Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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67 巻, 1-2 号
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原著
  • P. カロモン, M. A. スナイダー
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 1-13
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    このシリーズの4報目として,日本産ナガニシとして記録されている有効なタクソンであるFusinus longissimus (Gmelin, 1791) ダイオウナガニシについて記述するとともに,黒田が「ゆめ蛤」の記事の中で仮の学名を与えていたが,これまで適格となっていなかった2タクサを新種として記載した。
    Fusinus longissimus (Gmelin, 1791) ダイオウナガニシ(木村,1997)
    殻はナガニシ属としては非常に大型(最大殻高 337 mm),堅固であるが殻質は薄く軽い。螺層の周縁はやや角張り,その上に丸く大きな瘤が並ぶ。殻表は細い螺脈で被われるが,周縁の疣の上では2~3本の強い螺肋となる。殻口は卵形で外唇肩部の疣に当たる部分がやや角張る。内唇の滑層はやや薄く,弱く板状となる。水管は長く,直線的。
    分布:国内では小笠原諸島,紀伊半島と沖縄の伊江島から記録されているが稀である。海外ではフィリピン,台湾,ベトナム,及びニューカレドニアに分布する。
    付記:Gmelin (1791) の記載の基になったChemnitz (1780) の図示標本の所在は不明であるが,図は種類の同定に問題ないため,この標本をレクトタイプに指定した。
    本種はナガニシ属の中の最大種の一つであり,十分に成長した個体では,その大型のサイズと軽い貝殻,及び特徴的な周縁の疣列から他種と容易に区別される。日本産の種類の中でこれに近いサイズになるものとしては F. salisburyi Fulton, 1930 イトマキナガニシがあるが,後者は貝殻が厚く,螺層の膨らみと螺肋が強く,内唇が板状に発達することで明瞭に異なる。F. colus (Linnaeus, 1758) ホソニシも時に大型となることがあるが,より細長く,水管も長くより大きく曲がる。
    Fusinus teretron n. sp. イボウネナガニシ(黒田,1949)
    貝殻はこの属としては中型(最大 155.7 mm,平均 112.5 cm)。螺塔は細く殻頂に向かって緩やかに細まる。螺層上部には太く,間隔の広い螺肋があり,周縁は角張る。各螺層には4~6の一次螺肋があり,各螺層上部では体層に向かうにつれて細い間肋が現れる。螺塔下部では縫合の上の螺肋は弱まる。体層では縦肋は周縁でやや突出して疣状となり,螺肋と交差して角張る。殻口は卵型,外唇内側には螺条を持ち,これによって殻口縁は刻まれる。軸唇滑層は明瞭で,水管側 2/3 で板状となる。水管は細く,緩やかに湾曲する。殻色は汚白色で,微細な毛を生やした薄茶色の薄い殻皮を被る。
    タイプ産地:「紀伊」。
    タイプ標本:ホロタイプ,大阪市自然史博物館OMNH8026(吉良コレクション)。
    分布:本種は現在のところ本州中部太平洋岸の,小笠原諸島・房総半島~紀伊半島西部と,土佐湾の二つの海域から知られており,生息深度は40~200 mの範囲である。
    付記:本種に対して,黒田(1949)は「ゆめ蛤」の記事の中で本和名とともに F. anguliplicatus の学名を提唱しているが,この学名はその後今日まで適格となっていなかった。様々なコレクション中に標本が見られることから,本種は稀な種類ではないと考えられるが,図鑑や論文中では誤って同定されてきた。例えば,木村(1997: pl. 1, figs. 5, 6)は本種を「F. beckii (Reeve, 1848) サイヅチナガニシ」に,奥谷・土屋(2000: pl. 255, fig. 34)は「F. nodosoplicatus (Dunker, 1858) [sic! =1867]コブナガニシ」に同定している。これらのうち,F. beckii (Reeve, 1848) は国内に分布していない(本シリーズ第5報参照)。一方,コブナガニシの変異型の中には本種と近似するものもあるが,本種はより貝殻が薄く,コブナガニシに特徴的な肩の瘤列を欠き,より細かい縦肋と細い螺塔を持つことで区別される。F. perplexus (A. Adams, 1864) ナガニシは,分布域が重なり,サイズも近似しているが,本種の方が初期螺層の周縁が角張り,螺塔が高く,より細かい縦肋を持つことで明瞭に区別される。
    Fusinus amadeus n. sp. コブシナガニシ(黒田,1949)
    貝殻はこの属としては中型(最大 114.9 mm,平均 93.4 mm),薄質で軽く,体層はいくぶん洋ナシ型。螺層の周縁は円く,縫合で斜めに接する。螺層上部では縫合まで連続する多数の強い縦肋があるが,体層に近づくにつれて弱まって疣列となるか,全く消失する。初期螺層には5~6の強い螺肋があり,徐々に間肋が強まって次体層では9~10本となる。殻口はアーモンド形で内面は光沢が強い。外唇は成貝でも薄く,皺状となる。軸唇滑層は薄い。水管の長さは中庸で,通常やや直線的,先端に向かって徐々に細まるが,個体によっては末端側1/3で急激に細まることもある。殻色は汚白色で,胎殻付近が淡く褐色に染まることがある。殻皮は淡褐色で薄い。
    タイプ産地:高知県沖,土佐湾。
    タイプ標本:ホロタイプ,西宮市貝類館 NCKG007793(黒田コレクション)。
    付記:本種も黒田(1949)によって未記載種であることが認められていたが,今日まで記載されていなかった。「ゆめ蛤」の記事や,標本のラベルに記された学名から判断して,黒田は本種に Fusinus grabaui の名前を用意していたことが明らかであるが,この学名は後に別タクソン F. grabaui Kuroda & Habe, 1952 に用いられており,後者は本シリーズ第3報の中で F. nodosoplicatus (Dunker, 1867) コブナガニシの表現型とみなされている。従って,本種に新たな名前を与え新種として記載した。
