スルフォニルウレア系の水稲用除草剤ベンスルフロンメチルは, イネ品種間に感受性差異のあることが知られており, その原因がイネに内在する性質によると示唆されている。本報は, 韓国で行なわれた広範なイネ品種の選抜試験で特徴的な反応を示した, Milyang 30, Shingwang, Sangpung, Shinseonchalbyeo の4品種と, 日本晴品種を用いてベンスルフロンメチルに対する感受性, 吸収, 移行および分解代謝について, 水耕法による根部処理により, 比較検討を行なった。
生育試験は, まずイネ根部を10
-6, 5×10
-6および10
-5Mの薬液を含む水耕液に4日間浸漬した。その後薬液を含まない水耕液に移し, さらに6日間生育させた。処理開始から10日目に茎葉, 根部の乾燥重と, 4葉, 5葉および6葉の長さを測定した。薬剤処理後に大きく成長して行く部分に着目してベンスルフロンメチルに対する品種間の感受性差異をみると, 日本晴>Sangpung>=Shinseonchalbyeo>Shingwang>>Milyang 30の順に感受性が高かった (第1表)。次に
14C-ベンスルフロンメチルを用いて吸収力と根部から茎葉部への移行率を, 10
-6Mおよび10
-5Mの2濃度で検討した。最も感受性の高かった日本晴は, 2濃度とも吸収6時間では他品種に比べ低い値を示し, 48時間では高い値を示した。一方, 感受性の低かった Shingwang, Milyang 30は, 10
-6Mでは供試品種中で高い値を示した。しかし10
-5Mでは, Shingwang は10
-6M同様高い値を示したのに対し, Milyang 30は低い値を示した (第1図)。移行率では, Milyang 30は10
-6M, 10
-5Mとも他品種に比べ低い値を示したが, Milyang 30に次いで感受性の低かった Shingwang は10
-6Mではあまり高い値を示さず, 10
-5Mでは5品種のなかで高い値を示した。また日本晴は Shingwang とは逆の関係を示した (第2図)。以上のことにより, 吸収力, 移行率ともに感受性の品種間差異を説明する大きな要素ではないと考えられた。
14C-ベンスルフロンメチルの代謝実験は, Shinseonchalbyeo を除いた4品種について行なった。根部を10
-6Mの水溶液に6時間および24時間浸漬し, 植物体中の
14C-化合物を抽出, 分離, 同定した。その結果, 感受性の低かった品種では, 根部においてO-脱メチルベンスルフロンメチルおよび水溶性物質の生成の大きいことが明らかとなった (第3, 4図)。
以上, 生育試験におけるベンスルフロンメチルに対するイネ品種の感受性差異を, 薬剤の吸収, 移行および分解代謝から考察すると, 最も感受性の低かった Milyang 30では, その感受性の低い原因として根部から茎葉部への移行率が小さかったこと, および根部での分解能が他品種に比べ大きかったことが考えられた。また, Milyang 30に次いで感受性の低かった Shingwang では, その原因として根部での分解能の大きいことが考えられた。
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