雑草研究
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43 巻, 4 号
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  • 田中 易, 吉川 治利
    1998 年 43 巻 4 号 p. 291-299
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    水耕栽培条件で, イネ (Oryza sativa, 品種; 日本晴) の2葉期に1~100ppbのイマゾスルフロンを処理すると、第3, 第4, 第5葉の伸長は30ppb以上で阻害され, 根部乾物重は最低濃度の1ppbから抑制された (Fig. 1)。30ppbのイマゾスルフロンにより抑制されたイネの第3葉の伸長は, 100ppmの3種の分岐鎖アミノ酸, バリン, イソロイシンおよびロイシンの添加によりほぼ完全に回復した (Fig. 2)。イマゾスルフロンはエンドウより調製したアセト乳酸合成酵素 (ALS; EC 4. 1. 3. 18) の活性を大きく阻害し (I50=24nM), 基質のピルビン酸との間には非拮抗阻害を (Fig. 4), コファクターのチアミンピロフォスフェート (TPP) との間には不拮抗阻害を示した (Fig. 5)。イマゾスルフロンによる阻害は経時的にゆっくりと増大し, 2相性を示した (Fif. 6)。また, 最終定常状態の阻害は初期状態の阻害よりも約20倍強かった (Fig. 6)。イマゾスルフロンに感受性の低いイネから調製したALSは, 調製前のイネの葉令および光の有無による栽培条件の違いに関係なく, イマゾスルフロンに高い感受性を示した (I50=14~45nM) (Table 1)。以上のことより次のことが示唆される。イマゾスルフロンは他のスルホニル尿素系の除草剤同様, 植物のバリン, イソロイシンおよびロイシン生合成系の最初のステップに関わっているALSに直接作用することにより, バリン, イソロイシンおよびロイシンの生合成を阻害する。本除草剤は slow-binding なALS阻害剤であり, そのALS結合部位はピルビン酸およびTPPの結合部位とは異なる。イネの葉令および光の有無による栽培条件の違いによるALSの本除草剤に対する感受性の差はほとんどなく, また, 本除草剤に対して感受性を示す他の植物種における本除草剤に対するALSの感受性と大差ないことから, イネ本来の感受性の低さとは関係ない。
  • 内田 成, 荒木 順一, 青山 良一, 西 静雄
    1998 年 43 巻 4 号 p. 300-306
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    グリホサートによるスギナ防除に及ぼす生育ステージの影響を検討するため, 1/5000aポットに生育させたスギナを供試して, グロースチャンバー内で実験を行った。 栄養茎の生育初期 (草丈3~13cm・分枝前~分枝始期), 栄養茎の生育盛期 (草丈15~25cm・分枝盛期), 栄養茎の衰退期 (草丈15~30cm・自然壊死始期) の3時期にグリホサートを処理した結果, スギナ防除には生育盛期の処理が最も有効であった。
    次に, グリホサートによるスギナ防除に及ぼす土壌水分ストレスの影響を検討するため, 土壌を乾燥させて栄養茎の先端部分が萎凋するまでストレスを与えた試験区と, 通常に灌水を行って土壌を常時適湿状態に保った試験区を設定してグリホサートを処理した結果, ストレスを与えたスギナよりも通常に灌水を行ったスギナの方がグリホサートの影響を強く受けた。
  • ポーンプロム トサポン, 卞 鍾英
    1998 年 43 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    Imazethapyr に対するトウガラシ品種間の耐性反応を植物とALS酵素水準で検討した。 耐性品種の Red Top と Happy Dry は, 感受性品種の Korea と Hanam 品種に比べて草丈および乾物重から見ると, 4倍の耐性を示した。 耐性品種でALS活性を50%阻害する Imazethapyr 濃度は感受性品種に比べて10倍の高い濃度を示した。 この結果はALS感受性の差異は, Imazethapyr 耐性に対する作用点での変化に基因したことを示唆しているし, ALS酵素に因る耐性水準は, Imazethapyr のトウガラシの耐性反応と関連していると考えられる。
  • 伏見 昭秀, 的場 和弘, 田村 良文
    1998 年 43 巻 4 号 p. 312-316
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ヒルガオの繁殖の実態を解明し, 生態的特性を考慮した防除技術を開発するため, 本草種の乾物生産特性と地下部の栄養繁殖器官である根茎の成長を調査した。
    ヒルガオの乾物生産特性として次のことが明らかになった。ヒルガオの地上部の旺盛な生育は植え付けを行った4月中旬から6月中旬であり, 8月中旬頃には枯死が認められた。地下部の根茎の旺盛な生育は6月下旬頃から試験終了時の10月中旬まで行われた。6月中旬頃に主たる生育の部位は地上部から地下部の栄養繁殖器官の根茎に移行することが明らかになった。
