Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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64 巻 , 1-2 号
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原著
  • 橋本 惇, 山根 崇宏
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 1-10
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    殻は厚く大型で殻長は195.6mmに達し,厚く硬質。マユイガイ型。両殻の膨らみは中庸で,最大殻幅部は殻の前縁から殻長の約60%後方。殻頂は殻の前縁から殻長の約20%後方,殻頂窩は大きく膨らみ殻長の30%以上を占める。後背隅は丸く,後腹縁は大きく丸い。大型個体の腹縁は大きく凹むが,小型個体は僅かに凹む。靱帯は後位,強靱で殻後背縁の80〜90%で後部は截断状。筋痕は明瞭。前閉殻筋痕は大きく丸みを帯びたアーチ状。前牽引筋痕は殻頂窩内になく殻頂の前方で,前閉殻筋痕と繋がり太い逆コンマ形。後閉殻筋痕は大きく楕円形,後足糸牽引筋後束筋痕と繋がり一つの筋痕を形成。套痕はやや不明瞭,ほぼ腹縁に並行。殻長の75%を超す厚く長い鰓を有する。前牽引筋は細長く,収足筋はやや細い。2束の筋肉よりなる後足糸牽引筋前束の前側筋肉は収足筋と繋がる。4束の筋肉よりなる後足糸牽引筋後束は細く,長い。後足糸牽引筋の前束と後束の間に筋束はない。水管弁膜(valvular siphonal membrane)はなく,外套内襞(inner mantle fold)は前閉殻筋腹縁で完全に分離。消化管は短く縦方向に弱いS字状を呈する。分布:小笠原父島小笠原諸島の南西に位置する海形海山の水深435mから762mに存在する温水湧出域周辺のみから知られる。
  • 濱田 直人, 松隈 明彦
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 11-21
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    国立科学博物館及び九州大学理学部地球惑星科学教室所蔵のキクザルガイ科二枚貝の標本群を検討したところ,未記載の新種が1種発見されたのでここに記載,報告する。Chama cerinorhodon n. sp.イチゴキクザルガイ(黒田;新種)殻は厚く,殻長は約20mmと小型,輪郭は円形,または楕円形で,やや不規則。底質に左殻で固着する。両殻とも外表面は板状突起によって同心円状に密に装飾され,独特の蝋状のつやのある半透明の質感を持つ。殻色は赤色がかった桃色から白色。内面は白色で,陶質。閉殻筋痕は背腹方向に長い。腹縁は細かく刻まれる。胎殻は小型(長さの平均0.48mm)。こう歯の特徴はキクザルガイ科のそれに準ずるが,強くは発達しない。原殻は同心円状の成長線,初期後生殻は細かい放射肋と等間隔の同心円肋で装飾される。貝殻構造はアラレ石質の内殻層(複合交差板構造)と中殻層(交差板構造)及び方解石質の最外殻層の3層構造。最外殻層は不規則な形状のブロックの集合によって形成され,北東太平洋のChama arcana Bernard,1976のものに似る。ホロタイプ: GK.N10108-2,九州大学総合研究博物館所蔵。タイプ産地:福岡県糸島郡志摩町姫島周辺。分布:更新世:宮田層,神奈川県横須賀市津久井。現生:北海道南部から九州。Chama fragum Reeve,1846に同定されてきたが,Chama fragumのシンタイプを検討した結果,貝殻構造及び貝殻鉱物の違いから別種であることが分かった。また,東太平洋にChama arcana Bernard,1976とChama pellucida Broderip,1835は殻のサイズが大きく違うが,形態及び殻構造,殻鉱物の特徴が良く一致するため,近縁であると思われる。
  • 奥谷 喬司, 徐 垣
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 23-29
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    スンダ海峡の沖,ジャワ海溝の水深約2000〜2100m付近から採集されたシロウリガイ類の1新種Calyptogena (Archivesica) garuda n. sp.ガルーダシロウリガイ(新称)を記載した。本種は極めて大型(殻長約24cm)で,堅牢な貝殻を持つ。右殻の〓歯のうち,中央歯は大きな三角錐状でやや上に反り,犬歯を思わせる。左殻の中央歯は背面に浅い溝があって,二分されたように見える。殻頂下洞は不顕著。極めて低い前側歯がある。外套湾入はやや深く鋭角的。
