1) 生態, 形態特性の異なるミズガヤツリ系統の水稲収量に及ぼす影響を究明するため, 第1因子を塊茎植付密度 (0, 2, 8, 16/m
2) とし, 第2因子に神奈川県内産の代表3系統 (横浜市新吉田産, 海老名市上郷産, 南足柄市和田原産) を供試し, 1975年5月8日 (水稲播種翌日) に水稲乾田直播ほ場に塊茎を植付け, 3反復の部分分割区法で実験を行った。
2) 水稲群落内での供試ミズガヤツリ系統は, 出芽期, 出穂期に遅速があり, 葉面積, 茎葉重及び塊茎生体重などが著しく異なり, 新吉田系統>上郷系統>和田原系統の生育量差が示された。これらの諸形質と玄米収量との間には高い負の相関(
r=-0.758***~-0.889***)が認められた。
3) 群落生産構造調査の結果 (第2図), 3系統は草高とともに草高別の葉面積分布が著しく異なった。新吉田系統は草高が最も高く, 上部の葉面積が他系統よりきわめて大きく, 和田原系統は草高低く上部葉面積が最小で, 上郷系統は両者の中間的特性を示し, 水稲との光競争に系統的差異があることが推察された。
4) 塊茎植付密度と玄米収量との間には0.1%水準で有意差があり, 同一植付密度内では5%以上の有意水準で系統区間に収量差が認められ (第2表), いずれの塊茎植付密度でも新吉田系統区>>上郷系統区>和田原系統区の順で減収した。収量構成要素としては, 穂数, 1穂籾数, m
2当たり全籾数が玄米収量に大きく関与していた。
5) ミズガヤツリの系統により水稲の生育収量への影響度が異なることが明らかとなった。新吉田系統は, 他系統に比し, 出芽, 出穂期が早く, 初期から水稲との競争に有利な特性を備え, しかも, 草高が高く水稲の同化中心葉より上部に葉面積が多く分布し, 水稲の分けつ抑制による穂数減, さらには幼穂分化期~幼穂形成期にかけての籾数決定期に著しい光と養分 (N) の競奪影響を与え, 大きな減収をもたらした。
6) 以上の結果から, ミズガヤツリの系統による生育特性の差異は, 水稲に対する雑草害の程度に著しい影響を及ぼすことが明らかとなり, 今後の雑草害研究の推進や防除診断技術の確立等の上で多くの示唆を与えた。
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