Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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66 巻 , 1-2 号
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原著
  • 中野 智之, 高橋 恭子, 小澤 智生
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 1-10
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小笠原諸島に生息するスガイ類は,これまでLunella cinereaとして報告されてきたが(例えば平瀬・瀧, 1954;竹之内, 1986), Fukuda (1993)によって形態学的に未記載種である事が指摘されていた。しかしながら,現在までに正式に新種記載は行われてこなかった。さらに近年,個体数が激減しており,現在では絶滅寸前とされている(福田, 1996)。本研究では, 2006年6月に小笠原諸島・父島において貝類相の調査を行った際に採集する事ができた8個体と小笠原自然文化研究所の標本(CIBML2005018),国立科学博物館収蔵の標本(NSMT-Mo 963)を用い, L. cinereaとの殻および歯舌の形態比較と,ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子(658bp)の塩基配列に基づき予察的な分子系統解析を行った結果,形態学的にも遺伝的にもL. cinereaとは区別でき,新種である事を認めたので,ここに記載報告する。また,福田(1996)で述べられたように,オオベソスガイという和名(初出は岩川, 1919)の基準となった標本(NSMT-Mo 963)は小笠原産であり,八重山諸島以南のインド西太平洋に広く分布するL. cinereaは和名を失っている。しかし, L. cinereaに対する和名としてオオベソスガイが未だに使われる事も多くあり,また本種は小笠原固有種である事を踏まえ,本論文をもって小笠原固有種をオガサワラスガイ(初出は加藤, 1996), L. cinereaをオオベソスガイと呼ぶ事にする。オガサワラスガイLunella ogasawarana n. sp. (新種)の多くの形態学的特徴はオオベソスガイと類似しているが次の点から明瞭に区別される。(1)殻は常に暗褐色であり,臍孔部はオレンジ色に染まる。(2)螺肋に多数の顆粒がある。(3)真珠層の伸張部が臍孔を越えて広がる。(4)真珠層伸張部の縁が刻み目状。(5)臍孔は丸い。(6)歯舌の中歯の先端は直線的である.本種は,砂底転石帯の潮間帯上部に生息しており,昼間は岩緑の砂に埋在している。小笠原固有種であるが,近年採取例がほとんどなく絶滅に瀕していると考えられ,早急な対策が必要である。タイプ標本:ホロタイプ, 34.8×36.8mm, NSMT-Mo 73816。パラタイプ1, 13.8×15.4mm, NSMT-Mo73817,パラタイプ2, 24.8×26.7mm, NSMT-Mo73818,ほか。タイプ産地:小笠原諸島,父島,境浦。
  • 淤見 慶宏
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 11-17
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    小笠原群島,スミス列岩,鹿児島県沖,沖縄近海のサンゴ網により採集されたアカサンゴに付着していたウミウサギ科ベケリケボリ属の1新種を記載する。また,記載に伴い,属の分類定義に混乱の見られたPseudosimnia Schilder, 1927イロガワリケボリ属をPrimovula Thiele, 1925ベケリケボリ属のシノニムとした。Primovula luna n. sp.ツキヨミケボリ(新称:月夜見毛彫)殻長6.3〜10.3mm。貝殻は丸みのある亜紡錘形で後端が良く発達する,背面には明確な横螺条が刻まる, 2-3本の皺がある三角形で大型の滑層瘤(funiculum)を形成する,後溝は末端で広がり縦軸方向に抜けている,内唇縦溝から軸唇窩が著しく発達し殻口が狭くなる,外唇が広く偏平である,殻色は薄桃色から赤色で背面中央に大型の白色楕円紋があるなどの特徴をもつ。