  • 中野 智之, アスワン , 小澤 智生
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 31-38
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2004年10月にインドネシアのジャワ島西部においてカサガイ類の調査・採集を行い,1未記載種を含む3科4属9種を確認した。この未記載種の存在は,Lindberg & Vermeij (1985)によって報告されていたものの,軟体部の標本がなかったために新種記載が保留されていた。本研究において,殻形態の比較,および歯舌の観察を行ったところ,新種である事を認めたので,Sedekan Beach, Karang Hawu Beach, Pelabuan Ratuの3地点において採集した標本を基に,記載する。また,本地域からのコガモガサLottia luchuana (Pilsbry, 1901),およびヨメガカサCellana toreuma (Reeve, 1854)の報告は新記録である。Patelloida javanica n. sp.ジャワガサ(新種・新称)殻は円形に近いが,やや縦長の個体も存在する。殻高は高く,殻頂はほぼ中央に位置する個体から,やや前寄りの個体まで変異がある。殻頂は背側に高く垂直に突出する。外表面の色は黄色味を帯びた灰白色で,薄い黄色もしくは赤色の条線を持つ。表面彫刻は多数の放射肋からなり,一次肋と二次肋がほぼ規則的に交互に交わる。殻は全体的に厚い。内面は淡橙色から橙黄色で光沢を持ち,筋肉痕から内側は光沢を持たない白色を呈する。殻体構造は稜柱構造(M+2層),同心円状交差板構造(M+1層),貝殻筋付着層(M層),放射状交差板構造(M-1層)の4殻層で構成される。歯舌は同じ大きさの3対の太い側歯と2対の細長い縁歯からなる。タイプ標本:ホロタイプ,12.7×10.5×5.7mm, NSMT-Mo 73688。パラタイプ1, 13.3×10.1×5.8mm, NSMT-Mo 73689,パラタイプ2, 12.2×9.7×5.4mm, NSMT-Mo 73690,パラタイプ3, GLITBL-Mo 01001, 9.1×8.1×4.9mm。タイプ産地:セデカンビーチ,ジャワ島,インドネシア(06°52.9′S,106°05′E)。
  • 湊 宏
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 39-44
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本において,ムシオイガイ科貝類は現在まで22種(亜種)が報告されているが,九州ではその種類数は多くはない。1978年と1989年に行った宮崎県北部の石灰岩地での調査によって,2新種を確認したのでここに記載した。Chamalycaeus shiibaensis n. sp.シイバムシオイ(新種,新称)貝殻は小形(殻長径約4.3〜4.6mm),低平で円錐形状,淡黄白色を呈する。螺層は4 1/2層,多少の深い縫合のために膨れ,そして螺管はゆるやかに太くなって殻口へ向かう。胎殻は1 1/2層,平滑で光沢があり,続く螺層からは数多くの細かい糸状脈が殻表を覆う。最終層においては,殻口からほぼ1mm程度付近でかすかにくびれて細くなるが著しくはない。そしてその位置から後方に向けて縫合に沿って微小なウジ虫状の呼吸管が横たわる。体層周縁は円い。臍孔は殻径の1/3ほどに広く開き,殻底からは全螺層がみえる。殻口縁は全線で円く,二重唇となるが,外側の唇縁は薄くて鋭く拡がって反曲するものの,内側の唇縁は単純である。蓋は円くて多旋型,角質で薄く,半透明,淡黄白色を呈する。ホロタイプ(NSMT-Mo 73682):殻高2.6mm,殻径4.4mmタイプ産地:宮崎県東臼杵郡椎葉村松木稲荷穴の入り口(石灰岩地)分布:宮崎県(東臼杵郡,西臼杵郡)比較:本新種はその殻の大きさ,殻口の二重唇,殻頂からみた糸状脈などからサドムシオイChamalycaeus sadoensis (Pilsbry & Hirase, 1903)に似ているが,呼吸管から唇縁の間が微細な脈があること口縁外唇が著しく反曲しないことで異なる。Chamalycaeus nishii n. sp.タカチホムシオイ(新種,新称)貝殻は本属の中ではやや中形(殻高:2.2〜2.4mm,殻径:3.8〜3.9mm)に属し,堅固,灰白色。その螺塔は低円錐形,約4 1/2層の螺層を数えることができる。螺管は円く膨らみ,殻頂から殻口に向けて緩やかに太くなる。