東北地域で一般的な畑雑草15種 (越年生雑草9種, 一年生夏雑草6種) について, 種子の休眠の程度と覚醒条件, さらにその生態的意義を明らかにする目的で, 数種の休眠覚醒処理と発芽の温度条件との組合せで試験を実施した。
越年生雑草は風乾貯蔵種子でも, いずれかの発芽温度条件では発芽が可能であるが, 20℃暗所湿潤処理によって, 発芽可能な温度条件の拡大や発芽率の増大が認められた。このことから越年生雑草では, 夏期の高温湿潤条件で休眠覚醒が進み, 晩夏から秋期にかけて発生のピークを迎えるものと考えられた。一年生夏雑草については, 風乾貯蔵種子はいずれの温度条件においてもほとんど発芽は認められず, 休眠程度は越年生雑草に比べかなり強いものと考えられた。20℃暗所湿潤処理はヒメイヌビエ, メヒシバ, ホナガアオゲイトウおよびスベリヒユに対しては, 5℃暗所湿潤処理と類似した効果を示すが, ハルタデとエノコログサでは5℃暗所湿潤処理の休眠覚醒効果は高いものの, 20℃暗所湿潤処理の効果は認められなかった。また前4者については, 低温域での発芽能力に乏しく, 後2者では低温域での発芽能力が高いことから, ハルタデとエノコログサでは休眠覚醒における低温遭遇の要求性の大きさが, 越冬前の不時的発生の防止機構になっているものと推察された。また, ハルタデとエノコログサは, 比較的短期間の種子埋土で休眠覚醒が進むことから, 早期発生草種となる可能性が示唆された。
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