Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
Online ISSN : 2189-7697
Print ISSN : 1348-2955
ISSN-L : 1348-2955
63 巻, 3-4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 奥谷 喬司, 藤原 義弘
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 87-94
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2000年7月,海洋研究開発機構(もと海洋科学技術センター)の無人調査船「かいこう」(支援船「かいれい」)によって日本海溝の主に水深7000m台から採集された4種の小型の原鰓二枚貝類4種について研究した。Katadesmia vincula(Dall,1908)シズクソデガイ7320mから2個体。これまで,大西洋産のMalletia cuneata(Jeffreys,1846)と同種で汎世界種とされていたが,太平洋産のものとは別種とされる。既に日本近海の水深5440-6210mから報告されているが,今回の採集は本種の最深記録と思われる。Neilonella profunda n.sp.フカミハトムギソデガイ(新種・新称)5225mから3個体,7320mから1個体。殻は薄質で,殻頂はほぼ中央。後端もあまり尖らない。殻表に不鮮明な同心円状の輪腺がある。靱帯は双位,前後歯弓の間の無菌域は殆ど認められない。Ledellina convexirostris Filatova&Schileyko,1984コトリソデガイ(新称)5225mから1個体。かつて旧ソ連のヴィチヤズ号が千島・カムチャッカ海溝の水深5030〜5070mから採集,記載された種。殻の後端は尖り浅い湾入がある。既に1969年ヴィチャズ号によって,日本海溝の水深6608mから採集記録がある。Yoldiella kaikonis n.sp.(新種)カイコウマルソデガイ(新種・新称)7299〜7333mの5潜航から合計24個体。殻長6.5mm,殻高4.9mm,殻幅3.4mm(ホロタイプ)。殻は楕円形を帯び,左右に良く膨れる。後腹隅湾入はない。殻表は微細な成長脈のほかに,顕微鏡的な断続する放射線条彫刻がある。弾帯受は貧弱であるが,内靱帯は大きい。後腹隅は丸く,湾入はない。
  • ヴィルヴァン クロード
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 95-100
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    フィリピンから採集されたコシタカヘソワゴマ属の新種を記載し,インド・西太平洋の近似種と比較した。Pseudotalopia fernandrikae n.sp.殻はこの科としては中型,最大で殻径19mm,殻高15.5mm。薄質で殻高やや低く,周縁は角張らない。殻表には平滑で低い螺肋を有し,縫合下では細い縦肋と交わって顆粒状となる。螺肋は体層では10本となり,肋間にはさらに細い螺糸が現れる。殻底はよく膨らみ,およそ20本の弱い螺肋を持つ。臍穴はやや大きく深い。得られた標本はいずれも軟体部の状態が悪く,歯舌の観察はできなかったので,属位は貝殻の類似性による。タイプ標本:ホロタイプ14.7mm×18.1mm,IRSNB-IG30 195,type525;パラタイプ14.2mm×17.7mm,NSMT-Mo73591,1ex.ほか。タイプ産地:フィリピン,ルソン島南東,水深約150m。比較:本新種は貝殻の形態が日本からフィリピンにかけて分布するコシタカヘソワゴマPseudotalopia sakuraii Habe,1961に最も近似するが,後者は周縁に角を持つこと,螺層の膨らみが弱いこと,螺肋が強く数が少なく周期的に褐色斑が現れることなどで区別される。
  • 淤見 慶宏, クローバー P.
