前の水準まで回復していなかった.草本層では被度および種数が回復していたが,間伐1年後の種組成は間伐前から変化していた.間伐後に消失した種の約56%が照葉樹林型種であったのに対して,再生した種では約24%,新規加入した種では約19%にとどまり,種組成では照葉樹林型種と二次林型・開地型種の入れ替わりが起きていた.

    4.人工林低木層への侵入・定着に時間を要する照葉樹林型種(森林性植物種)の保全においては,高頻度の通常間伐で下層に何度も攪乱を起こすよりも強度の間伐によって一度で光環境を改善し長期的に維持することが効果的であると考えられた.一方,保全対象が草本層を中心とした二次林型・開地型種(里山種)の場合は,低頻度の強度間伐もしくは高頻度の通常間伐を行い,林床の明るい光環境を持続させることが望ましいと考えられた.

  • Yasa Palaguna UMAR, 平山 知宏, 伊藤 哲, 松倉 百花, 溝口 拓朗, Adi SETIAWAN, 光田 靖, 平田 ...
    2019 年 36 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/16
    ジャーナル フリー

     異なるタイプのアグロフォレストリー(AF)およびその隣接関係が植物種多様性に与える影響を明らかにする目的で, インドネシア・東ジャワのPinusmerkusii (Merkus pine),Tectona grandis(CommonTeak)およびEucalyptus camaldulensis(River red gum)がそれぞれ上層木として植栽されているAF パッチ(以下,P, T およびE)において,維管束植物種の出現状況を調査した.互いに隣接するP とT およびPとE の境界を横断する形でベルトトランセクトを設け,トランセクト上に計39 個のコドラートを設置して,生育する植物の種名を記録した.また,各コドラートで,リターによる地表被覆率,開空度および土壌水分を測定した.3 つのAF パッチの全コドラートを通して在来種29 種を含む52 種の植物が確認され,P,T およびE ではそれぞれ32,20 および35 種の植物(それぞれ16,11,18 種の在来種を含む)が生育していた.これらのうち,各パッチに特異的に出現した種(specificspecies)は,それぞれ8,6 および13 種の計27種であった.物理環境の比較から,これらの出現種の違いはE の開空度が他のパッチよりも比較的高いこと,およびT の林床がT. grandis の厚いリターに被覆されていることによると推察された.また,本調査地の全出現種および在来種の半数以上が,タイプの異なるAF の存在によって担保されており,異なるAF のパッチモザイク景観が植物種多様性保全に有効に機能していると考えられた.さらに,異なるAF パッチが相互に隣接する効果を評価するために,林縁部(patchedge: パッチ境界から10 m 以内)と林内部(patch interior:パッチ境界から10 m 以上離れた地点)に区分して出現種数を解析した.その結果,林縁部のみで共通して確認された種数(P-T 林縁およびP-E 林縁でともに4 種)よりも,むしろ林内部で共通的に出現していた種数(P とT で6 種,P とE で11 種)の方が多く,在来種についても同様の傾向であった.したがって,AF 同士が隣接する場合は,森林と草原のように物理環境が極端に違うパッチが隣接する場合と異なり,植物種の共存に対する林縁効果は限定的であると考えられた.

短報
  • 石田 弘明
    2019 年 36 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/16
    ジャーナル フリー

    1. 鹿児島県の離島である口永良部島にはタブノキ の優占する二次林が各所に分布している.しかし,そ の種組成や種多様性などの実態はほとんど明らかと なっていない.

    2. 本研究では,口永良部島のタブノキ二次林の種 組成および種多様性の特徴を明らかにするために,同 島のタブノキ二次林とスダジイ二次林を対象とした植 生調査を実施し,その結果を両者の間で比較した.ま た,口永良部島で得られたデータと既往研究のデータ をもとに,口永良部島のタブノキ二次林と他地域(鹿 児島県,宮崎県)に分布するタブノキ自然林およびタ ブノキ二次林との比較を行った.

    3. 口永良部島のタブノキ二次林の種組成は同島の スダジイ二次林,屋久島・種子島・宮崎県のタブノキ 自然林,桜島のタブノキ二次林の種組成と明らかに異 なっており,種組成による相互の区分が可能であるこ とがわかった.

    4. 口永良部島のタブノキ二次林は「気候的極相で あるスダジイ優占林への遷移途中相」であり,その種 組成と同島のスダジイ二次林の種組成との差は遷移段 階の相違をある程度反映していると考えられた.

    5. 口永良部島のタブノキ二次林は同島のスダジイ 二次林および桜島のタブノキ二次林と比べてやや高い 種多様性または同程度の種多様性を有していることが わかった.しかし,口永良部島のタブノキ二次林と屋久島・種子島・宮崎県のタブノキ自然林を比較したと ころ,前者の種多様性は後者の種多様性よりも明らか に低い傾向が認められた.

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