Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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70 巻 , 1-4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 山崎 友資, 五嶋 聖治
    原稿種別: 原著
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 1-10
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    港の内側と外側においてクロタマキビLittorina sitkana(Philippi,1845)の形態・生態的差異を比較し,それぞれの環境に対して適応的か否かを検討した。港の内外は幅約1 mのコンクリート壁で分断されている。港の内側の基質は人工的にセメントで固められており,色は黒い玉石とコンクリートの灰白色がモザイク状に分布する。捕食者と考えられるイソガニHemigrapsus sanguineusの存在は調査期間中に確認された。波圧は,外側と比較して弱い。一方,港の外側の基質は天然の岩礁で,表面は灰白色のイワフジツボChthamalus challengeriで覆われており,調査期間中にイソガニは確認されず,波圧は強い。港の内側に生息する本種の殻色は全体的に暗褐色で,貝殻は堅く,貝殻表面の構造は滑らかで,足のサイズは比較的小さいといった形質を持つ個体が非常に多い。一方,港の外側では,貝殻の殻頂部は灰褐色であるが成長の途中で灰白色へ変化し,貝殻は壊れやすく,貝殻表面はリブレットで覆われ,足のサイズは比較的大きいといった形質を持つ個体が非常に多い。イソガニを用いた捕食実験の結果,捕食者と同所的ではない外側の個体のみ捕食された。水流耐性実験では,波圧が弱い内側の個体の耐性が低かった。港の内外で見られる形態・生態的差異は,それぞれの環境に対して適応的なものであると考えられた。
  • 木村 妙子, 関口 秀夫
    原稿種別: 原著
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 11-24
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本太平洋岸の汽水湖である浜名湖において,在来種ホトトギスガイと外来種コウロエンカワヒバリガイの浮遊幼生と着底稚貝の2年間にわたる高頻度の定量調査とコホート分析を行い,時間的変動を調査した。その結果,時間的変動傾向は浮遊幼生,着底稚貝とも2種間で類似していた。一方,密度は着底稚貝では大きな差がみられた。調査地点間では両種とも着底稚貝の密度は類似した傾向にあることから,2種の微小生息域の違いは加入以降に決定されると考えられた。また,コウロエンカワヒバリガイは大型個体の加入は見られているのにも関わらず,着底稚貝がほとんど観察されなかったことから,おそらく別の場所で2 mm以上の殻長に成長した後,調査地内に移動したと推察された。
  • 増野 和幸, 鳥越 兼治
    原稿種別: 原著
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 25-40
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Traditional taxonomy of shell-bearing mollusks has generally been dependent on the shell morphology including surface sculpture and color pattern. Nowadays, most researchers also use anatomical information and molecular analysis as the basis of the classification in addition to the shell morphology. In this study, we examined anatomical features in two presumed subspecies of Trishoplita eumenes, land snails distributed in Yamaguchi Prefecture. We then did a statistical comparison of the measured data. The results showed no significant differences between the two in the coloration of the dorsal soft-body, radular morphology, radula formula, jaw-plate morphology or general morphology of the genital system, including the form and microstructure of the penial verge. However, we did find distinct differences in the distribution pattern of black pigments in the dorsal mantle, the ratio of the length of the genitalia to shell diameter, the number of mucus glands, love dart morphology, and the ratio of the length of the love dart to the dart sac. These findings strongly suggest that the two forms represent two distinct species rather than subspecies.
短報
  • 北村 晃寿, 山本 なぎさ, 小林 小夏
    原稿種別: 短報
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 41-45
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    沖縄県伊江島沖の海底洞窟“小洞窟”(深度19 m)に生息する微小二枚貝Carditella iejimensis(殻長・殻高ともに3.5 mm以下)について,標識個体の殻成長追跡調査を行った。その結果,同種は1年を通じて殻成長を行なう可能性が高いことが分かった。また,殻の成長速度から,殻長3 mmに達するまでに,少なくとも4年間を要するものと推定される。
  • 中山 大成
    原稿種別: 短報
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 46-48
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    和歌山県立自然史博物館に所蔵されている永井誠二氏のコレクション中の不詳種を検討中に見出された日本産イトカケガイ科の1新種を記載する。なお同種は同博物館に寄贈された小山安夫氏のコレクションにも見出された。
    Opalia calyx n. sp. ウテナイトカケガイ(新種,新称)