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 101-108
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小笠原群島と紀伊半島沖からベケリケボリ属Primovulaの1新種が発見されたので記載する。また,Ovulum dorsuosum Hindsが誤同定によりコボレバケボリ属Dentiovulaのタイプ種となっている事が確認されたので,新たなコボレバケボリ属のタイプ種を認定し,正しいタイプ種に基づいた再定義を与え,この属に含まれると考えられる種類を挙げる。Primovula oryza n.sp.ヤエバケボリ(新称:八重歯毛彫)貝殻は小型,偏菱形で後端から約1/3位置が最大幅で角ばり,前端に向かって緩やかに細くなる。背面全体に約100本の螺状脈が等間隔で刻まれる。前端は発達してアーチ状になり,先端はやや角張る。後端は急速にせばまり嘴状に突き出る。右側面は滑層が発達して鍔状になり,背面から見ると後端近くで棘状の2歯が外方向に突出する。貝殻は白色で背面後方に1本の不明瞭な淡黄色が横切り,背面前部分の中心からやや右に微かに見える程度の淡黄色の線状紋が蛇行して縦走し,さらに細い黄色線が側縁に沿って走り殻を囲む。腹面は滑層が厚く,表面は滑らかである。内唇は発達し,歯は無く,殻口側に滑層を伴った段差がある。内唇の螺状脈は殻口部分にのみ見られる。殻口は狭いが,前溝で広くなる。長い内唇縦溝は表面が滑らかで,殻中間部で一旦幅が狭くなるが,前端に向かって緩やかに幅広くなり軸唇窩のようになる。三角形の滑層瘤(funiculum)には2本の皺があり,切立ち,後溝内唇襞に連続する。後溝は嘴状で,縦軸方向に浅く溝が通る。外唇は広く偏平で,前半部には歯が無いが,後方には6歯ある。殻口歯列は,各歯広い間隔で配置され,後方に向かって長くなり,最後の2歯は外唇縁から突き出る。殻長9.0mm,殻幅4.8mm,背高4.1mm(ホロタイプ)。タイプ産地:小笠原群島巽出(父島と母島の中間海域),水深180m。分布:紀伊半島南部沖,伊豆七島黒瀬,小笠原群島本種貝殻には主に7つの特徴が見られる。殻形態が角張った菱形となる点,後端が嘴状になる点,明確な螺肋が刻まれる点,貝殻は白色で有る点,側縁に沿って細い黄線が入る点,腹面が厚い滑層で覆われ平滑になる点,外唇の後端にのみ数本の棘状の歯が形成される点である。殻の形態はOvulum dorsuosum Hindsに似るが,前端が鋸歯状にならない点,後端が嘴状になる点,背面の螺状脈が粗い点や背面の彩色が異なる点で区別される。Genus Dentiovula Habe,1961コボレバケボリ属Type species here designated: Primovula colobica Azuma&Gate,1971定義:貝殻は小型,偏菱形でやや角張り,後端に複数の棘状突起が形成される。背面には多数の螺状脈が刻まれる。内唇は丸みを帯び,後溝近くに三角形の滑層瘤が形成される。外唇は後半部に歯列が形成される。軟体部は頭部・外套膜・足部共に小斑点が散在する。外套膜はイソギンチャク状の小突起がある。触角は先端が細くなり,中間部は濃い色に彩色される。コボレバケボリ属に含まれる種類:Primovula colobica Azuma &Gate,1971,Dentiovula eizoi Gate&Azuma,1973,D.clava Habe,1991,D.masaoi Gate,1973,D.parvita Azuma,1974,D.spectabilis Gate,1975以上6種。
  • スナイダー M. A., カロモン P.
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 109-119
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    チョウセンニシの同定については長らく混乱があった。まず,Kuroda&Habe(1952)は,Hirase(1907)がPtychatractus coreanicus E.A.Smith,1879として図示した標本はSmithの種類と異なるとして,新名Peristernia pilsbryi Kuroda&Habe,1952を与えた。しかし,Smithのタイプ標本やその他の標本をHirase(1907)の図と比較した結果,Inaba&Oyama(1977)などにより既に指摘されている通り,これらは同種であることが確認された。一方,Habe(1961)によってP.pilsbryiとして図示されたものは,証拠標本を調査した結果,チョウセンニシに類似した別の未記載種であることが明らかになったので,ここでハクスイツノマタFusolatirus higoi n.sp.として新種記載した。この標本のロット(NSMT-Mo73550)は5個体からなり,ハクスイナガニシ2個体,チョウセンニシ1個体に加えて,さらに別の未記載種と思われる種類2個体が入り混じっていた。この後者の未記載種は,それ以外に標本が得られなかったことと,ハクスイナガニシの形態変異である可能性も考えられることからここでは新学名を与えなかった。さらに,最近フィリピンからエゾバイ科の新種として記載されたEuthria rikae Fraussen,2003もチョウセンニシに近似した種類であり,属位を変更した上で,上記の各種類と比較した。Fusolatirus coreanicus(E.A.Smith,1879)チョウセンニシ(=Peristernia pilsbryi Kuroda&Habe,1952ヒラセツノマタモドキ)この属としては小型,10個体の殻高の平均は23.5mm。螺塔は高く,水管溝はやや短い。殻表の彫刻は太く間隔の開いた縦肋と細い螺肋からなる。螺肋は次体層で6〜7本の主螺肋とより細い間肋からなり,体層の下の縫合が付着する部分で強まる。殻口は方形で,成長した個体では内唇の滑層が発達する。Fusolatirus higoi n.sp.ハクスイツノマタ(新種・新称)成長した個体は大型で,殻高36mm以上に達し,水管溝はチョウセンニシよりも長い。螺肋は細く,縦肋は縫合まで張り出さない。殻口の内唇滑層は発達しない。タイプ産地:愛知県一色沖タイプ標本:ホロタイプNSMT-Mo73550,殻高36.1mm。Fusolatirus rikae(Fraussen,2003)貝殻の形態の大部分はチョウセンニシに著しく類似し,殻高に対する水管溝の長さの割合が大きいこと,および色彩が赤みの強い褐色であることで区別されるが,両者の分類学的な関係については今後検討が必要である。Fusolatirus sp.ハクスイツノマタと同じロットに含まれていた2個体は,サイズ,色彩や水管溝の形態などでハクスイツノマタと近似しているが,縦肋が弱く,体層では完全に消失することで異なる。しかし,今のところこれらの個体だけしか知られず,ナガニシ類の個体変異の大きさを鑑みてここでは新種記載を行わず,この属の一種とするに止める。
