Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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63 巻, 1-2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 奥谷 喬司, 橋本 惇, 佐々木 猛智
    原稿種別: 本文
    2004 年 63 巻 1-2 号 p. 1-11
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    インド洋中央部のロドリゲス三重会合点付近の熱水噴出域「かいれいフィールド」から無人探査機「かいこう」及び潜水調査船「しんかい6500」によって採集された腹足類のうち,3新種について記載する。また同時にアルビンガイの近似種も発見された。Bruceiella wareni n. sp.カイレイワタゾコシタダミ(新種)(ワタゾコシタダミ科)殻径2mm前後。殻表は鉄錆様の沈着物に被われ,初生層は激しく腐食している。本属にはこれまで2種しか知られてないが,いずれの種とも歯舌特に中歯の形態において,一致しない。Desbruyeresia marisindica n. sp.チャイロハイカブリニナ(新種)(ハイカブリニナ科)殻高9mm程度。殻は細高く,3列の縦肋が螺肋と交わって顆粒状になる。歯舌の特徴はD. cancellataやD. spinosaに似ているが殻の形態,彫刻が異なる。Alviniconcha aff. hessleri Okutani & Ohta, 1988アルビンガイ近似種(ハイカブリニナ科)殻の特徴および歯舌の特徴はマリアナ背弧海盆から採集されたアルビンガイにほとんど一致する。しかし塩基配列の解析(小島他,本号)によると,この個体群は遺伝的に独立していると思われる。Iphinopsis boucheti n. sp.インドゴロモ(新種)(コロモガイ科)殻高3cmくらい。殻表には等間隔の,角張った螺肋があり,体層では約35条に及ぶ。前管溝は浅い。軸唇の奥部に1襞がある。
  • カロモン P., スナイダー M. A.
    原稿種別: 本文
    2004 年 63 巻 1-2 号 p. 13-27
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本周辺海域のナガニシ属Fusinusには,不確実な記録を除いてこれまで18種類(亜種や型を含む)が知られているが,分類は混乱しており,図鑑等で誤って図示されている例も少なくない。本論文ではFusinus longicaudus (Lamarck, 1801)ナガニシとそれに混同されることの多かったナガニシ属3種について分類学的再検討を行った。中でも,和名のハシナガニシは,これまでに図示されているものを検討した結果,すべてナガニシと同種であることが明らかとなった。また,ハシナガニシの学名として用いられてきたF. longicaudusはF. colus (Linnaeus, 1758)ホソニシの異名である。これらに関連して,F. perplexus (A. Adams, 1864), F. perplexus nagasakii Grabau, 1904, F. inconstans Lischke, 1869, F. forceps (perry, 1811), F. turriculus (Kiener, 1840)とF. ferrugineus Kuroda & Habe, 1960の6タクサについてレクトタイプを指定した。F. perplexus (A. Adams, 1864)ナガニシサイズや殻形に変異が大きい。成熟すると他のナガニシ属の種類同様軸唇滑層が板状になる。ハシナガニシは本種の異名とみなされるほか,下に述べるように図鑑等でイトマキナガニシとして図示されてきたものの多くもナガニシである。F. perplexus nagasakii Grabau, 1904もナガニシの異名となる(新異名)。F. salisburyi Fulton, 1930イトマキナガニシイトマキナガニシは和名の基となったHirase (1907)は正しく本種を図示しているが,その後の図鑑等で図示されているもののほとんどは実際にはナガニシの軸唇滑層が板状に発達した個体であった。最近の文献では次種の亜種とされることが多いが,次に挙げるような一貫した特徴があり,別種と認められる。すなわち,本種では成熟すると大型で堅固となり,螺肋が粗くその間が深く窪む。軸唇滑層が板状に発達して偽臍孔を形成する。周縁はやや角張り,そこで縦肋が瘤状となる。F.forceps (Perry, 1811)アライトマキナガニシこれまで国内の文献で正しく図示されたものはない。イトマキナガニシに近似するが,周縁は丸く,体層上でも規則的な縦肋が消失しないこと,軸唇上の滑層板が真っ直ぐで褶曲しないことで区別できる。和名のアライトマキナガニシはイトマキナガニシの異名である可能性が高いが,混乱を避けるためここでは本種の和名として扱う。F.ferrugineus (Kuroda & Habe, 1960)コナガニシナガニシに近似するが,螺層の丸みが強く,周縁は丸く角ができず,通常成熟しても小型であることで区別できる。生時は殻全体が海綿に覆われていることが多い。ナガニシの亜種とされることもあるが,両者の分布はほぼ重なっていることと,形態的に区別できることから別種として扱われるのが適当であろう。
