Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
Online ISSN : 2189-7697
Print ISSN : 1348-2955
ISSN-L : 1348-2955
65 巻 , 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • カロモン , スナイダー
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 177-191
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本産ナガニシ属に関する再検討の第2報として,ミガキナガニシとしばしばそれに混同されてきた種類について検討を行った。従来日本の文献ではミガキナガニシはFusinus undatus similis (Baird, 1873)に固定されることが多かったが,タイプ標本や原記載の図,および日本および太平洋の各地から採集された標本を詳細に調べた結果, Fusinus undatus(Gmelin, 1791)とFusinus similis(Gmelin, 1791)は明らかに独立した別種であり,ミガキナガニシは前者に該当することが明らかになった。また,ハワイからFusinus undatusとして報告されていた種類は,これらとは別の未記載種であることが明らかとなったため,新種Fusinus mauiensisとして記載した。さらに,これらミガキナガニシ種群と形態的に類似したF. galatheae Powell, 1967, F. bountyi Rehder & Wilson, 1975, F. genticus (Iredale, 1936), F. sandvichensis(Sowerby III, 1880), F. michaelrodgersi Goodwin, 2001とF. midwayensis Kosuge, 1979についても図示し,比較を行った。Fusinus undatus (Gmelin, 1791) ミガキナガニシ 殻はこの属としては中型(17個体の平均殻長170mm), 厚く堅固で重い。殻口はやや小さく,水管はあまり後ろへ反り返らない。縦肋は太く板状で,通常体層の底部まで連続する。殻表は淡黄褐色で平滑であるが,日本産の新鮮な個体では褐色の比較的厚い殻皮で被われる。分布:紀伊半島以南,フィリピン〜ニューカレドニア,パラオ,タヒチ,マルケサスからハワイ。Fusinus similis(Baird, 1873) ゲンコツナガニシ(新称) ミガキナガニシに殻形やサイズ(12個体の平均殻長162mm)は似るが,殻がやや薄く軽い。水管の反り返りはより強い。縦肋はミガキナガニシよりも弱く,肩部に結節列を形成するのみで,殻底に達しない。また,体層の背面で弱まる。分布:紀伊半島以南,フィリピンを経てニューカレドニアまで。Fusinus mauiensis n. sp. マウイナガニシ(新種・新称) ミガキナガニシに近似するが,やや小型であること(7個体の平均殼長158mm),殼が極めて厚く重く,殼長あたりの重量が約2倍であること,水管の基部が太く,また縦肋が肩部で著しく発達することなどで形態的に区別される。分布:タイプ産地(ハワイ,マウイ島)からしか知られていない。
  • ルッツェン , 小菅 丈治
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 193-202
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    琉球列島の干潟に生息するスジホシムシSipunculus nudus Linnaeus, 1766の体表に着生する二枚貝の一種を,ウロコガイ上科,チリハギガイ科の新種ユンタクシジミLitigiella pacifica n. sp.として記載した。ユンタクシジミの貝殻は薄質白色で,殻表には細かい成長脈が浅く刻まれる。薄い殻皮に被われるが,殻の中央付近では摩耗し,前後背縁付近では灰褐色に汚損されることが多い。殻の輪郭は長円形で,殻頂は突出しない。両殻とも1主歯を備え,右殻の主歯は左殻より大きく,発達した前後側歯を持つ。ホロタイプ:NSMT-Mo 73728,殻長5.9mm, 殻高4.5mm。タイプ産地:沖縄県石垣島名蔵湾。分布:沖縄島(沖縄市泡瀬干潟)・石垣島名蔵湾。付記:本種は,石垣島名蔵湾と沖縄本島泡瀬干潟の礫混じりの砂質干潟に生息するスジホシムシの体表に粘液糸で付着する。スジホシムシの後端付近に付くことが多いが,フィリピンハナビラガイがスジホシムシの後端に強く着生する状況と異なり,付着の程度は緩い。スジホシムシ1個体の体表に2〜3個体が付くことも珍しくなく,山下他(2005)によって提唱された和名はこの状況を把えて「数名が集まっておしゃべりをする」という意味の沖縄方言「ゆんたく」を用いたものである。フランス西岸からスジホシムシに着生する二枚貝として記載されたLitigiella cuenoti (Lamy, 1908)は,ユンタクシジミとよく似た形態の殻を持つ。両者の識別点として, L. cuenotiでは殻頂の原殻付近が突出するのに対しユンタクシジミでは突出しない点,主歯の大きさがL. cuenotiでは両殻等大であるのに対し,ユンタクシジミでは右殻の主歯が明らかに大きい点を挙げうる。組織切片を作製し生殖器官を観察した結果,ユンタクシジミは雌雄同体で複数回の性転換を行う可能性が示唆された。また,有糸型の精子が一対の貯精器官内に蓄えられていた。
  • 小澤 宏之, 木村 妙子, 関口 秀夫
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 203-220
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ホソスジヒバリガイは沖縄本島では主として海草藻場に生息し,隣接する海草のない区域にはほとんど見られない。この海草藻場内外のホソスジヒバリガイの密度差が形成され維持される機構を解明するために,沖縄本島の金武湾の海草藻場内外に定点を設け,各成長段階(浮遊幼生,海底稚貝,小型個体,大型個体)の密度の変動を1年間にわたって調査した。海草藻場内外のホソスジビバリガイの密度差は,浮遊幼生を除いて,各成長段階において統計的に有意であった。ホソスジビバリガイの殼長頻度分布に基づくコホート解析の結果によれば,浮遊幼生は主として7月〜8月に着底し,着底後1年で約20mmにまで成長する。着底直後の死亡率は著しく高いが,殼長約300μmを越す小型個体の死亡率は低くなり,ほぼ一定となる。これらの事実は,その具体的な詳細は未解明であるが,海草藻場内のホソスジヒバリガイの大型個体の密度は着底直後の死亡率の高低によって決定されており,また海草藻場内外の密度差は着底稚貝の段階において決定されていることを示している。
  • 和田 年史, 竹垣 毅, 森 徹, 夏苅 豊
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 221-228
