Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
  • Tatiana Korshunova, 中野 理枝, Karin Fletcher, Nadezhda Sanamyan, Alexande ...
    原稿種別: 原著
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 1-14
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Dendronotusスギノハウミウシ属は裸鰓目スギノハウミウシ科に属するウミウシの仲間で,背面の両側に樹枝状突起が生じるのが特徴である。Dendronotus primorjensis Martynov, Sanamyan & Korshunova, 2015のタイプ産地は日本海のロシア側の沿岸で,中野(2004)が宮城県女川から日本初記録を報告した。しかし写真のみの報告であったため,今回北海道臼尻で得た標本を用いて分子系統解析を行った。その結果,臼尻産の個体はD. primorjensisであり,本種は日本東北部以北の沿岸にも分布することが確認された。本種には日本初記録地に因み,和名としてオナガワスギノハウミウシが提唱されている(中野,2018)。次にDendronotus robilliardi Korshunova, Sanamyan, Zimina, Fletcher & Martynov, 2016が青森県竜飛岬から報告された。本種のタイプ産地は太平洋北西部のカムチャツカであるが,竜飛岬産の個体は特徴的な外部形態からD. robilliardiであると考えられる。D. robilliardiは太平洋北東部,北アメリカ沿岸からも報告されている。本種には種小名に献名された研究者に因み,和名としてロビラードウミウシが提唱されている(中野,2018)。最後にDendronotus kalikal Ekimova, Korshunova, Schepetov, Neretina, Sanamyan & Martynov, 2015が千島列島から報告された。本種のタイプ産地もカムチャツカであるが,外部形態と分子系統解析,および歯舌形態から千島列島産の個体はD. kalikalであることが確認された。D. kalikalのタイプ産地以外からの報告は今回が初めてである。本種には形態的特徴および種小名の意から,ソメワケスギノハウミウシの和名を新唱する。

  • 森井 悠太
    原稿種別: 原著
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 15-26
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    森林の皆伐は森林生態系へ壊滅的な損害を与えうる。皆伐によって森林生態系の生物量や種多様性が著しく減少することが知られている。しかしながら,皆伐の長期的な影響を評価した研究は少ない。本研究では,原生林と二次林の林床土壌中の陸産貝類相を定量的に調査し,過去の皆伐の影響の評価を試みた。北海道,黒松内低地帯に位置するブナの優占する原生林と二次林をそれぞれ2箇所ずつ調査地とし,調査地それぞれの林床に50-cm × 50-cmの区画をそれぞれ6箇所,林床に設置した。リター層中の陸産貝類を目視で摘出したのち,双眼実体顕微鏡を用いて種を同定した。原生林と二次林との間で種密度と個体密度を比較したところ,種密度・個体密度共に二次林よりも原生林において有意に高い値が示された。原生林2箇所のうちのひとつ,歌才ブナ林では特に陸産貝類相の多様性が高く,50-cm × 50-cmの区画で平均239.2個体・7.2種もの陸産貝類が採集された。一方,二次林では2箇所の平均で12.3個体・4.8種を記録するのみであった。その中でも,殻長2.0 mm以下の微小貝の個体密度が二次林において有意に低かった。加えて,成長錐を用いて二次林の樹齢を推定した結果から,調査対象とした2箇所の二次林はいずれも100~150年前に伐採されたことが示された。これらの結果は,森林伐採が100年以上にも渡って林床の陸産貝類相に影響を与えることを示している可能性がある。

  • 伊藤 寿茂
    原稿種別: 原著
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 27-35
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    Host species for the glochidia of the freshwater unionid mussel Sinanodonta sp. from Lake Biwako were identified by determining whether the glochidia infected 18 fish taxa in autumn. The fishes were kept in tanks for 11–16 days after glochidial infection, and the numbers of glochidia and metamorphosed juveniles detached from the hosts were counted. All adults of the mussel which used for the experiments were identified by Sinanodonta calipygos from the form of shells and season of released glochidia. Living juveniles of S. calipygos detached from Candidia temminckii, Oryzias sp., Acanthogobius flavimanus, Gymnogobius urotaenia, Trichogaster trichopterus, Rhinogobius similis and Rhinogobius sp. Therefore, these fishes were identified as suitable host species for the glochidia of S. calipygos. Some native fishes that inhabit Lake Biwako (e.g., Gymnogobius urotaenia and Rhinogobius sp.) are considered to be useful local hosts.

  • 高見 明宏
    原稿種別: 原著
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 37-43
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    The karyotypes of three species of the genus Semisulcospira at Lake Biwa and the Uji river, Japan were reexamined. The observed diploid chromosome number was as follows: Semisulcospira reiniana, 2n=36 (28M+6SM+2ST); S. nakasekoae, 2n=22 (18M+2SM+2T); S. morii, 2n=32 (20M+10SM+2T). The number of chromosomes in S. niponica group ranged from 2n=18 to 32, but no case of 2n=30 has been reported. The number of chromosomes in S. libertina group was 2n=36 with a variation of karyotypes.