胎殻は2層,平滑で光沢があり,不透明な白色を呈する。胎殻に続く3層からは細かい成長脈が殻表を覆う。縫合は深くて顕著。ウジ虫状の呼吸管は小さくて細長く,体層の縫合に沿って後方へ伸びている。頸部のくびれは弱くて著しくはないが,頸部の中程に弱いふくらみがある。臍孔は広く開き,殻径の1/3を占める。そして殻底からすべての螺層がみえる。殻口は傾き,ほとんど円形。その口縁は全縁で円く,多少肥厚するが反曲しない。蓋は円形,角質,薄くて多旋型,半透明で淡黄白色を呈する。ホロタイプ(NSMT-Mo 73685):殻高2.3mm,殻径3.8mmタイプ産地:宮崎県西臼杵郡高千穂町黒仁田,柘ヶ滝鍾乳洞(石灰岩地)分布:宮崎県(西臼杵郡,東臼杵郡),大分県(臼杵市),熊本県(八代郡)比較:貝殻の背面外観からみると,本新種は大分県南部の石灰岩地産のオナガラムシオイChamalycaeus takahashii Habe, 1976に近似するが,貝殻がより小さい3.8〜3.9mm)こと,口縁が肥厚しないこと,呼吸管から殻口背面の唇縁までの間に顕著な隆起部を欠くことで相違する。またツシマムシオイChamalycaeus tsushimanus (Pilsbry & Hirase, 1909)は本新種に類似するが,貝殻がはるかに大きい(殻径5.8mm)こと,唇縁部が後種と比較してより肥厚することで識別される。
  • 小島 茂明, 藤倉 克則, 奥谷 喬司
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 45-53
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ミトコンドリアDNAの塩基配列に基づき,シマイシロウリガイとナンカイシロウリガイについて,本州沖冷湧水域と沖縄トラフ熱水噴出域の集団間に有意な遺伝的分化がある事が示された。それぞれの種内に,比較的他から遺伝的に分化したハプロタイプの存在が検出された。またシマイシロウリガイでは,両海域間での非対称なハプロタイプ分布が示された。同様のパターンが,両海域に生息する第3の種エンセイシロウリガイについても見出されている事から,本州沖と沖縄トラフに分布するこれら3種のシロウリガイ類の分散が共通の歴史的要因に起因する可能性が示唆された。
  • 栗原 善宏, 酒井 治己, 北野 聡, 小林 収, 後藤 晃
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 55-62
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    長野県産カワシンジュガイ2河川4集団の遺伝的・形態的変異性を調査した。その結果,長野県産カワシンジュガイに生殖的に隔離された2つの集団が存在することが明らかとなり,分類学的に別種として細分される可能性が強く示唆された。両者には殻の外部形態にも有意差が認められた。一方の種が比較的高い遺伝的変異性を有していたのに対し,もう片方の種では全く変異性は認められなかった。本種群の保全を図る際には,これらの事実をふまえた上でそれぞれに適切な保全施策を行う必要があろう。
  • 小林 収, 近藤 高貴
    原稿種別: 本文
    2005 年 64 巻 1-2 号 p. 63-70
    発行日: 2005/06/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    カワシンジュガイ類の幼生はサケ科魚類,特にタイセイヨウサケ属(Salmo)とサケ属(Oncorhynchus)に寄生するが,イワナ属(Salvelinus)にはほとんど寄生しない。日本のカワシンジュガイはサケ属のヤマメ(masu trout)とアマゴ(amago trout)に寄生するとされてきたが,最近になってイワナ(whitespotted char)にも寄生するという報告がなされた。信濃川水系には,寄主の異なる2つのカワシンジュガイ個体群が知られている。この2個体群における寄主選択性を比較するため,野外における魚類への寄生状況の調査とサケ科魚類へのグロキディウム幼生の寄生実験を行った。寄生中のグロキディウム幼生の成長曲線と脱落した稚貝の平均殻長には寄主の違いによる有意な差は見られなかったが,寄主選択性は個体群によって全く異なっていた。ヤマメは中部農具川では幼生の寄主であったが,逆さ川では寄主にならなかった。その逆に,イワナは中部農具川では寄主でなかったが,逆さ川では寄主であった。こうした寄主特異性の違いは,個体群間の変異というよりも,種が異なるためである可能性を示唆した。
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