    ヒルガオの生育にともなう根茎の成長として根茎分枝の発生順位別本数, 乾物重および腋芽数の推移を調査し以下の結果を得た。6月中旬頃には1次分枝の発生は終了し, 2次分枝の発生が認められた。 8月中旬に根茎構造は4次分枝まで発達していたが1次分枝と2次分枝が乾物重と腋芽数, いずれも大きな割合を占めた。10月中旬の試験終了時には6次分枝の発生が観察された。腋芽数は試験期間中にポットあたり供試根茎の24個から2312個に増加した。
  • 佐藤 節郎, 舘野 宏司, 小林 良次, 坂本 邦昭
    1998 年 43 巻 4 号 p. 317-327
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    1995年4月3日, 1996年4月28日および同年5月24日にハリビユ種子をそれぞれ, 17.8, 26.7および26.7g/aの量で播種した後, トウモロコシ (品種: Pioneer 3352) を666本/aの密度で播種した。リビングマルチとしてイタリアンライグラス (品種: タチワセ) をトウモロコシと同時に0.3および0.6kg/aの量で播種, または, アトラジン+アラクロール10.0+10.8a. i. g/aの量で土壌散布した。播種後5.5-11週に, トウモロコシとハリビユを定期的に刈り取り, リビングマルチ区および除草剤区の両草種の生長およびトウモロコシの窒素吸収の推移を無処理区と比較した。また, トウモロコシ収量と収穫時のハリビユの生長を同様に比較した。
    4月3日播種トウモロコシでは, リビングマルチは競合によりハリビユを十分に抑制したが (Fig. 1), 同時にトウモロコシとも激しく競合し, トウモロコシの生長は有意に減少し, トウモロコシの葉の窒素含有量も低下した (Fig. 2, Table 2, 3)。4月28日播種トウモロコシでは, リビングマルチは一定のハリビユ抑制効果を示し (Fig. 1), トウモロコシの生長と葉の窒素含有量にもほとんど影響を与えなかった (Fig. 2, Table 2, 3)。5月24日播種トウモロコシでは, イタリアンライグラスが出芽後の高温により十分に生長しなかったため, リビングマルチはハリビユを抑制できず (Fig. 1), また, トウモロコシの生長や窒素吸収に影響を与えることはなかった (Fig. 2, Table 2, 3)。いずれの播種日のトウモロコシも, 生育期の純同化量 (NAR) は, いずれの調査日においても有意な雑草防除処理間差が認められず, イタリアンライグラスと激しく競合した4月3日播種におけるリビングマルチ区のトウモロコシにおいても, NARの明確な低下は認められなかった (Table 3)。リビングマルチ区トウモロコシの収穫時には, 4月3日播種ではハリビユが全く認められず, 4月28日播種ではハリビユが認められたものの, その密度と重量は無処理区に比べ有意に小さく, 5月24日播種ではハリビユの密度と重量は無処理区とほぼ同等であった (Fig. 4)。トウモロコシ収穫時の無処理区のハリビユの密度と重量は, 4月28日および5月24日播種において4月3日播種よりも小となった (Fig. 4)。リビングマルチ区のトウモロコシ収量は, 無処理区に比べ, 4月3日播種で34-40%, 4月28日播種で11%減少したが, 5月24日播種ではリビングマルチ区と無処理区の間に有意な差は認められなかった (Fig. 5)。アトラジン+アラクロールの土壌処理は, トウモロコシの生長, 生長期の窒素吸収および収量を低下させることなくハリビユを十分抑制できた (Fig. 1-5, Table 2, 3)。
    イタリアンライグラスリビングマルチは, 若干の減収を前提とすれば, 4月下旬に播種するトウモロコシにおいてハリビユの防除のために利用が可能であり, また, 有機物の連続的な投与により土壌処理剤の効果が不十分な圃場では有効な技術となりうると考えられた。
  • 小笠原 勝, 野崎 智仁, 竹内 安智, 近内 誠登
    1998 年 43 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    生育環境としての土壌水分, 播種深度, 湛水深および地温を変えて, 根箱および円筒カラム内で育成した水稲 (品種, ホシノヒカリ) とイヌビエ根系の外部形態を画像解析により比較した。
    (1) 水分条件; 畑および湛水条件下において, イヌビエの総根長, 総冠根長, 冠根数および根系のフラクタル次元は播種21日後から水稲を上回った。根系形態上のイヌビエと水稲の違いは, 冠根数よりも総根長とフラクタル次元で顕著であった。また, いずれの水分条件下においても, イヌビエ根系の伸長角度は水稲よりもわずかに小さかった。(2) 播種深度; イヌビエおよび水稲の総根長はそれぞれ0.5cmおよび1cmの播種深度で最も長く, 両者の総根長の違いは1cmの播種深度で最大であった。(3) 湛水深; イヌビエの総根長およびフラクタル次元は0.5cm水深区で水稲を上回ったが, 8cm水深区で逆に下回った。(4) 地温; イヌビエと水稲の根は24℃で最大であった。しかし, 15℃では, 水稲の根はほとんど伸長せず, イヌビエとの間に著しい差が生じた。以上の結果から, 土壌水分, 播種深度, 湛水深および地温を変えて育成した場合に, イヌビエの根系形態が直播水稲と異なることが判明した。また, 地温の低い条件や浅水条件, さらには水稲の播種深度が深く, イヌビエの発芽深度が浅い場合に, イヌビエの根の成長は水稲を上回り, このような生育環境において, 直播水稲とイヌビエ間の地下部における競合が顕著となることが示唆された。
