植生学会誌
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37 巻 , 2 号
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原著論文
  • 矢口 瞳, 星野 義延
    2020 年 37 巻 2 号 p. 69-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    1. 武蔵野台地北部のコナラ二次林の異なる林床管理を行う林分で,植物の種組成と機能群組成に対する管理の影響を明らかにし,管理されたコナラ二次林に典型的な植物の機能群を抽出して,機能群による管理の影響評価の有効性を検討した.林床管理は管理強度の強い方から下刈り・落葉掻き,下刈り,常緑樹除伐の3つであり,これらと管理の停止された林分で比較した.

    2. 植物の機能特性としてラウンケアの休眠型,葉の生存季節,生育型,地下器官型,花粉媒介,開花季節,種子散布型,結実季節,種子重を用いてクラスター解析を行い,7つの植物機能群(PFG)に分類した.

    3. 管理強度が強いほど低木層の出現植物種数が少なく,逆に草本層の出現植物種数が多く,種多様度は高かった.植生管理による影響は,種組成よりも機能群組成の方に強く表れており,管理タイプによって種数が有意に異なるPFGがみられた.

    4. 管理タイプ間でPFG種数に有意な違いがみられたのは,PFG2(春開花春結実の叢生草本種群)とPFG5(秋結実の風散布型夏緑草本種群),PFG6(春開花虫媒草本種群),PFG7(秋結実の夏緑草本種群)で,いずれも管理強度の強い方で種数が多い傾向にあった.

    5. PFG2, PFG5, PFG6は管理されたコナラ二次林に典型的な草本種を,PFG7は人里生草本種を多く含んでいた.このことから管理されたコナラ二次林に典型的な植物の機能群としてPFG2, PFG5, PFG6が抽出された.PFG2, PFG5, PFG6はPFG7よりも種子重1mgの種の割合が高いことから,落葉掻きによって種子が発芽成長しやすくなる機能群であると考えられた.

    6. 常緑樹の除伐をした林分では,放置された林分に比べ,コナラ二次林に典型的な種を含むPFG4(春開花夏緑木本種群),PFG5, PFG6の種数が多かった.しかし,PFG2とPFG6の種数は,下刈りと落葉掻きをした林分でより多かったことから,下刈りと落葉掻きを合わせて行う方がコナラ二次林構成種の種多様性保全に効果的と言える.

    7. 遷移の進行を指標する種や緑化・園芸種を含むPFG1(被食散布型の常緑植物種群)の種数は管理タイプ間で違いがなかった.PFG1のような鳥類等に散布されうる被食散布型の常緑植物の種数を植生管理により減少させることは難しいため,周辺に植栽しないことが重要と言える.

    8. 以上のことから,本研究はコナラ二次林において植物の種組成だけでなく,機能群組成によって評価することで,林床管理方法による種多様性の保全効果の違いとその要因をより明確にできることを示した.

  • 石田 弘明
    2020 年 37 巻 2 号 p. 85-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    1. 屋久島と黒島は大隅諸島に属する島で,口之島と中之島はトカラ列島に属する島である.筆者は,これらの島の低地部においてシイ類の優占する自然性の高い照葉樹林(以下,シイ型照葉樹林)の植生調査を行うと共に,各島のフロラに関する文献調査を実施した.本研究では,これらの調査で得られたデータと気候条件・立地条件に関するデータをもとに,シイ型照葉樹林の種組成・種多様性の相違とその主な要因を明らかにすることを目的とした.

    2. 表操作による群落区分を行った結果,調査林分(n=56)は4個の群落単位(タイプA-D)に区分された.各群落単位の4島での分布を調べたところ,タイプAは屋久島,タイプBは中之島,タイプCは黒島,タイプDは口之島に分布していた.

    3. DCA法による調査林分の序列化を行った.その結果,種組成は群落単位間で明らかに異なることが確認された.また,種組成の相違はタイプAと他の3タイプとの間で特に大きいことがわかった.

    4. タイプAの識別種であるトキワガキ,ヨゴレイタチシダ,アデクなど17種は黒島,口之島,中之島のフロラに含まれておらず,逆に他のタイプの識別種で,かつタイプAにまったく出現しなかったトカラカンアオイ,オキナワハグマ,ハラン,トカラアジサイなどは屋久島のフロラに含まれていなかった.これらのことはタイプAと他の3タイプの種組成の相違が屋久島と他の3島のフロラの相違を大きく反映していることを示している.