  • 佐々木 猛智, 奥谷 喬司
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 121-124
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋研究開発機構(旧:海洋科学技術センター)の潜水調査船「しんかい2000」により伊豆諸島沖のスミスカルデラから未知の平巻の腹足類が採集された。本種は,貝殻の外形からはニシキウズガイ科,あるいはイソマイマイ科の一種であるかのように見える。しかし,原殻と歯舌の形態を観察した結果,Waren&Bouchet(2001)によって異旋類のミジンハグルマガイ科の新属として記載されたLurifax属の新種L.japonicusニッポンシンカイウズマキガイ(和名新称)であることが判明した。本新種は大西洋中央海嶺産の模式種L.vitreus Waren and Bouchet,2001に次いでLurifax属に確実に同定される種であり,本属の北西大平洋新記録である。
  • 奥谷 喬司, 土田 真二
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 125-133
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋科学研究開発機構(JAMSTEC)の無人深海探査機ハイパードルフィンによって,小笠原諸島西方の海形海山の中腹,水深912mにおいてハワイヒカリダンゴイカの小群が発見された。いずれの個体も海底面すれすれのところでホーバリングを行っており,海底に付いているものや高い位置で遊泳しているものは見られなかった。各個体ともまちまちな方向を向いており,海流に支配されているようには見えない。本種はこれまでもハワイ他西太平洋各地に分布していることは知られていたが,これまでの採集はおおむね開放ネットによるものであり,中層浮遊性とされていたが,今回の観察により漸深海底帯で,近底層性の生活を送っていることが判った。この観察の時,9標本が採集されたが,いずれも雌で,ハワイから採集されたタイプ標本も,またサモア北方のコンベ礁から採集されたものも雌で,雄の報告はない。また,Nesisは琉球や小笠原など日本近海を分布範囲にあげているが,それらの詳細についての報告は見あたらない。これらの標本と過去の形態記載と比較も行い,腕長式などにかなりの種内変異があることも確かめられた。
  • 原田 和幸, 大橋 智志, 藤井 明彦, 玉置 昭夫
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 135-143
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2002年10月,熊本県天草下島の富岡湾砂質干潟より採集されたイボキサゴに人工刺激を施し,放卵・放精を誘発した。これより得られた胚と幼生を濾過海水中(水温22.6〜25.1℃)で飼育し,発生段階ごとに形態を記載した。受精卵の直径は170μmであり,卵黄膜とゼラチン層に被われていた。トロコフォア幼生は受精後6時間で孵化し,8時間後に面盤が完成したベリジャー幼生になった。受精48時間後,幼生は基質上での匍匐と水柱での遊泳を繰り返すようになった。受精200時間後,幼生は変態して面盤を失い,殻幅200μmの幼稚体になった。この変態は,成貝が棲む底質を与え,海水を攪拌することによって誘起された。同属2種の幼生が変態までに要する時間は,本イボキサゴ幼生のそれよりも短い(サラサキサゴ-水温28〜30℃下で48時間;ダンベイキサゴ-水温20℃下で3日間)。本研究では,より適切な刺激が与えられなかったために変態の遅延が起こった可能性がある。
  • 安東 美穂, 冨山 清升
    原稿種別: 本文
    2005 年 63 巻 3-4 号 p. 145-151
    発行日: 2005/01/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Seasonal changes in size and density of a potamidid snail, Cerithidea cingulata (Gmelin, 1790), were studied on a tidal flat neighboring the mangrove forest at the mouth of the Atago River, southern Kyushu, Japan. Juvenile snails smaller than 2mm in shell width occurred from October through May, suggesting recruitment during this period. The proportion of snails with lips retroflexed was higher at the upper site than at the lower site. The seasonal change in size structures suggests that it takes two years for juveniles to become large-sized snails with retroflexed lips.
短報
feedback
Top