Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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68 巻 , 1-2 号
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原著
  • P. Callomon, M. A. Snyder, R. G. Noseworthy
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 1-8
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    2007年2月に,韓国日本海側グムジン港の沖合い50~100 mに仕掛けられた刺し網によってまとまって採集されたナガニシ属の1種を分類学的に詳しく検討した結果,既知の種類とは種レベルで区別されることが明らかとなったので新種として記載した。
    Fusinus juliabrownae n. sp. コゲチャナガニシ(新種・新称)
    殻はこの属としてはやや小型(成貝の平均殻長63.4 mm,最大殻長84.3 mm),薄質で軽い。膨らみの強い紡錘形で水管が短い。螺塔上部の螺層には5対の明瞭な螺肋がある。各螺肋は2本の肋とその間隙部分からなり,また螺肋間には1~数本の間肋を有する。間肋は殻口に向かって徐々に強く,また数が多くなり,次体層や体層では螺肋とほぼ同じ強さになる。螺肋は次体層で21本,体層で50本。縦肋は丸みがあり,密にならぶ。殻口は木の葉形で,外唇側がより強く膨らみ,外唇は僅かに肥厚する。内唇縁は発達して,個体によっては体層から遊離する。殻は灰白色で,縦肋間が暗褐色となるのが一般的であるが,全体的に暗褐色となる個体もある。
    ホロタイプ:殻長70.6 m ANSP 419161。
    タイプ産地:韓国江原道グムジン港沖日本海, 37°39´3.08˝N,129°3´2.22˝E,水深50~100 m。
    備考:本種はナガニシFusinus perplexus (A. Adams, 1864)の種群に属し,既知の種類の中ではコナガニシF. ferrugineus (Kuroda & Habe, 1960)に最も近似するが,より洋ナシ型に近い殻形や,より短く溝が広く開いた水管をもつこと,各螺肋が2本の肋からなること,および体層周縁に鋭い角を欠くことで区別される。またナガニシの暗色個体にも著しく近似するが,螺肋の形態,より密に並ぶ縦肋,およびはるかに太く短い水管によって区別される。
    本種は最近の韓国の文献ではFusinus perplexus ferrugineus, Fusinus perplexus, Fusinus tuberosusとしてしばしば図示されていた。これらの情報に基づくと,本種は少なくとも韓国の南東部には広く分布しているものと見られる。
  • 濱谷 巌
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 9-14
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    新潟県の新川河口部南方の海域で林育夫氏(日本海区水産研究所)によってエチゴウミコチョウ属(新称)Enotepteron Minichev, 1967の一種が採集され,精査の結果本邦新記録属且つ新種と判断したのでこれを記載した。Enotepteronは左右の側足の外縁の後方にそれぞれ一個の小球体が附属することが外部形態の特徴である。
    Enotepteron hayashii n. sp. エチゴウミコチョウ(新種・新称)
    固定標本は翼足を拡げた状態で全形が約4×4 mm。頭楯の後方にかすかな橙赤色の縦の不連続線が3本あり,それらの1本は正中線上に,他の2本は両側に沿う。同色のかすかな色班が外套楯の表面にも散在し,背面後方の長い鞭状突起の先端をも染める。外套楯の背面は平滑,背面後方の正中線の僅か右寄りに長い鞭状突起が,後端の正中線上に小さな瘤状突起がある。貝殻はない。歯式は14×4・1・0・1・4。歯舌は無色透明。第1側歯は鎌状で大きく,先方の1/3は緩やかに湾曲し,中程は膨らみ,その内側に3~4個の鋸歯がある。第2~4側歯は細長く,鋸歯を欠き,何れも湾曲し,外側のものほど小さい。
    本種は固定標本の頭楯に僅かに残る3本の橙赤色帯と,外套楯の背面の突起, 更に歯舌の形状が既知の3種と異なり,新種であると認められる。
    タイプ産地:新潟県五十嵐浜の新川河口部の沖,水深約6 m。
  • 奥谷 喬司, 輿石 武, 佐藤 孝子, 今井 竹夫, 加藤 千明
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 15-25
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    2007年 9~10月に千島海溝南端部において海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい 6500」が行った 3潜航によってシロウリガイ類(オトヒメハマグリ科)が 4種採集されたので,それぞれの種について形態学的分類と分子系統分類および共生細菌の分子系統解析を行った。
    1)ナギナタシロウリガイCalyptogenaEctenagenaphaseoliformis: 水深4819 mから41個体採集された。原記載の時既に本種は千島海溝南端に棲むことが知られていたので再確認となる。今回の個体はタイプ標本を含めて日本海溝のものより大型(殻長20 cmを超す)で堅牢である。
    2)ナラクシロウリガイ近似の1種C. (E.) sp.: 水深4819 mから1個体。本種は一見,日本海溝の水深 5290~ 6800 m付近に固有のナラクシロウリガイに極めてよく似るが,分子情報からはKojima et al.(2004)が“Unidentifed vesicomyid”として千島海溝の水深4700~6200 mから報告している種に合う。更に標本を得て種名の決定が必要。
