Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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67 巻 , 3-4 号
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総説
  • 藤田 祐子, 松本 寛人, 藤原 義弘, 橋本 惇, S. V. ガルキン, 上島 励, 宮崎 淳一
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 123-134
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
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    シンカイヒバリガイ類(Mytilidae, Bathymodiolinae, Bathymodiolus)は化学合成生物群集の主要なメンバーである。シンカイヒバリガイ類の進化と起源を明らかにするため,近縁なイガイ類とともにミトコンドリア COI 遺伝子の塩基配列から系統関係をレビューした。シンカイヒバリガイ亜科は 4 つのグループに分かれ,シンカイヒバリガイ亜科もシンカイヒバリガイ属も単系統群ではなかった。鯨遺骸や沈木から得られたイガイ類の多くはシンカイヒバリガイ類の外群となり,浅海のイガイ類はさらにその外側に位置した。この結果は,シンカイヒバリガイ類の祖先が海底の鯨遺骸や沈木を利用して浅海から深海に適応したとする“飛び石仮説”を支持した。
原著
  • 長谷川 和範, 中山 大成
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 135-143
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
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    稲田陽氏が能登半島沖日本海の蟹籠漁労屑より採集したイトカケガイ科不詳種を検討した結果,Yokoyama (1926) が佐渡島沢根層からトウガタガイ科の一種として記載した種類に同定されることが明らかになった。また,過去の文献調査の結果,これまでキリガイダマシ科のユキノキリニナ,もしくはTachyrhynchus sp.として日本海中部の漸深海帯から報告されていた種類も本種であることが分かった。タイプ標本及び現生標本に基づいて再記載を行い,これに関して日本海の上部漸深海帯の固有貝類相の起源に関する議論も行った。
    Acirsa morsei (Yokoyama, 1926) イナダイトカケ(新称)
    殻高は最大 20 mm 内外,細長い円錐形で白色,薄質であるがやや堅固。現生個体では,胎殻は通常失われ,二次的にドーム状のカルスにより閉じられる。佐渡沢根層の化石であるホロタイプでは胎殻は完全に保存されており,1.5 層で幅 730 μm,平滑で成殻との間はやや強い成長脈で区切られる。後成殻は殻頂の欠損部分を除き 5 ~ 6 層からなり,螺層のふくらみは強く縫合は深いが,螺層間は乖離しない。各層に 5 条の太い螺溝をもち,その間は溝状となる。螺肋とその間の溝の幅の比率は個体によって大きく異なる。縦肋はなく不規則に成長線を生じるのみ。底盤は丸く周縁部はキールにならない。臍孔は閉じる。蓋は角質で薄く,少旋形。
    分布:日本海中部日本沿岸の兵庫県但馬沖,能登半島沖,佐渡および新潟県沖,水深 121 ~ 326 m。
  • K.フラウゼン , 知野 光雄
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 145-157
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
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    Golikov & Sirenko (1988) は,Bathybuccinum フカミエゾバイ属(和名新称)を新設した際に,殻形,螺層彫刻,殻皮等の相異により Bathybuccinum フカミエゾバイ亜属と Ovulatibuccinum マルミエゾバイ亜属(和名新称)の 2 亜属を設け,B. (B.) unicordatum ヒモマキフカミエゾバイ(和名新称),B. (O.) bicordatum フタマキフカミエゾバイ(和名新称),B. (O.) fimbriatum フサマルミエゾバイ(和名新称)の 3 種を記載した。その後,Kantor & Harasewych (1998) はアリューシャン列島より B. (O.) clarki ソコエゾバイを記載した。この度,著者らは岩手県沖日本海溝,福島県相馬沖及び鹿児島県南西沖より得られた標本を検討した結果,螺肋と殻皮の状態の一貫した違いから Ovulatibuccinum を独立した属に格上げした上で,両属に含まれる 3 新種を認めたので記載する。
    Bathybuccinum higuchii n. sp. ムツフカミエゾバイ(新種・和名新称)殻は小型,薄弱,半透明白色,卵形,体層に明瞭な 3 螺肋があり,肋間を螺脈が巻く。殻皮はオリーブ色で顕著,螺肋周辺では縦肋状に毛立ち,水管溝は広い。B. bicordatumB. unicordatum 両種に似るが螺肋,殻皮の特徴が異なる。種名は仙台市在住の樋口滋雄氏に献名,和名は陸奥沖からの採集に因む。
    Bathybuccinum yadai n. sp. ヤマトフカミエゾバイ(新種・和名新称)殻は小型,淡褐色,一部群雲状の褐色となる。規則的で細かい螺脈が巻き体層上に顕著な竜骨状の螺肋 2 本がある。水管溝は狭い。B. bicordatumB. unicordatum に似るが,竜骨状の螺肋,等間隔の多数の細螺脈が明瞭なことで異なる。種名は天草市在住の矢田正海氏に献名,和名は戦艦大和沈没地点からの採集に因む。
