Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
Online ISSN : 2189-7697
Print ISSN : 1348-2955
最新号
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原著
  • 山崎 友資, 園田 武, 野別 貴博, 五嶋 聖治
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 1-18
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    サハリン~北海道,本州周辺海域から採集された標本に基づいて,モスソガイ属の分類学的再検討を行った。モスソガイ属は近縁のエゾバイ属の異名として扱われる場合もあるが,貝殻の形態の顕著な違いから,独立した属として扱った。

    これまでモスソガイ属は研究者によって2種3亜種,あるいは1種に分類されていた。本研究においては,Habe & Ito(1980)により定義された5つの種および亜種タクサを操作上のタクサとして,主に貝殻,蓋と陰茎の形態,および地理的分布を比較した結果,以下の3種群に分類された。なお,歯舌形態は中歯の歯尖数に個体間変異が多く,本属において,種レベルにおける分類形質として有効ではないことが明らかとなった。

    1)ampullacea種群:殻は小型,蓋の核は保存されていて丸く,足後縁部の前側に位置し,陰茎の生殖口は丸みを帯びる。ベーリング海,オホーツク海,日本海,北太平洋広域に分布する。含まれるタクソンは,ampullaceaのみ。

    2)nipponkaiensis種群:殻は小型,蓋の核は保存されていて丸く,足後縁部の前側に位置し,陰茎の生殖口は三角形。日本海,宗谷海峡に分布する。含まれるタクソンはnipponkaiensislimnaeformis

    3)perryi種群:殻は大型,蓋の核は欠けていて裁断状,足後縁部のやや前側に位置し,陰茎の生殖口は鋭く尖る。オホーツク海,日本海,北太平洋広域に分布する。含まれるタクサはperryiainos

    同一種群に含まれるnipponkaiensislimnaeformisperryiainosのそれぞれは,側所的に生息し,貝殻,特に殻皮の形態から不連続に区別できることから亜種として扱い,モスソガイ属は以下3種2亜種から構成されると結論づけた。

    V. ampullacea ampullacea(Middendorff, 1848)ヒメモスソガイ

    V. nipponkaiensis nipponkaiensis Habe & Ito, 1980 ナガモスソガイ

    V. nipponkaiensis limnaeformis Habe & Ito, 1980 ウスカワモスソガイ

    V. perryi perryi(Jay, 1856)モスソガイ

    V. perryi ainos Kuroda & Kinoshita, 1956 クマモスソガイ

    ウスカワモスソガイV. n. limnaeformis Habe & Ito, 1980のタイプ産地は,北海道南部の岩代Iwashiro沖として記載されたが,北海道には岩代という地名は存在せず,岩内Iwanai沖であることが確認できた。しかしながら,ホロタイプの再調査により本タクソンのタイプ産地は詳細地名の特定されない北海道と訂正される。

    本論文で取り扱った標本は全て北海道大学総合博物館分館水産科学館及び,蘭越町貝の館に所蔵されている。

  • Tatiana Korshunova, 藤田 敏彦, Alexander Martynov
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 19-28
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    裸鰓類の一種であるTrinchesia lenkae Martynov, 2002 が,日本国内から初めて厚岸湾から発見された。新たに採集された日本産の個体は,タイプ産地である日本海北部ロシア極東地域のピョートル大帝湾の標本と内・外部形態,および分子系統的に比較された。分子系統解析の結果,日本とロシアの個体群の間の遺伝的均質性が高いことが示された。形態学的な近似性も含めると,日本の個体群はロシアの個体群と同じ種に含まれることが明瞭に示された。

  • 陳 充, 奥谷 喬司, 梁 前勇, 邱 建文
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 29-37
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    南シナ海北部,中国海南島南西沖で新しく見つかったメタン湧水域“海馬湧水”(水深1,372 m~1,398 m)からシロウリガイ類の未記載種が発見されたので新種として記載した。

    Calyptogenamarissinica n. sp. ハイナンシロウリガイ(新種・新称)

    ホロタイプの殻長は103.7 mmであるが,パラタイプの一つ(死殻)は殻長188.0 mmに達する。この類としてはやや太短く,殻高は殻頂の後方で最大となり殻長の20%前後。殻皮は光沢のある藁色で,成長脈が著しい。月面も楯面も無い。靭帯は後背縁の1/2に達する。右殻の中央主歯(Fig. 3: 1; 以下同様)は三角錐状で殻頂下主歯前肢(3a)は弱いが後肢(3b)は強く,前肢と150°をなす。左殻の中央主歯は二叉し(2a, 2b),殻頂下前主歯は不明瞭であるが,後主歯(4b)は放射状に配置する。歯丘(nr)はよく発達する。殻頂下洞は無い。

    備考:本種のミトコンドリアCOI領域のデータから,本種は南海トラフの水深2,084 mから記載されたニヨリシロウリガイCalyptogena similaris Okutani, Kojima & Ashi, 1997と同じクレードに入ることが明らかである。ニヨリシロウリガイとは一層細長く湾入した腹縁を持つことなどから一見して区別ができるが,現在いわゆる広義のCalyptogenaは形態よりも分子系統解析によって属が細分化されつつあるのにも拘らず,ニヨリシロウリガイは何れの既存の“属”にも配置されていない現状から,本新種の属位は敢えてCalyptogenaのままとして扱った。