シカマキヌハダヅツミPrimovula shikamai (Cate, 1973)に似るが,シカマキヌハダヅツミは殻色が白色である点,内唇縦溝と軸唇窩が発達せず殻口が広い点,滑層瘤が小型である点,外唇が狭い点,軸唇末端襞がねじれる点で異なる。通常,本種成貝は螺条が背面側のみ明確に刻まれ,軸唇は滑層に覆われ滑らかになる。しかし,成月になっても腹面倒が滑層に覆われず,螺条が殻口まで明確に残る個体もある。タイプ標本:ホロタイプ, NSMT-Mo,殻長6.9mm。パラタイプNo.1, NSMT-Mo,殻長7.5mm。パラタイプNo.2, NSMT-Mo,殻長6.3mm。パラタイプNo.3, NSMT-Mo,殻長7.1mm。パラタイプNo.4, NSMT-Mo,殻長10.3mm。パラタイプNo.5, NSMT-Mo,殻長7.6mm。パラタイプNo.6, NSMT-Mo,殻長8.0mm。パラタイプNo.7, NSMT-Mo,殻長8.6mm。パラタイプNo.8, NSMT-Mo,殻長8.6mm。タイプ産地:小笠原群島巽出(父島と母島の中間海域),水深180m。分布:鹿児島県沖,沖縄近海,スミス列岩,小笠原群島巽出。水深180-300m。寄生宿主:アカサンゴCorallium japonicum Kishinouye。
  • カロモン P., スナイダー M.A.
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 19-47
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    このシリーズの3報目として,日本産ナガニシ属のさらなる9種類の再検討を行った。Fusinus akitai Kuroda & Habe, 1961ギボシナガニシ ナガニシ属の種類の多くは,成熟サイズにばらつきがあるが,本種も同様で,検討個体の平均は殻長116.7mm,最大個体は173.4mmに達する。日本産の同属種の中では, Fusinus ferrugineus (Kuroda & Habe, 1960)コナガニシやFusinus perplexus (A. Adams, 1864)ナガニシに近似するが,殻幅が太く,水管が短く,体層や次体層の周縁が円く縦肋がしばしば消失することや,成熟しても外唇内側が刻まれないことで区別される。分布は日本列島太平洋岸の遠州灘から土佐湾までに限られる。なお,本種は波部図鑑(保育社,続原色日本貝類図鑑)において新種記載されているが,図示されている標本は「模式標本」の計測値と合わず,ホロタイプの特定には更なる調査が必要である。Fusinus crassiplicatus Kira, 1959フトウネナガニシ 日本産ナガニシ属の中では特徴的な種類であり,成熟しても小型であること,殻が細長く,肩角の発達が弱いこと,体層でも縦肋が顕著で,殻口外唇内側が畝状に刻まれることで他種から容易に区別される。分布は相模湾から土佐湾までの日本列島太平洋側。近年ベトナムからも本種が報告されているが,詳しい記載や図がないので確認できない。Fusinus gemmuliferus Kira, 1959カゴメナガニシ 日本産の他のすべてのナガニシ類に比べて,成熟サイズが明らかに小さいこと(検討した6個体の平均殻長84.2mm),およびよく膨らんだ螺層にGranulifususアラレナガニシ属の種類に似た格子状の彫刻を持つことで区別される。本州太平洋岸の紀伊半島から土佐湾を経て九州東部までに分布。Fusinus nodosoplicatus (Dunker, 1867)コブナガニシ これまで図鑑や様々なコレクションの中で最も頻繁に誤同定されてきた種類の一つであるが,形態は比較的安定している。同所的に出現する近似種の中では,まずナガニシとは肩角が著しく強く,そこで二角の瘤状となる縦肋が体層まで顕著であること,水管が太く,成熟しても殻口内に襞ができないことで区別できる。またFusinus salisburyi Fulton, 1930イトマキナガニシとは,小型で肩が強く,縦肋が体層でも消失せず,特徴的な偽臍孔が形成されないことで容易に区別される。