短報
  • 髙野 剛史, 田中 颯, 狩野 泰則
    原稿種別: 短報
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 45-50
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    ハナゴウナ科Eulimidaeの腹足類は,棘皮動物を宿主とする寄生者である。同科のMucronalia属は形態および生態情報に乏しいグループで,タイプ種のフタオビツマミガイM. bicinctaは生貝での採集報告がなされていない。Warén(1980a)による殻形態に基づく属の概念では,つまみ状の原殻,内唇滑層,ならびに中央部の突出した外唇を有することが重要視されている。また2既知種がクモヒトデ寄生性であることが知られており,これが本属貝類に共通の生態とみなされている。本報では,神奈川県真鶴町の潮下帯より採取されたアカクモヒトデOphiomastix mixtaの腕に外部寄生するMucronalia属の1新種を記載した。

    Mucronalia alba n. sp.オビナシツマミガイ(新種・新称)

    原殻がつまみ状に突出すること,殻口内唇に滑層を有すること,また外唇は中央部が突出し横からみると大きく曲がることから,Mucronalia属の一種であると判断された。殻は本属としては細く塔型,最大5.5 mm,白色半透明である。後成殻は6.6巻,螺層は時に非対称に膨れ,螺塔は成長に伴い不規則に太くなる。外唇縁痕は不定期に現れ,僅かに褐色を呈する。殻口は細長い卵型。軸唇はまっすぐで,体層の軸から20°傾く。原殻は淡い褐色。

    本種の殻形は,同じく日本に産するヤセフタオビツマミガイM. exilisと,オーストラリアのクイーンズランドから記載されたM. trilineataに似る。一方これら2種は殻に褐色の色帯を有し,また軸唇の傾きが弱い。オマーンをタイプ産地とするM. lepidaM. oxytenes,メキシコ西岸のM. involutaはいずれも本種と同様白色の殻をもつが,前2種は殻が太く螺層の膨らみが弱い点で,またM. involutaは本種と比してはるかに小型である点で区別される。タイプ種であるフタオビツマミガイM. bicincta,オマーンに産するM. bizonula,スリランカのM. exquisitaは,色帯のある円筒形の殻をもつ点で本種と明瞭に異なる。

    上述の種のほか,コガタツマミガイ“M.subulaやヒモイカリナマコツマミガイ“M. lactea”がMucronalia属として扱われることがある。しかしながら,前者は殻口外唇が湾曲せず,カシパンヤドリニナ属Hypermastusに含めるのが妥当である。後者は,殻形態,寄生生態および予察的な分子系統解析(髙野,未発表)により,セトモノガイ属Melanellaの一種であると考えられた。しかしながら,Eulima lactea A. Adams in Sowerby II, 1854が同じMelanellaに所属すると考えられるため,ヒモイカリナマコツマミガイに対するlactea A. Adams, 1864は主観新参ホモニムとなる。そこで,ヒモイカリナマコツマミガイに対する代替名としてMelanella tanabensisを提唱した。東アフリカのザンジバル諸島産で,同じくヒモイカリナマコに内部寄生する“Mucronaliavariabilisもセトモノガイ属に含めるのが妥当と考えられ,本論文で属位を変更した(Melanella variabilis n. comb.)。

  • Leo J. van Gemert
    原稿種別: 原著
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 51-53
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    ニシキウズ上科の科名義タクソンLiotiidae Gray, 1850(ヒメカタベ科)とそのタイプ属Liotia Gray, 1842は広く認められているが,一方でLiotina Fischer, 1885に基づいた名義タクソンであるLiotinidae Nomura, 1932はこれまで見過ごされてきた。

    Liotina Fischer, 1885はヒメカタベ科の有効名であるが,多くの文献においてその著者はMunier-Chalmas(1877)とされていた。しかし,今回文献を精査した結果,Munier-Chalmasのいずれの著作にもLiotinaの属名は現れず,Fischer(1885)によって初めて(Liotiaの亜属として)正式に導入されたことが明らかになった。Fischer(1885)はこの属にLiotiaLiotinagervillei DefranceとLiotiaLiotinaaustralis Kiener の2名義種を含めているが,タイプ種は指定していなかった。タイプ種はCossmann(1888)によって“L. Gervillei”が後指定された。この種名は当初Defrance(1818)によって“gervilii”とされ,その後様々に異なった綴りで用いられたが,フランスのナチュラリストCharles de Gervilleに因んだもので,命名規約に則り,ラテン語化された人名“Gervillianus”に基づき“gervillii”が正しい綴りとなる。従って,Liotinaのタイプ種はDelphinula gervillii Defrance, 1818とするべきである。

    Liotinidae Nomura, 1932は関東地方の完新世隆起海浜堆積物の軟体動物リストの中に初めて現れたもので,記載やタイプ種の指定が伴っていないことのみならず,新名義タクサであることも示されていない。これまでほとんどの文献で見逃されていたが,近年東海大出版会の日本近海産貝類図鑑の第二版(Sasaki, 2017)の中で用いられている。しかし,いずれのケースも著者と年が伴っていないために,Liotiidaeの綴り間違いの可能性も否定できない(同図鑑の目次では“Liotididae”となっている)。いずれにしても,LiotinidaeはNomura & Zinbô(1934)のリストの中でも用いられていることから,命名規約の条13により適格と判断されるが,Liotiidae Gray, 1850の主観新参異名となる。

  • 岸 大弼, 伊藤 健吾, 秋山 吉寛, 竹内 基, 近藤 高貴
    原稿種別: 短報
    2019 年 77 巻 1-4 号 p. 54-58
    発行日: 2019/05/15
    公開日: 2019/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    The glochidia of the freshwater pearl mussel Margaritifera laevis infect the host fish, the Masu Salmon Oncorhynchus masou masou. The salinity tolerance of these glochidia was investigated in a laboratory experiment in 2016. Masu Salmon infected with glochidia in early May were reared in fresh water from early May to 7 June, then in artificial seawater (salinity: 0–35 psu) from 7 to 10 June (for 72 hours), then again in freshwater from 10 to 30 June. Live juveniles detached from the host fish were observed on 30 June. These results suggest that glochidia of the freshwater pearl mussel exhibit temporary salinity tolerance while on the host fish.

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