日本周辺海域には4種のクテンハナゴウナ
Hemiliostraca属貝類が分布することが知られており,このうち1種はArthur Adamsによって記載されたヒメハナゴウナ
Hemiliostraca vincta(A. Adams, 1863)に同定されてきた。しかし,このシンタイプ標本を確認したところ,
Hemiliostraca属の特徴を有しておらず,日本でヒメハナゴウナに同定されてきた種は別種かつ未記載種であることがわかった。そこで,日本国内の博物館に所蔵されている標本に基づき,新種
Hemiliostraca fasciata n. sp.として記載した。
H. fasciata n. sp.はより大きな殻を有する点,殻頂部が赤く色づかない点,殻口が細長い点,比較的大きな体層を有する点,体層に出現する赤褐色の色帯が外唇縁部で接合していない点などからAdamsの標本と区別できた。さらに,沖縄県備瀬崎および台湾南部の墾丁から採集されたオオクモヒトデ
Ophiarachna incrassataの腕および盤から見出されたハナゴウナ類を
H. ophiarachnicola n. sp.として記載した。
H. ophiarachnicola n. sp.はインド西太平洋の広い範囲に分布するクテンハナゴウナ
H. distortaに混同されてきたが,殻頂部から体層にかけての殻全体がより細くなる点,外唇縁が強く湾曲する点,後成殻の各層に色帯がより多く出現する点から明らかに区別できた。なお,これまでにクモヒトデ類から見つかっているクテンハナゴウナ属はインド洋から報告されている
H. sloaniのみなので,本種は宿主が明らかになっている種として2番目となる。日本の過去の文献上でヒメハナゴウナとされてきた貝はAdams によって記載された
Leiostraca vinctaではなく
H. fasciata n. sp.であることがわかったため,
H. fasciata n. sp.にヒメハナゴウナの和名を与え,
H. ophiarachnicola n. sp.にはホソスジハナゴウナの新和名を提唱する。
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