本種は紀伊半島以南の太平洋側と,山口県以西の日本海側,及び朝鮮半島南部を含む東シナ海に分布する。国内の図鑑でしばしば用いられるF. grabaui Kuroda & Habe, 1952は本種の異名である。Fusinus penioniformis Habe, 1970ペニオンナガニシ 日本産ナガニシ属の中では最も稀な種類で,博物館や個人コレクション中に含まれる標本は極めて少ないが,それでも日本産の近似種とは明瞭に異なる。サイズが同様であるギボシナガニシとは,殻がもっと細長く,周縁が著しく角張り,そこに先端がキール状となった縦肋が並ぶことで,また,ナガニシとは小型で周縁が明らかに角張り,成熟しても殻口内唇が刻まれないことで区別される。本種の分布は限られており,調査したすべての標本は四国の南西部,特に沖ノ島近海から得られている。 Fusinus colus (Linnaeus, 1758)ホソニシ 本種はインド・西太平洋に広く分布し,多くの形態変異を示すが,日本周辺では2型が見られる。一つは西太平洋に広く分布する模式的な型で,国内では沖縄から土佐湾西部に分布する。もう一方は, F. longicauda (Lamarck, 1801)として知られる型で,九州西岸の東シナ海から台湾,ベトナムおよびフィリピンに分布する。両型はいずれも細長く,螺層の膨らみが強く,縫合が深く,螺層上部では縦肋が顕著という特徴を共有するが,模式型は体層でも縦肋が顕著で,螺層上部が褐色を帯びる場合が多いのに対して, F. longicauda型は全体が白色で,体層では縦肋が消失することで異なる。しかし,両型はフィリピンで連続すること,および色彩や縦肋の強さは種レベルの分類の指標にならないことから,同一種内の表現型と見なすのが適当である。Fusus toreuma Deshayes, 1843はしばしば本種の異名とされるが,奥谷・土屋(2000)は別種として扱っている。しかし,図示された標本は実際にはフトウネナガニシであり, F. toreumaの実態は明らかでない。 Fusinus tuberosus (Reeve, 1847)ミクリナガニシ Fusinus nigrirostratus (E. A. smith, 1879)ツバクロナガニシ(=サガミナガニシ) ミクリナガニシ,ツバクロナガニシおよびFusinus sagamiensis Kuroda & Habe, 1971サガミナガニシの関係については,これまで見解が一定していなかった。例えば,波部(1987)はこれらを亜種とし,奥谷・土屋(2000)は同一種内の型(form)と見なしている。ミクリナガニシとツバクロナガニシは,前者が潮間帯から水深10m程度,後者が潮下帯から水深200m以深と一部垂直分布が重なる上に,形態に一定の違いが認められるため,別種とみなすのが適当である。両者の違いとして,ミクリナガニシの方が水管が短く,水管溝は殻口近くでより広く開くこと,ツバクロナガニシの方が縦肋が強く,肩では螺肋と交わり強くキール状となる反面,縦肋間の成長脈はミクリナガニシの方が粗く,螺塔上部では螺肋と交わってやや格子状となることなどが挙げられる。一方で,ツバクロナガニシとサガミナガニシは,典型的なものでは異なるように見えるが,中間型が存在し,明瞭に区別できないことから種内変異(表現型)と考えられる。なお,これらの種類は特徴的な毛状の殻皮を欠くことで,同属の他種と異なる。 Fusinus nicobaricus (Roding, 1798)チトセボラ やや形態に変異は見られるが,他のナガニシ類とは明らかに異なり,混同されることはない。本種はインド・太平洋海域に広く分布し,北は日本の紀伊半島,南はオーストラリア,東はハワイ列島,西は東アフリカまで及ぶ。Fusus laticostatus Deshayes, 1830はしばしば本種の異名とされるが,形態に一定の不連続な違いが認められ,また南インドとスリランカにのみ分布することから,別種と見られる。(編集幹事注:本文では「和名との対応は本論文の目的でないため,それぞれの種類に対して和名は吟味しない」としているが,日本の研究者の便宜を図るため,和文要旨を作成するにあたって過去の慣用に基づいて和名を充てた。)
  • 奥谷 喬司, 宮崎 淳一
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 49-55