    Ovulatibuccinum perlatum n. sp. シラタママルミエゾバイ(新種・和名新称)殻は卵形,黄褐色,薄い殻皮を被る。微細な多数の螺脈と縦肋により顆粒状となる。水管溝は広い。O. ovulum (Dall, 1895) マルミエゾバイ(和名新称),O. bombycinum (Dall, 1907) ウスカワバイに似るがより幅広,短小で胎殻が大きく,細長三角形の蓋があることで異なる。種名は真珠の丸さ,和名は真珠の古称に拠った。
  • P. カロモン, M. A. スナイダー
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 159-172
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
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    このシリーズの締めくくりとして,今日まで既知の種類に同定されていなかった 2 つの型について検討した結果,ナガニシの種内変異と結論づけた。また,未記載と考えられる 1 種について図示し,その類縁について考察した。さらに,過去の文献で誤ってナガニシ属に含められた,もしくは日本から報告されたタクサについて,タイプ標本の検討に基づいて考察を行った。
    Fusinus perplexus A. Adams, 1864 ナガニシ
    本論文で示した日本海産の小型の個体は,当初独立した種類であると考えられたが,同じ海域から得られた大型の個体と合わせて比較した結果,典型的なナガニシと連続的であることが明らかになった。本種の色彩に関して,内湾や日本海に産するものは太平洋の外洋の個体に比べて濃色となる傾向がある。一方,有明海産の個体は,第 1 報で図示した東京湾産の濃色個体に近似するが,この種類としては異例に小型である。また,多くの日本産ナガニシ類が潮下帯に生息するのに対して,添付データによればこれら有明海産の個体は低潮線付近から採集されていることでも特異である。
    Fusinus sp.
    和歌山県御坊沖から得られた 1 個体は,これまで知られているいずれの種類にも確実に同定できず,未知の種類と考えられる。しかし既知の種類の中では F. gemmuliferus Kira, 1959 コブシナガニシに最も近似し,その著しく幅広い個体の可能性もある。
    日本産から除外される種類
    Fusinus beckii (Reeve, 1848)
    原記載にはタイプ産地は示されていない。図示された 2 個体のうちの最初の個体をここでレクトタイプに指定した。この標本に添付されていた紙片には「Van Diemen’s Land(通常タスマニア,時に北オーストラリアの地名として用いられる)」と記されていたが,標本の取り違いの可能性がある。Tryon (1881) は本タクソンを F. nicobaricus (Röding, 1798) の異名とみなし,後者の分布を「日本,フィリピン」とした。これによって,F. beckii の名前は日本の文献でもしばしば用いられるようになったが,実際のところ著者らが 2004年にロンドン自然史博物館からタイプ標本を再発見し,本論文でアンダマン諸島から得られた別の個体を報告するまでその実体は不明であった。F. beckii は国内の文献ではサイヅチナガニシの和名とともに用いられることが多いが,例えば木村(1997)がこの和名と学名の組み合わせで図示しているものは Fusinus teretron Callomon & Snyder, 2008 イボウネナガニシである(第 4 報参照)。
    Fusinus loebbeckei (Kobelt, 1880)
    本種も原記載にタイプ産地が示されていない。後に Dunker (1882) は本タクソンと同一のタイプ標本に基づいて Fusinus lacteus を記載したが,その際に産地を「mare Japonicum」としている。ホロタイプの原ラベルには産地は記されておらず,Dunker が何故これを日本産とみなしたのか明らかでない。一方,Odhner (1923) は本タクソンを西アフリカ産の Fusinus albinus (A. Adams, 1856) の異名としており,我々もこの見解に同意する。
    Fusinus spectrum (A. Adams & Reeve, 1848)
    本種のタイプ産地は「Eastern Seas」とされ,Tryon (1881) は産地に日本を加えている。これに従って,平瀬 (1907) をはじめとして様々な文献やコレクションで日本産のナガニシ類にカドバリナガニシの和名と共にこの学名が用いられてきた。しかし,Hadorn (1996) は F. spectrum を東太平洋産の F. panamensis Dall, 1908の古参シノニムとみなし,我々のタイプ標本の検討もこれを裏付けた。F. beckii 同様,日本産の個体で本種に同定されたものは,実際にはイボウネナガニシなどであった(第 4 報参照)。
    Fusinus gracillimus (Adams & Reeve, 1838)
    本種のタイプ産地も「Eastern Seas」とされ,後に Adams (1864) は中国沿岸の黄海から,また黒田(1949)は日向灘から本種を報告している。しかし,今回の我々による日本および周辺海域産のナガニシの詳細な調査によって本種の存在は確認されていない。一方で,これに最も近似した種類はモザンビークとマダガスカルの沖合から得られている。
    その他の関連する種類について