  • 陳 充, 奥谷 喬司, 渡部 裕美, 小島 茂明
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 39-44
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    「しんかい6500」によって南マリアナ舟状海盆の熱水噴出孔付近,水深2,489 mから発見された微小なシャクシガイ科の二枚貝は化学合成生物群集の中から発見された最初のシャクシガイ類であり,最初の異靱帯類でもある。

    Thermomya sulcata n. gen. & n. sp. ユメノシャクシガイ(新属・新種・新称)

    殻長8.1 mm(ホロタイプ)。殻はよく膨れ,右殻が左殻より僅かに大きく不等殻。

    殻体部には同心円状の板状肋がほぼ等間隔に並ぶ。嘴部は短く,筒状にはならず偏圧された亜三角形の翼状。嘴上では板状肋は退化し皺状の成長脈となり不規則な脈条が散在する。鉸板は無歯。左殻の歯丘滑層は厚い。シャクシガイ類のなかにはオオシャクシガイやミジンシャクシやオケゾコシャクシのように輪肋を持ったものがあるが,それらの輪状肋は何れも密で丸みを帯びており,本種のようなハナガイ類のそれのような間隔の空いた板状肋とは形状を異にする。

    このような特異な形態学的特徴から新属を創設した。

  • 関澤 彩眞, 山梨 津乃, 中嶋 康裕
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 45-52
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    歯舌の形態や配列はウミウシを分類する上で重要な形質だと見なされてきた。しかし,歯舌を調べるには解剖が不可欠なため,生きた個体を同定するには歯舌の情報は利用できない。一方,外套膜の色彩パタンは個体間に大きな変異が認められることから,種を同定する形質としての信頼性は疑問視されてきた。そこで,よく似た色彩パタンを持ち,同種だと混同されることもあるチリメンウミウシChromodoris reticulataとサラサウミウシChromodoris tinctoriaのさまざまな形質を比較したところ,からだ全体の輪郭,触角,二次鰓,ペニス表面の棘,胚や卵殻の形成様式など外部および内部形態,配偶行動にかなりの違いが認められた。また,これらの形質と外套膜の色彩パタンとの間には一貫した相関があった。交配実験では,両種の個体とも配偶しようと試みたが,ペニスを挿入する前に交尾を中止した。これらの結果は,少なくとも一部のウミウシでは,外套膜の色彩パタンは種の同定において信頼できる形質であり,生態学的な研究に利用できるとする考えを支持している。

  • 高田 宜武
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 53-64
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    熱帯および亜熱帯の河口域では複数種のアマオブネガイ類が共存している。同所的に分布する4種のアマオブネガイ類(シマカノコ,ドングリカノコ,ツバサカノコ,イガカノコ)について石垣島のマングローブ域において調査を行い,微細な分布パターンを把握した。調査は2006年の1月と7月の2回行い,28 m2の調査地を25 cm毎に碁盤目状に区切り,各々の枠内にいたアマオブネガイ類の個体数を種ごとに計数した。MoranのI指数より,両月とも4種の分布は正の空間的自己相関を示すことがわかった。次に,空間的なランダム効果と固定効果として枠ごとの潮位高を考慮にいれた条件付き自己回帰モデルを4種の微細分布に適合させた。その結果,種間および調査時期で微細分布に違いがあることがわかり,潮位高は4種の分布に有意に影響するが,1月のシマカノコと7月のツバサカノコの場合以外では空間的自己相関の効果が卓越することがわかった。マングローブ域のアマオブネガイ類の個体数を推定する際には,空間的自己相関の影響を考慮しないと誤差が大きくなると考えられた。

  • 秋山 吉寛, 岸 大弼, 伊藤 健吾, 近藤 高貴
    原稿種別: 原著
    2018 年 76 巻 1-4 号 p. 65-78
    発行日: 2018/06/08
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル オープンアクセス

    カワシンジュガイが野外で口から取り込む微細藻類の特徴を特定するため,カワシンジュガイの糞粒中に含まれる微細藻類の分類群および形態を調べた。2015年6月および10月に,飛騨川と連結する排水路にて,カワシンジュガイの成貝および未成熟貝を採集し,排泄された糞粒を採取した。10月は排水路の水も採取し,これらの試料中に含まれる微細藻類を分析した。糞粒から5門の微細藻類(Cyanobacteria門,Euglenozoa門,Ochrophyta門,Chlorophyta門,Charophyta門)が得られた。糞粒中の微細藻類の細胞およびコロニーの98~99%は,Ochrophyta門(珪藻綱)に属していた。葉緑体色素を持つOchrophyta門の細胞およびコロニーの割合は,排水路の水中(14~16%)よりも糞中(5~6%)の方が低かった。これらの結果は,カワシンジュガイが口から取り込んだ主要な微細藻類が珪藻であり,カワシンジュガイがOchrophyta門を消化した可能性を示している。一方,糞中のChlorophyta門の細胞およびコロニーの75%以上は葉緑体色素を持っていたため,Chlorophyta門は積極的に消化されなかったと考えられる。糞粒に含まれていた微細藻類の長さの範囲は5~690 μmであり,この長さの範囲に含まれる有機物は,カワシンジュガイの餌になる可能性がある。これらの微細藻類の特徴は,成貝と未成熟貝の両方の糞で見られた。新たに得られたこれらの知見は,野外におけるカワシンジュガイの餌の種類の解明に寄与する。

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