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1992年に深海潜水調査船「しんかい6500」によって鳥島海山の水深4037mで発見されたニタリクジラの遺骸を2005年再訪して調査した。その鯨骨上に優占的に固着群生しているイガイ科の貝類を研究した結果,形態上からも,また分子情報からもBenthomodiolus属の未記載種と思われるのでBenthomodiolus geikotsucola n. sp.ゲイコツマユイガイ(新種)の名を与え記載した。本種の殻は浅海の鯨骨に付くヒラノマクラAdipicola pacificaや沈木に付くツマリキザミバマユイガイIdasola washingtoniaに似るが,交板上に刻みめがなく,筋肉系の配置が異なる。本属にはこれまで沈木に付くB. abyssicolaとB. lignocolaの2種が知られているが,それらとは殻皮毛と放射線状彫刻を欠くこと及び後部足糸牽引筋束が著しく長く,その左右束が極めて接近して走る点で既知種と区別できる。本種は今のところ鳥島海山の鯨骨(水深4020-4036m)からしか採集されていない。
  • 橋本 惇, 古田 真紀子
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 57-68
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    Bathymodiolus manusensis n. sp.マヌスシンカイヒバリガイ(新種) 殻は大型でやや厚く硬質であり,膨らみは中庸で,殻頂は殻の前縁から11〜18%後方に位置する。殻の前縁はやや狭いが丸く,背緑は僅かに膨らみ,後背隅は幾分角張る。腹縁はやや窪み,後腹縁は丸い。そして,殻高/殻長比は0.40〜0.55とやや細長い。靭帯は後位,強く,殻頂から後背隅までの約70%で,後部は截断状。筋痕は明瞭。前閉殻筋痕は卵形で殻頂の前に位置する。後閉殻筋痕は丸みを帯びた不等辺四角形,後足糸牽引筋後束筋痕と繋がり一つの筋痕を形成する。前牽引筋痕は殻頂腔の前端で側面から観察可能。後足糸牽引筋痕は長円形で高位,靭帯長の前から約65%。套痕は明瞭,中央部が僅かに窪む。外套膜の背側は薄いが,腹縁は厚く強い。外套内襞(inner mantle fold)は閉殻筋前縁から後縁までの腹側に沿って分離し,その中央部から後縁が襞状。櫛鰓は厚いが殻長の約70%の長さでやや小さめ。唇弁は非常に小さい。足は小さく平らで,殻長50mm以上の個体の足長/殻長比は0.22から0.30,殻長50mm未満の個体は0.30から0.38。前牽引筋は細長く,収足筋はやや太い。後足糸牽引筋は二分し,前束は太く短いが,後束は細く長い。水管弁膜は短く,狭く,薄く,乳頭状突起はない。消化管は心耳の前方で,背中側から見て反時計回りの小さいループを形成する。分布:パプアニューギニアのマヌス海盆の熱水噴出孔周辺の水深1627〜1900mのみから知られる。
  • 近藤 高貴, 梁 鉉, 崔 昇鎬
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 69-73
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    マツカサガイ属とオトコタテボシガイ属は日本固有属と見なされてきたが,韓国でこれらの属の新種が見つかったので,報告する。Pronodularia seomjinensis n. sp.ホソタテボシガイ(新種・新称)殻は長卵形で,膨らみは弱く平たい。中型で,通常は殻長10cmを越えない。殻頂はやや前方に位置する。殻表は平滑で,後縁は少し湾曲している。擬主歯は三角状で,左殻には2つ,右殻には1つある。幼生は亜楕円形で,腹縁に刺状突起はないが,幼生糸はある。ホロタイプ(韓国国立生物資源館,KB-149),殻長74.6mm,殻高44.0mm,殻幅24.4mm。パラタイプ5個体(KB-150-151およびNSMT-Mo73716-73718)。タイプ産地:韓国,全羅北道任實郡,蟾津江。Inversiunio verrucosus n. sp. コウライシジラガイ(新種・新称)殻は卵円形で,膨らむ。やや小型で,通常は殻長7cmを超えない。殻頂は顕著に発達し,殻表は瘤状の模様に覆われる。擬主歯は三角状で,左殻には2つ,右殻には1つある。幼生は亜三角形で,刺状突起と幼生糸がある。ホロタイプ(KB-146),殻長50.0mm,殻高32.9mm,殻幅20.5mm。パラタイプ5個体(KB-147-148およびNSMT-Mo73719-73721)。タイプ産地:韓国,全羅北道任實郡,蟾津江。