    3)ヒロバナギナタシロウリガイ(新称)C. (E.) extenta: 水深3512 mから2個体。本種のタイプ産地はモントレー海底峡谷の水深3041 mであるが,西太平洋からの産出は初。原記載の標本より大型で幾分殻高が高く,腹縁の湾入度が弱い。本種の出現はシロウリガイC. soyoaeが東西太平洋に分布する(=カナダ西岸のC. kilmeriと同種)のと軌を一にしているのか,アリューシャン海溝などを経由し,連続して環亜寒帯分布をするのか明らかではない。
    4)チシマシロウリガイ(新亜種・新称)C. (Archivesicalaubieri kurilensis Okutani & Kato, n. subsp. 水深3560 mから 14個体と 3512 m から5個体。101.0×51.9×34.6 mm(ホロタイプ)。ミトコンドリアCOIによる分子系統解析で南海トラフの水深3386~ 3835 mに分布するテンリュウシロウリガイと同一種であることが判った。形態的相違は微弱で,南海トラフのものに比べて,(1)腹縁がやや膨れることで殻長/殻高比が僅かに大,(2)殻頂下主歯2aと2b間の歯槽が狭いこと,及び(3)殻皮が輪肋状にならないこと(或は老成の故かもしれない)などで区別される。南海トラフと千島海溝の海底地形上の非連続性や共生細菌などの非一致性から千島海溝からの集団を南海トラフの個体群から隔離された亜種と扱うのが適当と考える。
  • 藤原 義弘, 奥谷 喬司, 山中 寿朗, 河戸 勝, 溝田 智俊, 藤倉 克則, 山本 智子, 大越 健嗣
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 27-37
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    鹿児島県野間岬沖に沈下された鯨の遺骸上にはヒラノマクラの大群が棲むことを既報したが,今回は同じ遺骸下の海底沈積物のなかにアブラキヌタレが棲息することを報告する。
    アブラキヌタレはこれまで,襟裳岬沖,銚子沖,相模湾,和歌山県沖および福井県厨(くりや)沖から知られていたが,今回の発見は本種の分布域の拡大のみならず特異な棲息環境についての新情報となる。また,本種は鰓に硫黄細菌を共生させていて,本種の炭素と硫黄同位体組成の分析の結果から化学合成依存性であることが証明された。更にその中に棲む共生細菌の超微細構造観察を行い,分子系統を調べた結果,その共生細菌は既報のキヌタレガイ科二枚貝の共生細菌と形態的に類似し,また分子系統解析の結果もSolemya reidi とスエヒロキヌタレの共生細菌とよく一致した。しかしながら,現時点では共生細菌の獲得方法を示唆する知見は得られていない。
  • 氏野 優, 松隈 明彦
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 39-54
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    堆積物中に潜行して生活する内生二枚貝は,堆積物中で一定の姿勢をとっていることが知られている。これらを定量的に測定し,種ごとの傾向を詳細に理解,比較することは,生息姿勢の機能的,生態学的意味やその進化を理解する上で重要である。本研究では内生二枚貝9種の生息姿勢を定量的に測定し,それらの傾向を検討した。
    その結果,測定したすべての二枚貝の生息姿勢の値は一定値に頻度のピークが存在する頻度分布を示し,正規分布との適合度検定から,正規分布に近い頻度分布を示すことがわかった。またアサリ,オキシジミ,ソトオリガイの3種において,個体サイズが小さくなるほど左右の姿勢にばらつきが大きくなるという傾向がみられた。さらに形態にほとんど差のない近縁種ハマグリ,シナハマグリ,チョウセンハマグリの3種間で,それぞれ異なった姿勢を示すことがわかった。これらの姿勢の違いは,生息地の環境の違いを反映している可能性があり,姿勢の生態学的な意味を検討する上で重要である。
  • 小林 峻, 伊澤 雅子, 傳田 哲郎
    原稿種別: 原著
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 55-62
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    The feeding behavior and palatability to Acusta despecta despecta of the pollens from four plant species [Alpinia zerumbet (Shell ginger), Bidens pilosa var. radiata (Beggars tick), Hibiscus rosa-sinensis (Hibiscus) and Lilium sp. (Lily cultivar)] were investigated. Ac. d. despecta fed on the pollen of all the plant species, but showed a preference for that of Al. zerumbet, judging from the high feeding rate. Pictures of scats taken by scanning electron microscope revealed that the pollen of Al. zerumbet in the scat was broken into fragments, while those of other three species were kept their original shape. The difference in digestibility between the pollen of Al. zerumbet and other three plants could be one of the determinant factors of the pollen-feeding preference of Ac. d. despecta.