    5. 潮風条件を指標する「海岸線からの距離」は群落単位間で有意に異なっていた.また,一般化線形回帰モデルによる解析を行った結果,DCAの1軸スコアと2軸スコアに有意な影響を与えている変数として海岸線からの距離が選択された.これらのことから,群落単位間の種組成の相違には潮風条件も大きく関係していると考えられた.

    6. 種多様性(100 m2あたりの出現種数)はタイプAが最も高く,他の3タイプとの差は有意であった.タイプAには屋久島だけに分布する種が数多く出現していたので,タイプAと他の3タイプの種多様性の相違は屋久島と他の3島のフロラの相違を反映していると考えられた.また,一般化線形回帰モデルによる解析を行った結果, 種多様性に有意な影響を与えている変数として海岸線からの距離が選択された.このことから,群落単位間の種多様性の相違には潮風条件も関係していると考えられた.

短報
  • 鈴木 亮, 前迫 ゆり, 松山 茂
    2020 年 37 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー

    本研究は,長期間シカの採食を受ける環境において,不嗜好植物クリンソウ個体群に対するシカ採食圧の程度を,防鹿柵を用いた野外実験で評価した.2年の野外実験の結果,柵外の全調査個体は葉が採食を受け地上部が消失した.一方,柵内個体は全て生存し,花茎が柵外まで伸長したのにも関わらず,花茎への採食は確認されなかった.次に,ガスクロマトグラフィーを用いてクリンソウ内の主要な化学物質の抽出と同定を試み,その化学物質濃度の地域差(シカ高密度地域と低密度地域)および器官差を比較した.その結果,フラボンが主要物質として検出され,その濃度は葉に比べて花で有意に高かったが,地域間の差はわずかであった.これらの結果から,フラボンは繁殖器官の防衛に寄与している可能性があるが,本研究の結果からはフラボンがシカにとって有毒であると断定はできなかった.今後は他の不嗜好植物への採食の程度や,シカが植物の化学防衛を克服するメカニズムについても明らかにする必要がある.

  • 山ノ内 崇志, 曲渕 詩織, 黒沢 高秀
    2020 年 37 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
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    1. 東日本大震災による津波の被害を受けた海岸防災林の再生事業地の,外来植物に対する選択的除草が行われている生育基盤盛土上のクロマツ植林において,植林後1から3年目までの植生の変化を追跡した.

    2. 植被率は最大でも20%以下であり,年変動も小さかった.出現種は全調査期間を通じ62種類が確認されたが,3年間を通じて出現した種類はその半数以下であり,入れ替わりが激しかった.

    3. 外来植物の種数は総出現種数の30-40%を占めたが,植被率は調査期間を通じ最も高い種で3%以下であった.

    4. 3年間の調査期間中に,多年草の増加のような明瞭な遷移の方向性は検出されなかった.ただし,種の入れ替わりは観測され,気象条件など調査区画全体にかかわる要因の影響を受けて構成種が変化した可能性が示唆された.

    5. 木本種や海岸生の種は少なく,調査期間中には新たな進入がほとんどなかった.これらの種群については散布体の供給制限が疑われた.

    6. 東北地方太平洋沖地震に伴う海岸防災林再生事業による生育基盤盛土は,宮城県仙台湾沿岸から福島県相双地域の広い範囲で行われており,地域間での状況の違いが予想されるため,広域でのモニタリングが望まれる.

  • 黒田 有寿茂, 鐵 慎太朗
    2020 年 37 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    電子付録

    1. 海浜植物イソスミレの汀線-内陸傾度における出現位置と本種の生育する海浜植生の成帯構造を明らかにするために,各地の砂質海岸でベルトトランセクト調査を行った.

    2. 調査地の海浜植生は植被の疎らな打ち上げ帯,ハマヒルガオ,コウボウムギ,ハマボウフウなど草本性の海浜植物から構成される草本帯,ハマゴウ,ハマナスなど木本性の海浜植物が優占する矮低木帯,アキグミなど木本性の内陸植物が中心となる低木帯に区分された.

    3. イソスミレは打ち上げ帯,草本帯の前部,低木帯にはほとんど出現せず,草本帯の後部から矮低木帯を中心的なハビタットとしていた.出現位置の幅は草本帯や矮低木帯の主な優占種であるハマヒルガオ,コウボウムギ,ハマボウフウ,ハマゴウなどのそれと比較すると狭い傾向にあった.

    4. ハビタットがやや内陸側に位置し,かつ限定的であったことから,イソスミレは海浜植物の中でも開発により失われやすい種であり,その保全に向けては砂浜・砂丘域の縮小を避けることが極めて重要と考えられた.

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