ツノマタガイ亜科ベニマキ属は近年Vermeij & Snyder (2003),Bouchet & Snyder (2013)らにより分類学的研究が進められた。一方,本邦産の種は諸文献で従来B. rhodostoma或いは B. fastigiumとされるなど混乱が見られた。今般,日本列島周辺から得られた標本を精査した結果,小笠原,伊豆半島他の浅海から2つの未記載種を認めたので新種として記載する。
Benimakia ogasawarana n. sp. オガサワラベニマキ(新種・新称)
貝殻は本属では小型,殻高は最大19.5 mm,殻高/殻幅比は2.26。殻形は紡錘形で堅牢,螺層は6層,初生殻は淡褐色乃至赤褐色で11/4巻,体層は膨らむ。縦肋は太く角張り肋間は広い,体層で6本。螺肋は明瞭で12本,細い間脈と縦肋を跨ぎ尖る。水管はやや短い。殻口は楕円形,内面はピンクがかった黄褐色,外唇は膨らむが肥厚せず,縁は鋸状の唇歯を生じるが内側は平坦。縫合下に規則的な白色の小細粒が並ぶ,僅かに波打つ。内唇下部には襞がある,蓋は角質で殻口を塞ぐ,核は下端にある。殻色は赤褐色乃至淡褐色で肋の間隙はやや暗色。
ホロタイプ:殻高13.2 mm(NSMT-Mo 79579)。
タイプ産地:東京都小笠原村父島宮之浜の潮下帯。
分布:現在タイプ産地からのみ知られる。
付記:本種はマダガスカル産の最近似種B. helenae Hadorn, 2024とは,殻高が小さいこと,原殻や水管が白色で,縫合下の水平配列の違いや外唇内側の螺条が多いこと等により異なる。ヴァヌアツの固有種B.rubus Bouchet & Snyder, 2013は殻幅が狭く縦肋が丸みを帯び,殻口内が淡紫彩されることで区別される。
Benimakia rhodostoma (Dunker, 1860)ベニマキは殻高が大きく細長く,原殻が白色であり,螺層が膨らまず,縫合が広く,螺肋が密であり,外唇内側が白色に彩られ,外唇の棘突起の特徴により区別される。本種は東京都八丈島,高知県宿毛市沖ノ島,熊本県天草市牛深,鹿児島県奄美大島から得られる。奄美大島,沖縄県石垣島,更にパラオ,カロリン諸島,クック諸島,オーストラリア東部,マダガスカル,ザンジバル等からも報告があるが,これらが別種となるかは更なる検討を要する。
Benimakia tengusacola n. sp. コベニマキ(新種・新称)
貝殻は本属では中型,殻長は最大27.65 mm。殻幅は10 mm,殻高/殻幅比は2.3。殻形は紡錘形で堅牢,螺層は6~7層。初生殻は白色からクリーム色で11/4巻。体層は膨らむ。縦肋は太く間隔は広く体層で7本。螺肋は細く10本,間脈と縦肋を跨ぐ,水管はやや長い。殻口は楕円形,内面は白色,外唇は肥厚せず,縁は7~8本の鋸状唇歯を生じ内壁は平坦。縫合下にやや幅広の白色帯が巻き縦肋と接して僅かに波打つ。軸唇から水管は白色。蓋は角質,核は下端にある。
ホロタイプ:殻高24.75 mm(NSMT-Mo 79581)。
タイプ産地:静岡県東伊豆町稲取海岸。
分布:タイプ産地の他,千葉県南房総市白浜町根本,東京都三宅島,八丈島(いずれもテングサ干場)。
付記:本種は前種とは殻高が大きく,殻彫刻が微細で,初生層と縫合付近,体層下部水管が白色である等の特徴により区別される。種小名はテングサ漁で混獲されることを表した。
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