    本種は,日本産のナガニシ属の種類の中で,洋ナシ型の殻形と薄い貝殻を持つことで,F. akitai Kuroda & Habe in Habe, 1961 ギボシナガニシに似るが,本種の方が小型で,螺管の膨らみが弱く,より顕著な縦肋を有することで区別される。海外の種類では,南オーストラリアに分布する F. pyrulatus (Reeve, 1847) が本種に最も近似するが,本種の方が縦肋がより角張り,螺層上部で肋間が広いことや,水管が細いことなどで区別できる。なお,Iredale (1924) はこの F. pyrulatus を単一模式として新しい属 Propefusus を立てているが,Fusinus ナガニシ属と形態的に区別できず,後者の異名とみなされる。
  • H. H. ダイクストラ, R. G. モーレンビーク
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 15-26
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    インドネシア,東カリマンタン,ベラウ諸島の周辺のサンゴ礁から採集されたイタヤガイ上科の貝類を分類学的に調べた結果,19種類(ワタゾコツキヒガイ科4種,イタヤガイ科15種類)を認めた。これらのうち3種は未記載種であり,その2種類を新種として記載した。また,Pascahinnites coruscans coruscans (Hinds, 1845) ヤガスリヒヨクとPalliolum minutulum Dijkstra & Southgate, 2000の2種類はインドネシアから新記録となる。
  • 芳賀 拓真, 加瀬 友喜
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 27-40
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本及びフィリピンの水深 50 ~ 180 m から回収された軟らかい泥岩中より,スズガイ亜科の新種が発見された。本種は後閉殻筋の付着部位に突出した棚状構造(buttress)を欠くことから Pholadopsis トゲスズガイ亜属に分類され,1)小さい殻サイズ(附属板を含め殻幅 14 mm 以下)と,2)微小な棘が密生した球形の殻,3)後方に向かって急激かつ深く落ち込む右殻の殻体前区,4)5 ~ 12本のかぎつめ状の棘を備えた水管板(siphonoplax),そして 5)局所的な赤色の色素をもつ水管基部の外套膜襟によって特徴づけられる。本亜属には世界中から5種が知られ,本種はそのうち東大西洋の陸棚域から記載された Jouannetia (Pholadopsis) uncinata に最も類似するが,水管板後端の棘の形と数,そして休止板と中板の表面彫刻が異なる。従って,本種を Jouannetia (Pholadopsis) spinosa n. sp. フカミトゲスズガイ(新種・新称)として記載する。トゲスズガイ亜属は西太平洋において,J. (P.) globulosa トゲスズガイのみが知られているが,棲息水深が大きく異なり,本種のほうがより深い深度に分布するうえ,分子系統学的にも異なることがわかった。また,これまでスズガイ亜科の中板(mesoplax)は1枚から構成されると考えられてきたが,基本的には1対2葉からなる可能性が指摘された。
  • 山崎 友資
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 41-52
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    津軽海峡より採集されたシャクシガイ科の新種を記載する。ホロタイプは2003年に津軽海峡北海道側大陸斜面から採取され,その後,2006年に北海道大学水産学部練習船うしお丸がおこなった津軽海峡本州側大陸斜面の底生生物群集の調査からも確認した。本種はAllen & Morgan (1981) の分類に従って,シャクシガイ属 Cuspidaria Rhinoclama 亜属に分類される。しかし,最近の研究では Rhinoclama 亜属を属として扱う傾向があること(Krylova, 1994; Coan et al., 2000; Marshall, 2002; J. Poutiers, pers. comm.,2007),さらに Rhinoclama 亜属の嘴部形態を比較・検討したところ3グループに分類できることから,著者は Rhinoclama を属として扱った。以下に,3グループの特徴と所属する種を記述する。
    1) brevirostris species-group (= Austroneaera 亜属):嘴部の発達は微か。所属する種は abrupta, aupouria, brevirostris, brooki, dorsirecta, finlayi, raoulensis, similis, tangaroa
    2) alta species-group (= Rhinoclama 亜属の1部分):嘴部は直線的に発達する。所属する種は alta, dubia, halimera, semistrigosa, testai
    3) adamsi species-group (= Rhinoclama 亜属の1部分):嘴部は上を向く。所属する種はadamsi, benthedii, filatovae, nitens, notabilis, rugata, simulans, teres, tsugaruensis n. sp., valdiviae
    現在,以下の3種については,分類学的位置づけが不明確なため,これら3グループには含めない; imbricata, semipellucida, trailli
    土田・黒住(1996)によって岩手県大槌湾中央部から Rhinoclama sp. として無図版で報告された種類(CMB-ZM 114012)は,本種と同一種であることが判明したので,この標本もパラタイプに指定した。
    ウシオシャクシガイ(新種・新称)Rhinoclama (Rhinoclama) tsugaruensis n. sp.