  • 松原 尚志
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 75-83
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「ウスハマグリ」の学名にはPitar (Agriopoma) japonicum Kuroda & Kawamoto, 1956が用いられてきたが,この種名は,安藤(1953)によって神戸市垂水区の中部更新統「高塚山貝層」産の「ウスハマグリ」として記載されたPitar japonica Kuroda M.S.に先取されていることが判明した。ホロタイプおよびトポタイプに基づき再検討を行った結果, P. japonica Ando, 1953は真の「ウスハマグリ」ではなく, Paphia (Protapes)スグレガイ属ヨシズガイ亜属に属する別種であることが明らかとなった。したがって, P. (A.) japonicum Kuroda & Kawamoto, 1956はP. japonica Ando, 1953の一次新参ホモニムとなる。前者は「ウスハマグリ」の学名としてすでに広く受け入れられているが,後者は安藤(1965)により有効名として使われている。したがって,国際動物命名規約条23.9(先取権の逆転)は適用できない。これらのことから, Paphia (Protapes) japonica comb. nov. (和名:アンドウヨシズガイ:新称)を提唱するとともに再記載を行った。また, P. (A.) japonicum Kuroda & Kawamoto, 1956に対しては新置換名Pitar (Pitarina) Kurodai nom. nov.を提唱した。
  • 高田 宜武
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 85-97
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    九州天草の転石海岸において,ヒメコザラ個体群の密度とサイズ組成を,6年間にわたって観察した。ヒメコザラの密度は時間的空間的にバラツキがあるものの,中潮帯から低潮帯にかけて分布した。また,夏期に低密度,冬期に高密度となる季節変動を示したが,6年間の調査期間中は全体として増加傾向にあった。サイズ頻度分布は1〜3のピークをもつ単峰型もしくは多峰型を示した。サイズ頻度分布のコホート分離を行い,経時変化を見ることによって,コホートの加入と成長を推定した。新規コホート(殻長3-5mm)の加入は冬期におこり,8ヶ月で殻長10mmまで成長した。各コホートの寿命はバラツキが大きいが一年半以内であった。
短報
  • 佐々木 猛智, 中野 智之
    原稿種別: 本文
    2007 年 66 巻 1-2 号 p. 99-102
    発行日: 2007/07/31
    公開日: 2018/09/01
    ジャーナル オープンアクセス
    著者の一人佐々木が2004年に西表島の貝類を調査した際に,クサイロアオガイと思われるアオガイ属の1種を採集した。アオガイ類は日本列島の温帯域に多産する分類群であるが,琉球列島では稀である。この興味深い標本を形態およびミドコンドリアDNA(12S,16S,COI)の両者から検討した結果,西表産の標本はクサイロアオガイに確実に同定されることが確認された。この産地は従来知られていたクサイロアオガイの南限(慶良間列島渡嘉敷島)から約370kmも離れて孤立しており,分布の最南端記録である。本種がどのような経路を経て西表島に到達したかという点は大変興味深い問題であるが,今後の検討課題である。
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