  • 奥谷 喬司, 小島 茂明, 金 東正
    原稿種別: 本文
    2004 年 63 巻 1-2 号 p. 29-32
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    シロウリガイ属はこれまで北東・北西太平洋から多様の種類が知られてきたが,南西太平洋からはニュージーランド沖とラウ海盆からこの属の出現が予報的に報じられているのみで,分類学的な詳細は公表されていない。ところが,1994年にドイツのゾンネ号が行ったニューアイルランド海盆の調査中,リヒル島沖のエジソン海山から本属の標本を採集していた。今回その後同地点から採集された標本の形態学的および分子系統学的研究(Kojima et al.,未発表)を行った結果,我が国本州沖の南海トラフに棲むナンカイシロウリガイに近似の未記載種であることが判ったので記載した。Calyptogena(Archivesica) edisonensis n. sp.エジソンシロウリガイ(新種・新称)殻長99.8mm(ホロタイプ)。殻頂は前方1/4〜1/5くらいに偏っていて,殻の後域は僅かに広がる。殻皮は薄く,殻頂域では剥離している。〓歯は放射状。浅い殻頂下洞がある。前足牽引筋痕は明らか。エジソン海山の水深1450m。あらゆる点でナンカイシロウリガイに似るが,ナンカイシロウリガイでは前足牽引筋痕が深い孔状になる特異性がある。
  • 木村 妙子, 五月女 祐里奈, 関口 秀夫
    原稿種別: 本文
    2004 年 63 巻 1-2 号 p. 33-48
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    汽水性二枚貝ヤマトシジミは本邦における水産重要種である。本研究では,ヤマトシジミの人工産卵誘発によって得られた受精卵を15℃,20℃,25℃の温度条件で18日間飼育し,浮遊幼生,変態期幼坐,着底椎貝の成長と形態を観察した。ヤマトシジミの受精卵はトロコフォア幼生を経てD型幼生に成長するが,この幼生は後期ベリジャー幼生期にあたる殻頂期幼生にはならず,D型幼生の後期に足を発達させ,変態期幼生となって着底する。着底直後の稚貝の殻はD型であり,これはやがて殻頂をもつ殻に変わる。最も成長のよかった25℃の温度条件下では,受精後12日に平均殻長195μmに達し,ほとんどの個体が着底した。一方,15℃の温度条件下では実験終了まで着底個体は観察されなかった。本研究では野外の浮遊幼生や稚貝の試料の同定のために,ヤマトシジミの浮遊幼生と着底稚貝の形態を記載し,これらと本州河口干潟に優占する二枚貝類幼生(アサリ,ホトトギスガイ,イソシジミ,シオフキガイ,ハマグリ)の形態との比較をおこなった。浮遊幼生はD型幼生では大きさ以外の識別点は乏しい。それに対して着底稚貝では,ヤマトシジミの殻の周縁に形成される放射肋により,他の種とは明確に識別できる。
  • 嶋田 久美子, 浦部 美佐子
    原稿種別: 本文
    2004 年 63 巻 1-2 号 p. 49-59
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Drift and upstream movement of the freshwater snail Semisulcospira libertina were investigated at the Iwai River, Nara, Japan, from May 1999 to February 2000, in natural conditions. Water temperature, snail size and discharge were measured. Drift and upstream-movement were observed mainly from May to October, when water temperature was higher than 13.2℃. Most drifted snails were smaller than 6mm in shell width, whereas snails that moved upstream belonged to all size classes. The number of drifted snails per hour after rainfall (60≦discharge<130l/s) was smaller than during normal discharge (<60l/s), whereas the number of snails moving upstream per hour did not change between the normal discharge days and days after rainfall. From these results, it is concluded that small S. libertina disperse downstream by drift on days with normal discharge, and snails of all sizes move upstream irrespective of discharge rate.
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