沖縄島から伊豆半島にかけての南日本の水深26~96 mで採集された橙赤色斑をもつ溝腹類を分類学的に検討した結果,シタナシホソヒモ科クシノハホソヒモ属の新種と判断されたため記載した。
Anamenia amabilis n. sp. ベニツケクシノハホソヒモ(新種・新称)
体長50 mm, 体幅2 mmに達する。体は細長く,背部に短い橙赤色横帯が多数並ぶ。橙赤色帯はしばしば癒合し,唇状,環状となる。体表のクチクラ層は厚く中空の小棘で被われる。前腸は長く,中間部に2列式櫛歯状の歯舌をもつ。歯舌は11~14横列で,各歯11~16の細長く伸長した歯尖をもつ。歯舌付近に開口する前腸腺はタイプB(上皮下に杯部が発達し,これを筋肉質の薄膜が被う)。1対の産卵管は全長にわたり癒合することなく存在し,囲心管との接合部付近に左右各13~17個の受精嚢が附属する。背端感覚器官は1個。交尾針と呼吸器官(二次鰓)を欠く。ベニウミトサカ
Scleronephthya gracillima上に棲息する。
ホロタイプ NSMT-Mo 73149, 19 mm × 1.2 mm
タイプ産地 沖縄島南西ナガンヌ島沖, 26°14.50′N, 127°32.00′E, 水深53 m。
備考 本属には7種が知られるが,本種は歯舌が前腸中央部付近にあり,その後部に長い食道が発達することで
A. amboinensis(Thiele, 1902)および
A. farcimen(Heath, 1911)に類似するが,本種は食道が後方に伸び,2列式の歯舌を持つことで
A. amboinensisと区別され,歯舌の歯尖が細く,先が糸状に伸張することや,足襞後端が外套腔に入らずに終わること,体の腹部筋肉層が厚いことなどで
A. farcimenと区別される。
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