    Chryseofusus Hadorn & Fraussen (2003) は Fusus chrysodomoides Schepman, 1911 をタイプ種として創設され,日本産の C. graciliformis (Sowerby, 1880) と C. satsumaensis Hadorn & Chino, 2005 もこれに含められている。Chryseofusus は当初ナガニシ属の亜属とされたが,我々はこれを Granulifusus などと同様にナガニシ亜科の独立の属とみなす。一方で,三浦半島から化石種として記載され,その後現生が確認されている Trophonofusus muricatoides (Yokoyama, 1920) フツツカナガニシは,少なくとも貝殻の特徴からはナガニシ属の種類である可能性が高い。また,Pseudolatirus pallidus Kuroda & Habe, 1961 シロヒメナガニシモドキも同様にナガニシ属に移される可能性が高いが,これらの正しい属位の決定のためには今後の詳しい解剖学的研究が必要である。
  • 窪寺 恒己, 奥谷 喬司, 小菅 丈治
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 173-179
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    漁船「幸宏丸」による試験操業中,2004年11月11日与那国島南東「サンゴ曽根」の水深 320m から釣獲したハマダイが吐出した外套長約 17 mm の小型のイカを精査したところ,Heteroteuthis ヒカリダンゴイカ属の未記載種と認められたので,Heteroteuthis ryukyuensis Kubodera, Okutani & Kosuge, n. sp. リュウキュウヒカリダンゴイカ(新種・新称)と名付けて記載した。
    西太平洋から知られる同属の他種と異なるところは: (1) 鰭は小さく,やや後位。(2) 腹楯の発達が著しくない。(3) 腕間膜の発達が悪い。(4) 雄第 3 腕に拡大吸盤があるほか,第4腕に巨大吸盤がある(左腕に残っているが,右腕にもあるかどうかは不明)。
  • 渡部 裕美, 藤倉 克則, 木下 吟, 山本 啓之, 奥谷 喬司
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 181-188
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    相模湾メタン湧水域に生息する大型のクダマキガイ科腹足類ツブナリシャジクの卵嚢を,DNA 塩基配列の比較に基づいて同定し,その形態と内容物を観察した。ツブナリシャジクの卵嚢は,半円型あるいは烏帽子型で半透明であり,ツブナリシャジク成体が群生する露頭のヘイトウシンカイヒバリガイ殻上に偏って分布していた。卵嚢は,長さ 10.81 mm,幅 5.31 mm,高さ 4.15 mm で,平均 1098 個の長径 230 μm,短径 160 μm の卵を含んでいた。ツブナリシャジクの卵嚢は,これまで報告されている寒冷域に生息するクダマキガイ科の卵嚢の中で飛び抜けて多くの卵を含んでいた。
  • 小林 収, 近藤 高貴
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 189-197
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    The timings of spawning and glochidial release of Margaritifera togakushiensis were investigated in the Sakasa River, Nagano Prefecture, Japan, from 2002 to 2007. For the years in which the water temperature in spring rose earlier and the snowfall was lighter, females spawned eggs and discharged glochidia earlier. In general, however, females started to spawn eggs in April when the water temperature reached about 4°C and started to discharge glochidia in May with the water temperature reaching about 10°C. The accumulated temperature of the water during the incubation period (from spawning to glochidial release) was about 180 day-degree. These results suggest that water temperature influences the timing of reproductive behavior of M. togakushiensis. The maximum fertility rates ranged between 44% and 58%. Most gravid females which were marked also spawned eggs the next year. During a three-day continuous observation in 2006, glochidial release was found mainly at dawn (4:00 – 6:00) and in the daytime (10:00 – 15:00) but not at night (20:00 – 4:00).