    貝殻は本属としては小型,殻長は 5.87 mm,球形,膨らむ,滑らか,白褐色。嘴部は短く,上を向き,新鮮な標本では,淡い黄色の殻皮をかぶる。成長線は共心円状で弱く,嘴部に向かうにつれて強くなる。殻頂は中心より外れ,後ろに傾く。原殻1はおおよそ 200 μm,楕円型で滑らか。原殻2はおおよそ10 μm,滑らか。前縁は丸く,滑らかに縁取られる。前腹縁は弱く膨らむ。嘴状部には2つの稜角があり,背稜角はたいてい背縁と平行で,腹稜角は殻頂から腹縁の後部境界へ斜めに走る。背稜角はたいてい不明瞭であるが,明瞭となるものもある。右殻には明瞭な前鉸歯と背鉸歯があり,内部の腹縁は,左殻の狭い腹縁と一致して重なる。左殻には前鉸歯も背鉸歯もない。内部の外套痕は広く湾曲し,深く凹み,深い部分でさらに凹むことで特徴付けられる。貝殻は膨らみ,後部は平坦で両殻の境界は,腹縁の共心円状の成長線によって区別できる。
    和名のウシオは,北海道大学水産学部練習船うしお丸に由来する。学名の tsugaruensis は,採集地の津軽海峡に由来する。
    タイプ産地 : 津軽海峡北海道側斜面水深 25 m。
    分布 : 津軽海峡北海道側斜面水深 25 m ~本州側斜面 80 m ~200 m。岩手県大槌湾中央部水深 52 m ~55 m。
  • 黄 重期, 呉 書平, 大原 健司, 大谷 洋子, 大谷ジャーメン ウィリアム
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 53-60
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    黒田コレクションに収められている台湾産陸貝は,台湾における陸産貝類相の最も重要な部分を構成している。黒田徳米博士により記載された35の新および既知種群の内,22種については,タイプが既に目録化および図式化されている。本稿ではさらに,Diplommatina dandanensis Kuroda, 1941, Diplommatina karenkoensis Kuroda, 1941,Gastrocopta ooi Kuroda, 1941,Thaumatoptyx crassilamellata (Kuroda, 1941),Reinia eastlakeana tayalis Kuroda, 1941,Otesiopsis taiwanica (Kuroda, 1941),Plectopylis ishizakii Kuroda, 1941,Satsuma nux sericata (Kuroda, 1941),Satsuma succincta rubrotincta (Kuroda, 1941), および,Aegista taiwanica Kuroda, 1941の10種のタイプ系列を明らかにし,残り3種を追跡不可能とする。また,ここに掲げるゴマガイ2亜種については,種に格上げする。
  • 小林 収, 近藤 高貴
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 61-71
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Age determination of Margaritifera laevis was carried out in the Chubu-Nougu River, at Omachi in Nagano Prefecture, Japan. There were many juvenile mussels in the brook of Chubu-Nougu River. The relationship between age and shell length in juvenile mussels was investigated. In juvenile mussels, the annual rings on the shell surface roughly indicated the true age, but the rings of the ligament did not. Therefore, it is suggested that the growth rings of the ligament should not be used in age determination of juvenile mussels.
