雑草研究
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29 巻, 2 号
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  • 小林 央往
    1984 年 29 巻 2 号 p. 95-109
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
  • 中村 啓一
    1984 年 29 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    1) Tetrapion (Sodium 2, 2, 3, 3-tetrafluoropropionate, TFP) はイネ科雑草に有効な選択性除草剤である。Tetrapion は土壌に処理されると植物の根部より吸収されて, 地上部に容易に移行し, 感受性のイネ科雑草に著しい生育抑制作用を現わすことを特徴としている。
    この生育抑制作用を細胞レベルで追求するために, イネのカルスを培養してそのカルスの生長と器官分化に及ぶす tetrapion の影響をイネの芽ばえの場合と比較して検討した。
    2) Tetrapion はイネの芽ばえに低濃度で著しい生長阻害を示す。根部より地上部の方が阻害が受け易い。芽ばえの生長50%阻害濃度は地上部では1~2mg/l, 根部では10mg/l程度である。これに対しカルスでは tetrapion の生長阻害はきわめて少く, 1,000mg/lの高濃度でもカルスの生長に及ぼす影響は僅かであった (Fig. 1, 2, 3, 4, 5)。
    3) イネのカルスから器官を再分化させ, tetrapion の器官分化に及ぼす影響について検討した。Tetrapion はカルスの器官分化の芽の形成には高濃度でも阻害は少なかったが, 形成した芽のその後の生長には強い抑制を示した (Table 1)。
    4) カルスの生長, 器官分化の芽の形成に阻害は少いが, 分化した芽の生長が抑制されたことより, tetrapion は細胞の生存, 増殖, 生長などに関連した細胞のレベルでは大きい影響は与えないが, 細胞が集って組織や器官を形成してゆく形態形成の過程で著しい生長阻害を発現してくるものと考えられる。
    これらの事実は tetrapirn が細胞壁などの組織の骨核構造の形成の過程に強く関与し, 正常な形態形成を阻害していることを示唆している。
  • 石塚 皓造, 松本 宏, 角本 芳樹
    1984 年 29 巻 2 号 p. 116-122
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    除草剤シメトリンに対して日本型のイネは抵抗性を示し, インド型およびそれらの交雑品種の多くは感受性であることが知られている。しかし高温条件下においては日本型のイネにも薬害を生じることがあり, その発生機構が研究されてきている。本研究はイネ各品種の有するシメトリンに対する生理的性質が, 温度変化に伴ってどのように変化するかを解析し, さらに薬害の発生との関連を調べようとしたものである。
    イネ品種を日本型 (「日本晴」,「Blue bell」) インド型 (「IR-8」,「CH-45」) およびそれらの交雑品種 (「維新」,「統一」) から各2品種を選んで供試した。まず, これらの品種の中からシメトリンに対してより抵抗性である「日本晴」と, 感受性の「IR-8」を用い, シメトリンの薬害の程度に及ぼす温度の影響を検討した。3葉期まで生育させた両品種を処理2日前にそれぞれの人工気象室 (高温区: 昼32℃, 夜27℃, 低温区: 昼25℃, 夜20℃) に移し, 根部を所定濃度リシメトリン水溶液に1時間浸漬して吸収させ, その後の生育を調査した (第1図, 第2図)。
    「日本晴」においては高濃度処理区ほど大きな生育阻害を受けたが10-3M処理区においても, 薬害からの回復が認められた。しかし, 高温区は低温区に比べて薬害が強度にかつ処理後短期間内にあらわれた。「IR-8」においても高温区で低温区より薬害が大であった。また「IR-8」でば高低両温区とも「日本晴」に比べて薬害が強くあらわれ両品種間シメトリン抵抗性には差のあることが認められた。
    次に14C標識シメトリンを用いて各品種の根部からのシメトリン吸収に及ぼす温度の影響について検討した (第1表)。その結果, シメトリンの吸収速度は品種間で異なり, 日本型の2品種は他の品種に比べて高いことが明らかとなった。また, いずれの品種においても高温区における吸収が大であったが, 温度上昇に伴う増加率には品種間でその傾向に差は認められなかった。
