Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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71 巻 , 3-4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
原著
  • 松田 春菜, 上野 大輔, 長澤 和也
    原稿種別: 原著
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 163-174
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    日本周辺海域には4種のクテンハナゴウナHemiliostraca属貝類が分布することが知られており,このうち1種はArthur Adamsによって記載されたヒメハナゴウナHemiliostraca vincta(A. Adams, 1863)に同定されてきた。しかし,このシンタイプ標本を確認したところ,Hemiliostraca属の特徴を有しておらず,日本でヒメハナゴウナに同定されてきた種は別種かつ未記載種であることがわかった。そこで,日本国内の博物館に所蔵されている標本に基づき,新種Hemiliostraca fasciata n. sp.として記載した。H. fasciata n. sp.はより大きな殻を有する点,殻頂部が赤く色づかない点,殻口が細長い点,比較的大きな体層を有する点,体層に出現する赤褐色の色帯が外唇縁部で接合していない点などからAdamsの標本と区別できた。さらに,沖縄県備瀬崎および台湾南部の墾丁から採集されたオオクモヒトデOphiarachna incrassataの腕および盤から見出されたハナゴウナ類をH. ophiarachnicola n. sp.として記載した。H. ophiarachnicola n. sp.はインド西太平洋の広い範囲に分布するクテンハナゴウナH. distortaに混同されてきたが,殻頂部から体層にかけての殻全体がより細くなる点,外唇縁が強く湾曲する点,後成殻の各層に色帯がより多く出現する点から明らかに区別できた。なお,これまでにクモヒトデ類から見つかっているクテンハナゴウナ属はインド洋から報告されているH. sloaniのみなので,本種は宿主が明らかになっている種として2番目となる。日本の過去の文献上でヒメハナゴウナとされてきた貝はAdams によって記載されたLeiostraca vinctaではなくH. fasciata n. sp.であることがわかったため,H. fasciata n. sp.にヒメハナゴウナの和名を与え,H. ophiarachnicola n. sp.にはホソスジハナゴウナの新和名を提唱する。
  • 氏野 優, 松隈 明彦
    原稿種別: 原著
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 175-189
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    イチョウシラトリ“Serratina capsoides (Lamarck, 1818)”はインド・西太平洋に広範囲に分布する種として認識されており,九州以北に分布する個体群は絶滅の危機にある。本研究は,本種の将来的な保護計画の策定のための情報を提供する目的で殻形態観察と分子解析の両方を用いて分類学的再検討を行った。ミトコンドリアCO1遺伝子および核の5.8S rRNA + ITS2 + 28S rRNA遺伝子のDNA解析から,本種は3つの遺伝的に異なるグループに分けられることが明らかになった。新たに採集した標本と博物館所蔵標本の形態観察からもこの3つのグループは認識され,タイプ標本の検討からこれらは3つの種,ヌノメイチョウシラトリS. capsoides, イチョウシラトリSerratina diaphana (Deshayes, 1855), トゲイチョウシラトリ(新称)Serratina pristis(Lamarck, 1818)からなることが明らかになった。本研究の結果からS. capsoidesと認識されていた日本本土の個体群はS. diaphanaであることが確認された。S. diaphanaの分布はS.capsoidesに比べ,より限定的で絶滅のリスクが高い。しかしながら,S. diaphanaの保護計画の策定のためには,今後本種の分布や遺伝的多様性に関するより多くのデータが必要である。
  • 秋山 吉寛, 木村 龍一, 野本 和宏, 臼井 平, 町田 善康
    原稿種別: 原著
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 191-198