    殻は10~12 mmの小型で厚く,尖塔形。灰白色。各層に不規則な縦張肋をなす。胎殻は平滑で円錐形,浸蝕されていることが多い,体層は弱い底盤を形成する。次体層は9層内外で,殻表は繊細な微穴からなる螺列と非常に弱い縦肋を持ち縦肋は直上の縫合を蕚状に覆う。殻口は2重,楕円形で外唇厚くなるが著しい張り出しにはならない。
    タイプ標本:ホロタイプ,殻高 10.3 mm; 殻径3.5 mm(WMNH-Mo-Na-46);パラタイプ1,殻高10.0 mm,殻径 3.2 mm(WMNH-Mo-Na47);パラタイプ2,殻高11.0 mm,殻径 4.0 mm(WMNHMo-Ko-1)。
    タイプ産地:和歌山県串本町沖,水深160 m。
    分布:紀伊半島沖水深80~160 m。
    比較:本種に最も近似するカタイトカケガイOpalia levis Nakayama, 2010は体層に明瞭な底盤をもつが,本種は底盤が不明瞭,また本種では縫合まで伸びる縦肋が蕚(うてな)状に覆うことが大きく異なる。本種の和名はこの特徴により命名した。
  • 湊 宏
    原稿種別: 短報
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 49-52
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    大分県においてムシオイガイ亜科貝類はこれまで5種が報告されていたが,大分県南部の石灰岩地帯から新たに未記載の新亜種を確認したのでここに記載をした。
    Chamalycaeus takahashii muroharai n. subsp.ハブタエムシオイ(新亜種,新称)
    貝殻は本属の中で大形(8個体の平均殻長径4.9mm),クリーム状の白色を呈し,その螺塔は低円錐形,約4.5層を数える。螺管は微かに深い縫合のために円く膨らみ,殻頂から殻口に向けて緩やかに太くなる。胎殻は1.5層,平滑で光沢があり,不透明な白色を呈する。続く螺層からは数多くの細かい糸状脈が殻表を覆う。ウジ虫状の呼吸器管は体層の縫合に沿って後方へ横たわっている。体層の終部の呼吸器管を派生する付近の括れはむしろ弱く,殻口背部には顕著な段差がある。臍孔は殻径の1/3ほどに開き,殻底からはすべての螺層がみえる。殻口は傾き,ほとんど円形。その殻口縁は全縁で円く,著しく肥厚して広がって反曲する。蓋は円くて多旋型,角質で薄い。またその外面側の中央部は窪むが,内面側は微かに膨らんでその中央部には乳頭状の小さな突起がある。
    タイプ標本:ホロタイプ,NSMT-Mo 77464,殻高2.1 mm,殻径5.0 mm。
    タイプ産地:大分県佐伯市本匠風戸・蝙蝠洞付近の石灰岩地(露頭)。
    分布:大分県(タイプ産地以外から記録がない)。
    比較:本新亜種は貝殻の背面外観と大きさから,大分県小半洞産のオナガラムシオイChamalycaeustakahashii takahashii Habe,1976 に近似するが,それよりもやや大きいこと,殻口背後には顕著な段差がある(オナガラムシオイでは殻口背後が隆起状突起になる)ことで識別される。また同所的に分布するハリマムシオイ Chamalycaeus japonicas(Martens,1865)は本新亜種に比べてはるかに小形(殻径3.7 mm)であること,殻口背面には明瞭な段差がないことで異なる。さらに大分県,宮崎県,熊本県に分布するタカチホムシオイ Chamalycaeusnishii Minato,2005 は,殻口背部がかすかに膨らむこと,貝殻の大きさ(殻径3.84 mm)などから,本新亞種との識別は容易である。本新亞種は死殻8個体のみ採取されたが,1個体(パラタイプ #1)の貝殻内部には蓋が残存していた。生息地はオナガラムシオイのタイプ産地からわずか3 km しか離れていない。
  • 冨田 進, 門田 真人
    原稿種別: 短報
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 53-57
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    静岡県西伊豆の松崎町伏倉と西伊豆町白川に分布する新第三系中部中新統湯ヶ島層群桜田層の淡緑色凝灰質細粒砂岩中に挾まれる石灰岩体から産出したサザエ類の化石を新種TurboMarmarostomamatsuzakiensis n. sp.として記載した。
    本種はやや大型で,螺層の肩,中央,殻底周縁に3本の丸く太い第一次螺肋と弱い第二次螺肋およびその間に細い螺脈をもつ。肩を形成する螺肋は最も強く高まり太く,体層の肩には短いが太い棘を並べる。表面には螺肋と交差する放射成長細脈がある。臍孔は閉じる。近似種との比較では,西南日本の中新統から産出するTurboMarmarostomaozawai OtukaやT.(M.)minoensis Itoigawaとは,より大型の殻と,大きな刺のある太い螺肋をもつことから区別できる。また,同亜属の現生種のいずれにも相当するものはなく容易に区別できる。
    産地の石灰岩は造礁サンゴ,石灰藻,大型有孔虫,岩礁性貝類などの浅海性の化石を含み,礁性の異地性岩体として湯ヶ島層群桜田層中に狭在するものである。層準は湯ヶ島層群の中部であり,ナンノ化石のCN4帯(15.5~13.5 Ma)に相当する。伊豆のフィリピン海プレート上の移動を考えると,中期中新世の約15 Ma前は北緯15度前後の現在のフィリピン東方の熱帯西太平洋に分布していたと考えられる。
  • 岡野 元哉, 和田 年史
    原稿種別: 短報
    2012 年 70 巻 1-4 号 p. 58-62
    発行日: 2012/07/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    We investigated size structure and reproduction of violet shell Janthina prolongata stranded on the coast of Iwami-cho in eastern part of Tottori Prefecture, southwestern Sea of Japan, on 27 September, 2010. Shell length (SL) exhibited a bimodal size distribution with a range of 6.08–40.36 mm. Our results also indicated that individuals of more than 27.4 mm SL laid egg capsules under their bubble raft. Moreover, there was a significant positive correlation between the length of egg capsules and SL. Larger individuals had shrunken and differently colored egg capsules on the forefront of bubble raft, suggesting that J. prolongata might lay egg capsules intermittently.
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