    同様にしてシメトリンの移行率に対する温度の影響を検討した (第2表)。供試したインド型品種および交雑品種においては, 温度上昇に伴う移行率の増加は認められなかったが, 日本型の品種である「日本晴」と「Blue bell」には温度上昇による移行率の増加がみられ, その傾向は処理後数時間以内が顕著であった。
    さらに, 茎葉部に蓄積されるシメトリン由来の14C濃度に対する温度の影響について検討した (第3表)。すべての品種において高温区でより高濃度の蓄積がみられた。これらのことから, 吸収, 移行量の増大に伴う体内濃度増加が高温条件下におけるシメトリンの薬害増大の主因の一つと考えられた。また, 各品種の有する吸収, 移行特性の温度変化に対す感応性はそれぞれ異なることが明らかとなり, 日本型品種の「日本晴」および「Blue bell」は温度に対する感応性が他の供試品種より高いことが示された。このことによって日本型品種でも温度上昇に伴って急激な体内濃度上昇が起り, 薬害を生ずるものと推察された。
  • 馬久地 隆行, 酒井 博
    1984 年 29 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    エゾノギシギシは人工草地において最も防除が困難な雑草であり, 野外でのその芽ばえの動態を知ることは, 防除法を確立するために, 重要であると考えられる。
    東北大学農学部付属農場内の放牧地, 採草地, 林縁及び裸地に生育している根際直径1~3mmのエゾノギシギシの芽ばえに標識し, その芽ばえの根際直径, 葉数, 草丈, 葉の昆虫による食害の有無及び標識個体の回りの裸地率を記録した。これらの調査を標識個体について, 冬期間を除いて, 1981年10月から, 1982年10月までの一年間, 毎月行った。1982年4月に標識個体とは別に, そこに生育しているエゾノギシギシの幼植物を掘取り, また最終調査月である10月に, 生存していた標識個体をすべて掘取った。これらの個体を, 葉身, 葉柄, 根に分けて葉面積と乾物重を測定した。各調査地の土壌水分と相対照度を4月から10月にかけて, 毎月測定した。得られた結果は次の通りである。
    (1) 乾物重の根への分配率は各生育地において秋に増加した。また林縁個体群において, Specific Leaf Area (葉面積/葉重) が著しく増加し, これは耐陰性の獲得につながると考えられた (Fig. 2, Table 1)。
    (2) 林縁個体群は最も個体数の変化が小さかった。裸地個体群では, 冬期間における枯死が多いが, 春から秋にかけては, 林縁と同様ゆるやかに減少した。これにたいして, 放牧地と採草地個体群では, 調査期間を通じて, ほぼ一定の割合で個体数は減少した (Fig. 3)。
    (3) 冬期間の枯死率は, 林縁を除いて裸地率が高い場所ほど高く, 枯死の直接的な要因は凍上によるものであった (Table 3)。
    (4) 春から秋にかけての枯死率は放牧地と採草地の2ヵ所で高く, 放牧や刈取りによる地表面のかく乱が, 枯死の要因と考えられた (Table 4)。
    (5) 葉の昆虫による摂食の程度は, 裸地個体群において, 最も高く, 林縁個体群で低かったが, 摂食が枯死の直接的な要因とはなっていなかった (Fig. 5)。
    (6) 開花率は裸地個体群で最も高く, 以下, 採草地, 放牧地, 林縁の順であった。また, 開花率は相対照度の高い調査地で高かった (Table 3, Fig. 4)。
    (7) 放牧地, 採草地, 林縁の自然個体群では, 芽ばえの生存率が高い生育地で開花率が低く, 生存率が低い生育地で開花率が高い傾向がみとめられた。
  • 第3報 分株の形成・生育について
    千葉 和夫, 川島 長治, 平野 哲也
    1984 年 29 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    コウキヤガラの分株の形成と生育に関する実験と調査を行った。
    1. コウキヤガラの生育は水田条件により著しく差異はあるが, 通常6~7次分株まで生育が進み, 親株から末端分株までの距離は1mを越す。
    2. 分株は親株あるいは分株基部に形成された腋芽の生育したものであるが, 最下位の腋芽は株の第5~6節位に形成されることが多い。そして腋芽 (根茎) の伸長は本葉が3~5枚抽出する頃から盛んになる。