短報
  • 知野 光雄
    原稿種別: 短報
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 63-66
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    McLean & Geiger (1988) はFissurisepta Seguenza,1862に含まれていた種類のうち,特殊化した歯舌と高い殻高を持つ種に対し新属Corniseptaフジスカシガイ属(新称)を設け,この中に2新種を含む12種を含めた。本属には,本邦産としてC.soyoae (Habe, 1951)フジスカシガイも含められているが,今般,鹿児島県南西部より得られた標本により,さらに1新種を認めたので記載する。
    Cornisepta monsfuji n. sp. ユキフリスカシガイ(和名新称)
    同属種の中ではやや小型。著しく高円錘形,前部斜面は膨らみ,後部斜面は凹み,殻口底面は楕円形。殻表面には殻頂から殻底に向け約24~28条,殻底付近では肋間に短い14~16条の規則的な放射状白線放射肋あり,殻底周縁でやや突出する。白線を構成する顆粒は40~42のギザギザの棘を生じる。放射条線は僅かに認められるが不鮮明。
    比較:フジスカシガイに比べ殻高が著しく高く,殻高,殻長とも小型。同種では殻表面に無数の細かい顆粒点列が斜行し,対角線が交差するように規則的に並ぶのに対し,本種では殻頂から殻底に向け放射状白線の縦肋が走ることで異なる。種名は富士山,和名は富士山の尖った頂上から雪渓が降下する様を想定した。
    タイプ標本:ホロタイプ,NSMT-Mo 76806,殻高2.2 mm,殻長2.0 mm。
    タイプ産地:鹿児島県坊岬沖180 km,戦艦大和沈没地点近辺水深350 m。漁船の抜錨に付着した砂泥塊より採集。生貝は得られていない。フジスカシガイが同所的に得られ,同種の分布域も相模湾,駿河湾から九州南西沖に拡大した。
  • 小菅 丈治
    原稿種別: 短報
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 67-70
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ブンブクヤドリガイ科アケボノガイ属の一種Barrimysia siphonosomae Morton & Scott, 1989を,石垣島名蔵湾から記録した。本種は,香港の砂泥質の干潟に棲息するスジホシムシモドキSiphonosomacumanenseの巣孔内に棲息することが知られ,石垣島名蔵湾でもサンゴ片などの礫混じりの砂泥干潟に棲息するスジホシムシモドキの巣孔内より見出された。日本からは初めての記録であり,ホシムシの一種の巣孔に棲む習性とアケボノガイ属の一種であることに因んで「ホシムシアケボノガイ」の新和名を提案した。模式産地以外から初めての記録でもあり,香港から琉球列島にかけて分布することが明らかになった。2008年8月に行った名蔵湾での観察結果では,採集したスジホシムシモドキの巣孔の15~17%にホシムシアケボノガイが生息していた。ホシムシアケボノガイは,多くの場合単独で生息していたが,2個体の貝が1つの巣孔から見つかる例も少数観察された。
  • 倉持卓司
    原稿種別: 短報
    2009 年 68 巻 1-2 号 p. 71-73
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Olivella fulgurata (A. Adams & Reeve, 1850) (Gastropoda: Olividae) is a common inhabitant of exposed sandy beaches in the southern part of the Boso Peninsula, Japan. The population biology of this species on the eastern coast of Sagami Bay, Miura Peninsula, Central Japan, was studied from January 2008 to June 2009. Newly recruited juveniles of O. fulgurata appeared from May to June, and grew rapidly thereafter. The lifespan of O. fulgurata was estimated to be about 1 year.
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