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    水槽内でのシリヤケイカSepiella japonicaの繁殖行動を観察した。シリヤケイカの雄は雌が産卵を開始する前に雌をめぐって闘争し,ペアを形成した。ペア雄は雌の頭部に覆い被さる形で交接を始め,雄上位のままで雌雄の頭部が向き合う交接体勢を維持した。雄は自らの精莢を射出する前に,雌の口球周口腹下部で右第IV腕を動かすことによって,過去の交接によってそこに付着させられていた精子塊の一部を落下させた。その精子除去行動後,雄は交接腕である左第IV腕の根元で漏斗から吐き出した精莢をつかみ,雌の口球下部に渡した。この精莢輸送は各交接で1回だけであった。雌は平均1.5分の間隔で産卵基質に卵嚢を1つずつ産みつけ,一連の産卵行動で36から408個以上の卵嚢を産出した。また,本研究では1個体の雌が追加の交接なして200個近くの受精卵を産出することが示され,シリヤケイカの雌は過去の交接によって貯えられた精子を必要な時に受精に使う能力を持つと考えられた。それに対して雄は交接後も産卵雌を他雄からガードし続け(交接後ガード時間の範囲=41.8〜430.1分),そのガード行動中に平均70.8分の間隔で繰り返し交接を行った。シリヤケイカの雄が精子除去に費やす時間は他のコウイカ類のそれらと比べて短かったが,永続的な交接後ガード行動と繰り返し交接が短時間の精子除去から推測された本種の低い精子置換率を補償しているかもしれない。
  • 関根 寛, 山川 紘, 高沢 進吾, 林 影萍, 鳥羽 光晴
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 229-240
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    In recent years, the volume of the Japanese short neck clam Ruditapes philippinarum imported from China, South Korea and North Korea has increased rapidly to compensate for the decrease in domestic production in Japan. Imported clams are generally released in areas already inhabited by the same species, and it is feared that they may affect the domestic populations. It is necessary to understand the genetic characteristic of the various local populations to manage and conserve biodiversity. However, the genetic variation of the Japanese short neck clam from Japan and the other countries has not been studied. This study was therefore designed to analyze the genetic variation among local populations from Japan and China using nucleotide sequence of the M and F types COX1 gene from the mtDNA of Japanese short neck clam. The nucleotide sequence for the total length of the M-type (1608 bp) and F-type (1599 bp) COX1 gene of 39 male individuals collected during the spawning season (November to May, 2004) from nine locations in Japan and China was determined. In the M-type COX1 gene, the number of nucleotide and amino acid substitutions were higher than in the F-type COX1 gene. Both the M-type and F-type COX1 gene revealed differences in nucleotide sequence between Japanese and Chinese populations, which were clearly grouped in the phylogenetic trees (MP and NJ methods). In addition, the Japanese populations were divided into two subgroups by the M-type COX1 gene, the Honshu-Kyushu (Tokyo Bay, Mikawa Bay, Nanao Bay, Miyazu Bay and Ariake Sea) and Hokkaido (Notsuke Bay) groups. The Chinese populations were also divided into two subgroups, these from the North (Dalian Bay and Kiachow Bay) and those from the South (Xiamen Bay).
  • 近藤 高貴, 田部 雅昭, 福原 修一
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Two genetic types (A and B) of Anodonta "woodiana" were identified as A. lauta and A. japonica respectively, based on the number of large teeth on the hook of glochidia, which was always more than 12 in A. lauta, but less than 11 in A. japonica on the average. The ratio of shell height to shell length in the glochidia was not a suitable character to identify these two species, because it varied largely in A. japonica.