    3. 根茎はしばらく土壌中を横走した後立ちあがり分株となる。根茎が切断されても分株の生存が可能となる時期は, 直立した部分に3枚目の葉が抽出する頃と考えられる。
    4. 分株間の根茎の長さの相違は節間数の差ではなく, 各節間の長さの差によるものである。
    5. 1本の株から伸長する根茎数は1~3本である場合が多い。そして発生時期が遅い高次分株ほどその本数が少くなる傾向がある。
    6. コウキヤガラの根茎は頂芽優勢によって一時的に土壌中を横走しているにすぎないと推察された。
  • 芦田 馨, 杉野 守
    1984 年 29 巻 2 号 p. 138-146
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近畿地方に自生するイネ科雑草52種 (Table 1) を採集し, 葉身の表皮系の構成組織である気孔装置について, 常法のスンプ法により陰画をとり, 主として光学顕微鏡下での写真撮影によりその形態及び分布を調べた。
    1) 気孔装置の大きさが同属内の種間で, 染色体数の倍数化と共に大となる傾向は, エノコログサの3種及び, ウシノケグサ属, スズメノテッポウ属の一部の種間において明らかにみられた。しかし, 他の属内では明らかでなかった (Table 2)。
    2) イネ科雑草の気孔装置は, 全体としてよく似た外形を示したが, 一部の種の副細胞は亜鈴形で他の長楕円形とは異っていた。また, 同一種では葉身の上表皮と下表皮で気孔装置の形がほとんど変らず, 大部分の種においては, その大きさも同じであった。しかし, 一部の種では上表皮と下表皮の気孔装置の長径に明らかな差がみられた (Fig. 1, 2)。
    3) 葉面の気孔装置の大きさ (長径) と分布密度との間には, γ=-0.52で1%レベルの有意な逆相関が認められた (Table 2, Fig. 3)。
    4) 葉身の単位表面積あたりの気孔数は, C4植物の方がC3植物よりも明らかに大であった。また, 調査52種の範囲でC3植物では, 気孔がチヂミザサを除くほとんどの種で, 下表皮よりも上表皮に多く分布していた。これに対しC4植物では, 上表皮に多い種も下表皮に多い種もあった。その極端な例として, 上表皮にのみ分布するC3植物のトボシガラやナギナタガヤ, ウシノケグサ, オオトボシガラと, 下表皮に非常に多く分布するC4植物のメリケンカルカヤ, ススキなどがあげられた (Fig. 3, 4)。
  • 第1報 混植による窒素吸収力の推定
    椛木 信幸, 中村 拓
    1984 年 29 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    水田雑草 (タイヌビエ, コナギ, タマガヤツリ, ミズガヤツリ, クログワイ, オモダカ, ヘラオモダカ, イヌホタルイ, タイワンヤマイ) の窒素吸収特性について検討し, 次の結果を得た。
    1. 混植によって競合関係におかれた場合の窒素吸収力は, コナギ, タイヌビエ, ミズガヤツリで大きかった。また, 窒素吸収量と乾物増加量の関係からみた窒素の利用効率には草種間差があり, タイヌビエ, ミズガヤツリ>コナギ, クログワイ, タマガヤツリ, イヌホタルイ>オモダカ, ヘラオモダカの3群に分けられた。
    2. 各雑草がイネに及ぼす影響を施肥量との関係でみると, コナギは少肥条件下でイネへの影響が大きく, タイヌビエとミズガヤツリは多肥による生育量の増加が大きいこと, またタマガヤツリやタイワンヤマイは多肥ではイネによる光遮へいを受けて生長が抑制されることが認められた。また, 雑草群落比は, 施肥条件の違いを捨象して雑草害の指標として有用であった。
  • 第2報 生育経過および光・温度に対する反応
    椛木 信幸, 中村 拓
    1984 年 29 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    水田雑草 (タイヌビエ, コナギ, タマガヤツツリ, ミズガヤツリ, クログワイ, オモダカ, ヘラオモダカ, イヌホタルイ) とイネ (移植・直播) の生育経過ならびに光・温度に対する反応について比較検討し, 次の結果を得た。
    1. 初期の生育の速いものはミズガヤツリ, タイヌビエ, オモダカであった。個体あたりの乾物重, 窒素吸収量ともにミズガヤツリが圧倒的に大きく, 次に乾物重ではクログワイ, イネ (移植), タイヌビエ, イネ (直播), オモダカと続き, 窒素吸収量ではオモダカ, イネ (移植), クログワイ, タイヌビエ, イネ (直播) の順であった。タマガヤツリ, コナギ, イヌホタルイの乾物重と窒素吸収量は他草種に比べて明らかに小さかった。