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本報告は,北サハリンに分布するコガタカワシンジュガイの死殻の発見を初めて報告するものである。著者らは2011年10月21~24日にかけて,北サハリンを流れるダギ川にてカワシンジュガイ類及び魚類の採集を行なった。26個体の死殻と1個体の生貝が採集され,これらの標本のうち,ほぼ欠損の無い死殻4個体と生貝1個体に対して殻形態に基づく種同定を行なった。コガタカワシンジュガイらしき標本に関しては慎重な種同定を行なうため,著者らの他に,コガタカワシンジュガイに詳しい研究者3名による種同定も合わせて行なわれた。結果,死殻1個体がコガタカワシンジュガイ,その他の標本はカワシンジュガイと同定された。魚類はイトウ,オショロコマ,アメマス,ギンザケ,エゾウグイが採集され,これらのうち,コガタカワシンジュガイの宿主であるアメマスが最も多く釣獲された。コガタカワシンジュガイの分布はアメマスの分布範囲内に限定されており,アメマスの世界的な分布から,コガタカワシンジュガイはサハリンより北部のカムチャッカ半島,マガダン州,ハバロフスク地方にも分布する可能性があると考えられる。
  • 高田 宜武, 伊藤 祐子, 林 育夫
    原稿種別: 原著
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 199-207
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    バカガイMactra chinensis幼貝の遊泳行動を実験室内で観察した。殻長7~15 mmの小型のバカガイは底面から跳躍後に,足を左右に振って遊泳した。遊泳速度は殻長7~9 mm の個体で毎秒平均6.0 cm,9~15 mmの個体で毎秒平均7.8 cmであった。遊泳距離は平均17.4 cmであった。殻長31~35 mmのやや大きい個体は,跳躍はするものの遊泳行動は認められなかった。水塊中でのバカガイの移動距離は,足を振って遊泳することにより,単なる跳躍よりも4.1倍増加した。したがって野外での遊泳行動は,捕食のリスクを低減するとともにより良い生息場所に潜砂できる可能性を増加させる適応的行動だと思われる。
短報
  • 濱谷 巌
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 209-211
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    新潟県新川の河口部南方の海域で林育夫氏によって本種の1個体が発見採集された。生時の色彩と内臓嚢突起の大きさなどで新種と判断し記載した。
    Enotepteron rubropunctatum n. sp. アカボシエチゴウミコチョウ (新種・新称)
    生体は林氏の写真によると全面に太くて粗い黒色の網目状模様と多数の橙赤色の丸い斑紋が特徴的である。側足後縁の小球体は暗赤褐色。頭楯後部の漏斗状突起は大きい。外套膜右後方の遊離縁の延長上の外套楯突起は長く体の正中線上にある。内臓嚢後端の内臓嚢突起は外套楯突起より短い。尾は小さく尖る。歯式は19× 3・1・0・1・3。すべての歯は弧状。第1側歯の内側に数個の不規則な形状の鋸歯がある。第2~第4側歯は鋸歯を欠き外側に向かって小さくなる。フォルマリン固定の標本は淡い汚黄白色に退色し,肉質感がある。
    タイプ産地:新潟県五十嵐浜の新川河口の沖,水深約12 m。
    ホロタイプ:大阪市立自然史博物館所蔵OMNHMo34847。
  • 平野 弥生, C. D. Trowbridge, 平野 義明
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 212-216
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    餌海藻の細胞内に入り,内側から摂餌を行う嚢舌目ウミウシが少なくとも3種,沖縄に生息している。すべてアリモウミウシ属 Ercolaniaに分類され,1種はオーストラリアやグアムから報告されているE. kencolesi Grzymbowski et al., 2007と同定されたが,他の2種は未記載種であると思われる。これら3種には,海藻の細胞内に侵入するための独特な穴開け行動が共通して見られ,藻体内食は固有の行動適応を伴う新しい摂餌様式と見なすことができる。
  • 藤原 義弘, 奥谷 喬司, 木村 浩之
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 217-219
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    アルビンガイAlviniconcha hessleriはマリアナ背弧海盆の水深 3630 ~ 3655 m から初めて記載された。その後Warén & Bouchetは北フィジー・ラウ海盆から採集された形態的に同種と思われるものについて詳細な解剖学的検討を行い,これがハイカブリニナ科に属することを明らかにした。しかし,分子系統分類の手法により精査された結果,マヌス・北フィジー海盆には2つの,更にインド洋の「かいれいフィールド」には第3の種が含まれることが明らかにされた。
    今回ROVハイパードルフィンによって小笠原水曜海山の水深 1380 mからアルビンガイと思われる1標本が採集された(属として日本初記録)。形態学的特徴ではアルビンガイと差異を認めるのは困難であるが,分子系統学的にはこれまで知られている同属のすべての種を含んだクラスターと姉妹群の関係となる。