  • 西脇 三郎, 升 秀夫, 花輪 俊宏
    原稿種別: 原著
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 73-80
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Abnormal changes in reproduction such as a female-biased sex ratio or melanism and atrophy of the testis have been observed in Sinotaia quadrata histrica in Lake Kasumigaura, middle Japan. These changes are thought to have been induced by water pollution. In order to examine the possibility of abnormal changes of reproduction in females, we studied changes in the number of shelled embryos in the brood pouch between different seasons and regions. Females examined were collected at four sites (Ogawa, Ishida, Hasugawara, and Takayama) within the lake and at a fish farm on the lakefront as a control once a month from April 2001 to March 2002. At each collection, about 20 females were selected at random and the number of shelled embryos in the brood pouch was counted. The average number of shelled embryos during a year was 14.1 at the fish farm and 5.9 to 9.9 at the four lake sites. A clear seasonal difference between spring-summer and autumn-winter was observed at the fish farm, but only a slight difference at Ishida and Hasugawara, and no differnce at Ogawa and Takayama. In autumn-winter, the average number of shelled embryos at the fish farm was significantly different from those at Ogawa, Ishida and Takayama. These seasonal and regional differences between the fish farm and four sites in the lake suggest the possible effect of changes in environmental conditions such as water pollution.
短報
  • 大和田 正人
    原稿種別: 短報
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 81-84
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    熊本県水俣湾に生息するコマルキクメイシPlesiastrea versipora から日本初記録のイガイ科穿孔性貝類である Leiosolenus simplex (Iredale, 1939)(マメイシマテ・和名新称)が採集された。本種は生きたサンゴにのみ穿孔し,殻長 20 mm,殻幅7 mm を超える個体は少ない。殻形は円筒形であり,殻表の沈着物(二次殻)はチョーク状で薄く,後縁から突出しない。
    本種がコマルキクメイシに穿孔することは本稿で初めて報告された。コマルキクメイシは1950年以前から水俣湾に生息しているが,本種が穿孔するようになったのは1996年以降である。これらのことから,現在の水俣湾の環境が本種の生息に適していること,この12年間で本種がコマルキクメイシに穿孔できるように適応した可能性が示唆される。
    シギノハシガイ属 Lithophaga は二次殻の有無に基づいて2つのグループに区別され,それぞれのグループは異なる系統を持つことが知られている。本稿では二次殻を持つグループをイシマテガイ属 Leiosolenus として記載した。
  • 淤見 慶宏
    原稿種別: 短報
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 85-88
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    房総半島,三浦半島,紀伊半島沖の水深 15 ~70 mで発見されたベケリケボリ属の 1 種の貝殻形態,軟体部外部形態,歯舌を精査したところ,新種であることが確認されたので,クロマルケボリ(黒丸毛彫)Primovula panthera n. sp.(新称)として記載する。本種はトガリアヤメケボリ P. cuspis に近似するが,殻の丸みが強い点,後端が半円錐形に尖る点,腹面が膨らみ老成しても殆ど滑層に覆われない点,軸襞が形成されない点,滑層瘤が小型な点,末端襞がねじれ斜めに長く発達する点,殻両端が橙色に彩色されない点など殻形態から区別される。また,外套膜や足部が黄色地に黒斑が散る彩色となり,触角が黒色で先端が白色になるなど軟体部からも区別される。歯舌形態も異なり,中歯は歯先数が少なく,中心の大歯尖を対称にして左右均一に小歯尖が形成される点,内・外縁歯の先端が指状に膨らむ点で異なる。本種はベケリケボリP. beckeri にも似るが,外唇が幅広い点,外唇歯が粗い点,内唇縦溝と軸唇窩が発達する点,後水管溝が後端に向かって斜め左方向に開口する点,背面に白色横帯が入らず,前後端も橙色に彩色されない点で異なる。
    タイプ標本:ホロタイプ,NSMT-Mo 76772,殻長 8.3 mm。
    タイプ産地:千葉県富津市明鐘岬沖,水深 15-20 m。
    分布:房総半島,三浦半島,紀伊半島沖,水深 15-70 m。
    寄生宿主:ウミトサカ科ミナベトサカ属の 1 種。
  • 伊藤 寿茂, 田中 俊之, 今井 啓吾
    原稿種別: 短報
    2008 年 67 巻 1-2 号 p. 89-91
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    神奈川県中央部を流れる相模川の河川敷内の池に生息するドブガイ類のグロキディウム幼生の宿主となる魚種を調べるために,生息地においてグロキディウムの寄生を受けていると想定される4魚種(ヌマチチブ,ウキゴリ,ドジョウ,シマドジョウ)を採集し,実験水槽内で継続飼育して,魚体から離脱してきた幼生を観察,計数したところ,ヌマチチブとウキゴリの2種より,変態を終了させた稚貝が得られた。当実験における全離脱数に占める稚貝の出現率はヌマチチブで65.1%,ウキゴリで71.4%であった。試供魚の個体数の少なさや自然下での幼生の寄生状況などの不確定要素があるため正確な変態成功率は再考の余地があるものの,当地には従来ドブガイ類の宿主として知られるヨシノボリ類などがほとんど生息しないため,これら2魚種が当地のドブガイ類にとって重要な宿主として機能している可能性が示唆された。
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