    2. 遮光条件下でも生育の低下しにくい草種はオモダカ, クログワイ等であり, 生育の大きく低下する草種は, タマガヤツリ, イヌホタルイであった。また, 低温下で生育が低下しにくい草種はミズガヤツリ, オモダカ, ヘラオモダカであり, 生育の低下が大きい草種は, コナギ, クログワイ, タマガヤツリであった。イネは雑草に比べて低温下や遮光下での生長力は小さかった。
  • 松本 宏, 石塚 皓造
    1984 年 29 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本研究は除草剤シメトリンに対するイネ各品種の有する生理・生化学的性質が, 温度変化に伴ってどのように変化するかを調べる一環として, 前報において報告した吸収, 移行の変化にひきつづき, 各品種の有するシメトリンの分解・代謝能の変化について検討したものである。
    イネの中から日本型でシメトリンに対して抵抗性である品種「日本晴」, インド型で感受性の品種「IR-8」を選び, 両品種とも水耕法により3.2~3.4葉期まで生育したものを供試した。処理2目前に温度の異なった人工気象室 (高温区: 昼32℃, 夜27℃, 低温区: 昼25℃, 夜20℃) に移し, シメトリンの処理は, 各品種の根部をそれぞれ9.39×10-6Mの14C-シメトリン水溶液 (13.6μCi) に2時間浸漬することにより行った。処理終了後はシメトリンを含まない水耕液に移して栽培した。処理は各30個体を1連とし2連で行った。
    所定時間後に採取し根部と茎葉部に分け, それぞれを90%メタノール中で磨砕した。磨砕液はろ過し, 残渣はさらに90%メタノールで2度抽出して抽出液を得た。抽出液はその総放射能を液体シンチレーションスペクトロメーターで測定し, 残渣中の放射能は自動試料燃焼装置による処理を行って同様に測定した。その後抽出液を減圧濃縮し, 水とジクロルメタンで分配を行い, それぞれに可溶の画分を得た。ジクロルメタン画分は薄層クロマトグラフィーによる分析を行った。
    「日本晴」においては, シメトリン由来の放射能は時間の経過と共に, 水可溶性画分および残渣画分への変化が顕著であった。しかし, 処理温度の違いによるこれら画分への変化の割合には差はみられなかった (Fig. 1)。「IR-8」においては, 水可溶性画分および残渣画分への変化の割合は小さかった。また, 温度による差は認められなかった (Fig. 2)。
    シメトリンの作用点は光合成の明反応の阻害と考えられるので, 茎葉中における放射能濃度について検討した (Table 1)。茎葉部中の濃度は「日本晴」では高温区において高い傾向を示したが, 温度処理区間で各画分への変化割合には差は認められなかった。「IR-8」においては処理温度の違いによる茎葉内の濃度変化はみられず, また, 各画分への変化割合にも大きな差はなかった。
    次に茎葉中における各化合物および分解・代謝産物について検討した (Table 2)。「日本晴」の茎葉中においてはシメトリンの分解が迅速に進行し, 光合成阻害活性を有する親化合物とそのモノ脱エチル体の総量は, 処理24時間後において, 高・低温処理区とも約28%にまで減少した。一方,「IR-8」においては上記2つの化合物の総量は, 処理24時間後において高温処理区で72%, 低温処理区で78%であった。また,「IR-8」においてはモノ脱エチル体が多く検出され, この分解経路は先に報告したシメトリンに対して感受性の高いタイヌビエのそれと似ていた。
    以上の結果から, これらの品種のシメトリン分解・代謝能は, 温度変化によってほとんど影響を受けないことが明らかとなり, 先に報告した日本型イネにみられた温度上昇に伴う吸収・移行の速度増加の結果としておこる茎葉内濃度の上昇が, 葉害発生の主因と考えられた。また, この一連の研究によってイネの有するシメトリンに対する生理的性質の温度変化に対する感応性は, 品種によって顕著に異なることが明らかにされた。
  • 小林 央往, 冨永 達, 中山 壮一, 松本 宏, 小林 勝一郎
    1984 年 29 巻 2 号 p. 165-174
    発行日: 1984/09/27
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
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