  • 秋山 吉寛, 岩熊 敏夫
    原稿種別: 原著
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 199-205
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    We verified the host fish species for the freshwater pearl mussel Margaritifera laevis and compared the distributions of M. laevis and its hosts in the Abira River in central Hokkaido. Among the six species and a mutant form of rainbow trout (Oncorhynchus mykiss), mussel glochidia were found only from the gills of the masu salmon (Oncorhynchus masou masou) with an infection rate of 84.2%. Some of the attached glochidia on the fish were well grown. Although O. mykiss belongs to the same genus as the masu salmon, glochidia did not parasitize O. mykiss including the mutant form. The distribution of masu salmon was limited to a 2-km reach in the upper third of the stream where the mussel was distributed. The result suggested that in the Abira River, most of the free-living glochidia had been flushed down to die without encountering their host fish.
短報
  • 松原 尚志
    原稿種別: 短報
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 207-208
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Hemifusus Swainson, 1840はインド - 西太平洋地域に分布するテングニシ科の属階級群名として知られてきた。最近,Hemifusus を不適格名とし,“Semifusus Swainson, 1840”を適格名とする見解が出されている。しかしながら,原記載を含む文献調査を行った結果,その見解は誤りであることが明らかとなった。
    Swainson(1840) による正しい原綴りは Hemifusus であり,Semifusus は Agassiz (1846) により提唱された不正な後綴りである。また “Semifusus Swainson, 1840” は慣用されていない。したがって,“Semifusus Swainson, 1840” は不適格名となり,Semifusus Agassiz, 1846 は Hemifusus Swainson,1840 の新参客観シノニムとなる。
  • 冨田 進
    原稿種別: 短報
    2009 年 67 巻 3-4 号 p. 209-211
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    山梨県南巨摩郡身延町遅沢の新第三系遅沢砂岩部層(最上部中新統あるいは最下部鮮新統)からタカラガイの化石が産出した。この化石は以下の特徴をもつ。殻は大型で洋梨型を呈し,前後端は吻状にやや突出し,螺頂は前方へ急に細くなる。背面は膨れ強く隆起する。最高頂部は全長の 1/3 ~ 2/5 の後方に位置するが,数値の幅はこの標本が地層中で圧力による変形を受けたためである。側縁は鈍い角をもつ。殻口は比較的広く,直線状を呈し,後部で左に曲がる。歯はやや弱く,26 ~ 27 歯が確認できる。全長は 51.8 mm,最大幅 32.5 mm,最大高 23.7 mm である。これらの特徴からニッポンダカラガイ近似種 Cypraea (Nesiocypraea) aff. langfordi (Kuroda, 1938) に同定した。現生種の分布と共産する軟体動物化石群集の解析から,堆積した当時は現在と同様に黒潮暖流の影響下にあったことが推定される。この標本は Nesiocypraea 亜属としては最も古い化石記録である。
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