  • 加瀬 友喜, Jean Letourneux
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 220-222
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    タヒチ島Arua沖水深40 m の海底洞窟からVincent Wargnier氏によって採取されたソビエツブ科クチビロガイ属の1新種を記載した。
    Microliotia wargnieri n. sp. トウガタクチビロガイ(新種・新称)
    殻は微小で細長いサザエ形を示し,白色。螺管は8階を超え,周辺部は強く角張り,縫合は深い。胎殻は平滑で約1階の胎殻Iと顆粒状の螺脈で覆われる約1.5階の胎殻IIからなり,sinusigera notchは深く湾入する。殻表面彫刻は粗く,体層には16本の縦肋と,縫合付近と殻底にはそれぞれ2本ある。臍穴はやや広く開き,深く,周辺は鋭い螺肋で縁取られる。殻口は真円形で,強い縁取りがある。殻口周辺部は拡がり,数本の弱い同心円状肋と9ないし10本の放射状肋がある。殻高 2.79mm,殻幅 1.98 mm(ホロタイプ)。
    模式産地:フランス領ポリネシア,タヒチ島Arua沖の海底洞窟“Cave Arua”,水深 40 m。
    分布:フランス領ポリネシア,タヒチ島。
    クチビロガイ属は現在10種が知られ,殻形態や彫刻は変異に富む。本種は螺管が角張り,属のタイプ種とはかなり異なる。しかし,螺管第一層は角張り,殻底を除く螺管表面は螺肋と縦肋が交差して格子状となり,広く拡がる殻口周辺部には同心円肋と放射肋があることから,本種をクチビロガイ属に位置づけた。本種はハワイ・マウイ島産のアラボリクチビロガイに似るが,螺管が著しく角張ること,肩部の螺肋が縦肋と交差して棘状になること,胎殻の巻き数が多い点などで容易に区別できる。
  • 奥谷 喬司, 藤原 義弘
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 223-226
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    2002年に薩摩半島野間岬沖に沈設した鯨の遺骸下の硫化水素を豊富に含んだ海底沈積物中から発見された,微小なケシハマグリ科の1新種を記載する。
    Kelliellaossisocia n. sp. ゲイコツケシハマグリ(和名新称)
    殻長7 mmの微小種で,殻はハマグリ型で,同属の他種に比しやや前後に長く,且つ殻頂も秀いでない。殻表は白色で成長線は時に弱い褶状になり,極めて薄い殻皮を被る。小月面は浅い溝で区切られ,楯面は不分明。前後の閉殻筋痕は同型同大。外套湾入は無い。右殻の主歯は半月形で,弧状の殻頂下歯との間に深い歯槽が出来る。左殻の殻頂下歯は前肢は溝を伴った半月形であるが,後肢は逆V字型。後主歯は太く斜位。
    本種は野間崎沖の水深226 mから得られたホロタイプのみ知られる。鯨骨下の還元層に棲むと思われるが,本属の他種は漸深海底帯から超深海底帯から知られ,このように浅海からの出現は極めて異例である。本種は整ったハマグリ型であるが,既知種の多くは丸みが強く,殻頂部は著しく聳えて強く前傾する。Kelliella属は多系統と思われるので,本種の属位は決定的ではない。チトクロームオキシダーゼ サブユニット1 (COI) 遺伝子の部分長塩基配列に基づく予察的な分子系統解析(藤原・他,未発表)によれば,本種はオトヒメハマグリ類のクレードの外群となることが示されている。
  • 松原 尚志
    原稿種別: 短報
    2013 年 71 巻 3-4 号 p. 227-231
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2016/05/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Ezocallista エゾワスレ属は1952年に黒田徳米博士によって謄写版の雑誌「ゆ免蛤[夢蛤]」第64号に公表されたが,この雑誌は国際動物命名規約の出版の要件を満たしていない上に,二名法によるタイプ種の固定もなされなかったため不適格である。しかしながら,Ezocallistaは多くの研究者により今日でも有効な属階級群名として用いられており,その著者権は1962年にタイプ種の指定を行うとともに,属の表徴を記載した鎌田泰彦博士に帰されている。本研究ではこれらの原記載を紹介するとともに,その著者権について,国際動物命名規約に基づき再検討を行った。Kamada (1962)による記載でのEzocallista属の著者は「Kuroda in Kira, 1959」,表徴の出典は「Kuroda, MS」となっていることから,国際動物命名規約条50.1.1に基づき,著者権は黒田博士に帰せられる。従って,今後,本属階級群名については「Ezocallista Kuroda in Kamada, 1962」と表記するのが妥当である。
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