  • 小幡 麻友, 西森 克浩, 古丸 明
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 247-257
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    To reveal the mechanism of androgenesis, we observed chromosomes, centrosomes and microtubules in fertilized C. fluminea eggs from meiosis to first mitosis. We also observed fertilized eggs of C. sandai, in which development is normal. In C. sandai, one of the centrosomes attached to the egg cortex and the other remained in the center of eggs at metaphase of meiosis. The spindle axis at metaphase of meiosis was perpendicular to the egg cortex. On the other hand, in androgenetic eggs of C. fluminea, two centrosomes attached to the egg cortex. The spindle axis was parallel to the egg cortex. As a result, all egg chromosomes were extruded with two polar bodies at first meiosis. Only the male pronucleus remained in eggs after the polar body formation. C. fluminea has two centrosome attachment sites, while C. sandai has only one attachment site at meiosis. We deduced that the change of attachment site may cause the androgenesis in C. fluminea. We also measured the size of male pronucleus in C. sandai and C. fluminea fertilized eggs during meiosis. At 20 min after fertilization, all egg chromosomes were extruded with two polar bodies in C. fluminea. Meiosis of C. fluminea was apparently completed at 20 min, but the male pronucleus didn't enlarge until 40 min had elapsed. At 40 min, the male pronucleus started to enlarge, which coincides with the period of second polar body formation in C. sandai. We suggest that the cell cycle of second meiosis is still functional in oocytes of C. fluminea.
短報
  • 湊 宏
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 259-262
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    故黒田徳米博士によりウロコムロマイマイと仮命名されていた紀伊長島沖,大島産の本新種は,西宮市貝類館の黒田コレクションに標本2個体が,また国立科学博物館の河村コレクションの中にも2個体が保管されている。筆者は,本種の分類学的な研究のため,文化庁の許可を取得して2002年と2004年の2回にわたり渡島し,若干の生貝標本を得た。これらの標本に基づき,本論文では本種を新種として記載し,筆者の得た標本をホロタイプ,および黒田コレクションと河村コレクションの標本をパラタイプに指定した。また,中優氏の採取された資料も研究のために使用した。Satsuma(Satsuma) lepidophora n. sp ウロコマイマイ(新種・新称) 貝殻は低円錐形状,薄質で半透明(軟体部が透けてみえる),淡黄褐色,殻高10.6〜13.0 mm (成員7個体の平均では12.0 mm),殻径16.2〜18.8mm(平均では17.5 mm)。螺層の縫合は深い。殻表はざらざらして,微細な鱗状の殻皮突起物に覆われるが,成貝ではそれらが脱落して,痕跡的に微かに残っていることがある。住居は大きくて,殻高の2/3を占め,その周縁には弱い角が認められる。体層には色帯を欠く。殻口は半月状でその殻口縁の微かに拡がる,下縁部拡がって反曲する。臍孔は殻径の1/8〜1/9の広さでむしろ小さい。生殖器:鞭状器は多少細長くて(約10 mm),視棒状。陰茎鞘と陰茎はほぼ同じ長さで,陰茎付属肢は大きくて顕著。膣は陰茎よりも長く,中程から末端部にかけて多少肥厚している。ホロタイプ:NSMT-Mo 73712, 殻高11.6 mm,殻径17.6 mm。タイプ産地:三重県北牟婁郡紀北町紀伊長島"大島"。比較:本新種は貝殻の形態から伊吹山産のヤコビマイマイSatsuma (S.) jacobii (Pilsbry, 1900)や和歌山県田辺湾神島産のムロマイマイS. (S.) japonica peculiaris(A. Adams, 1868)に近似するが,ヤコビマイマイは貝殻が堅固で殻表に光沢があること,殻表に微細な螺状脈をもつこと,生殖器の鞭状器が木槌状に先が2分していることで本新種とは容易に識別される。ムロマイマイの貝殻は小形で(3個体の平均:殻高12.1 mm, 殻径14.9mm),堅固であること,体層に不明瞭な色帯を有すること,生殖器の鞭状器が細くなる上に,先端に向かうにしたがって急に細くなることで異なる。さらにオナジマイマイ科のオナジマイマイの無帯個体は,貝殻の外観上本新種に類似するが,生殖器に矢嚢や粘液腺を保持することから,これらを欠く本新種とは明らかに異なる。
  • 芳賀 拓真
    原稿種別: 本文
    2006 年 65 巻 3 号 p. 263-266
    発行日: 2006/09/30
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ネムグリガイZachsia zenkewitschi Bulatoff & Rjabtschikoff, 1933は,スガモPhyllospadix iwatensisやアマモZostera marinaなどの海草の地下茎に穿孔するフナクイムシ科の二枚貝である。本種は極端な性的二型を示し,幼生の浮遊期間は極めて短いことが知られている。本種の広範囲な分散は,成体がホストである海草とともに漂流することに起因するという説がある。筆者は宮城県石巻漁港において,漂流しているアマモの地下茎中より本種の生体を発見し,上記の説を支持する初めての直接的な証拠を得た。本種は主に海底から露出する地下茎に生息するため,ホストである海草とともに漂流する機会が多いと思われる。また,雌が矮小雄を保育するため,1個体の雌が漂流するだけでも,遠隔地に新たな個体群を確立させることができるだろう。本種はさらに,地下茎そのものを主な餌とし,セロファン質の膜が軟体の周囲を覆うという特徴がある。それらの特徴は,餌の欠乏や地下茎の物理的損傷など,漂流中の環境ストレスに対して有利にはたらくと考えられる。
feedback
Top