  • 小笠 原勝, 野崎 智仁, 竹内 安智, 近内 誠登
    1998 年 43 巻 4 号 p. 334-340
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    イネ, エノコログサ, イヌビエ (無芒型), メヒシバ, オヒシバおよびセイバンモロコシを根箱および円筒カラムで育成し, これらイネ科植物の根系形態を総根長 (L), 根の投影面積 (A), フラクタル次元 (F), 根の平均直径 (D) から比較した。6種類のイネ科植物は根系形態から, 3つのグループに大別された。即ち, (1) L, A, Fは生育初期において大きな値を示すが, 葉令の進展とともに緩やかに増加するイネ, (2) L, A, Fが生育初期で小さな値を示すが, 葉令の進展とともに急激に増加するメヒシバ, イヌビエ無芒型, オヒシバ, エノコログサ, (3) LとAは生育初期で小さな値を示し, 葉令の進展に伴い急激に増加するが, Fは緩やかに増加するセイバンモロコシである。また, メヒシバとセイバンモロコシの根の平均直径は生育初期において大きく変化しないことも判明した。さらに, イヌビエの無芒型と有芒型およびヒエの成長を畑および湛水条件下で比較したところ, 無芒型の茎葉新鮮重と総根長は有芒型よりも土壌水分の影響を受けにくいことが明らかになった。このようなイヌビエの無芒型と有芒型の茎葉と根系の水分反応性の違いが, 幅広い水分環境に生育するイヌビエの生態的特性に, 深く関っているものと考えられる。
  • 小林 由佳, 伊藤 操子
    1998 年 43 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    アレロケミカルとして過去に報告されたことのある21種類のフェノール化合物の阻害活性を水溶液試験と土壌混和試験によって相対的に評価した。水溶液試験では, juglone, coumarin, t-cinnamic acid, o-hydroxyphenylacetic acid および 3-phenylproponic acidは1.0mMにおいてレタスと栽培ヒエの幼根の伸長を顕著に阻害し, salicylic acid,β-resorcylic acid および benzoic acid の阻害活性がそれに準じた。0.1mMでは juglone を除く全ての化合物の阻害活性が減少した。また, レタスは栽培ヒエより強く阻害された (Fig. 1)。次に水溶液の阻害活性が最も高かった8種類のフェノール化合物を土壌に混和して, レタス幼根の伸長に対する影響を調査した。juglone は最も高い阻害活性を示し, coumarin がそれに準じた (Fig. 2)。また, 14種の供試植物に対して土壌に混和した juglone と coumarin が与える影響を調査した。juglone は2.0μmol/g土壌において全ての供試植物の幼根伸長を強く阻害したが, 同じ濃度における coumarin の阻害活性は供試植物間で異なった。また, 0.2および0.4μmol/g土壌においては両化合物の阻害活性が供試植物間で異なった (Fig. 3)。この場合, 供試植物の感受性は供試植物の科とは関係なかったが, 種子の大きさとは関係があるようであった。両化合物の阻害活性は大きな種子の供試植物では小さいが, 小さな種子の供試植物については種によってその感受性が大きく異なった (Fig. 4)。
  • 李 増周, 金 乗徹, 松本 宏, 臼井 健二
    1998 年 43 巻 4 号 p. 349-358
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    有害な活性酸素種を生成する環境ストレスに対する植物の適応過程を把握するための一環として, キュウリとツルナシインゲンマメをマグネシウム (Mg2+) 欠乏の水耕液で栽培した時に発現するクロロフィル含量とMg2+濃度の変化, 抗酸化酵素の活性変動などを調べた。また, ツルナシインゲンマメの活性酸素生成型除草剤パラコートとオキシフルオルフェンに対する抵抗性に及ぼすMg2+欠乏の影響についても検討した。
    Mg2+が充分に供給された水耕液で栽培されたキュウリとツルナシインゲンマメでは初生葉のMg2+含量が増加したが, Mg2+欠乏で栽培された植物では顕著に減少した (Fig. 1)。Mg2+欠乏は, ツルナシインゲンマメよりキュウリにおいて, クロロフィルおよび蛋白質含量を著しく減少させた (Figs. 2, 3)。また,Mg2+の欠乏によってキュウリではアスコルビン酸ペルオキシダーゼ (AP), グルタチオンレダクターゼ (GR) ならびにスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) が, ツルナシインゲンマメではAPおよびSODの活性が著しく高くなることが判明した (Fig. 4)。
    ツルナシインゲンマメは活性酸素を生成する作用があるパラコートとオキシフルオルフェンに対し感受性を示したが, Mg2+欠乏条件下で育成した植物はクロロシスと水分損失率が少なく, 両薬剤により抵抗性になることが明らかになった (Figs. 5, 6)。これらの結果から, Mg2+の欠乏が供試植物種において, 有害な活性酸素種を消去する作用がある抗酸化酵素活性を促進する作用があることが示され, また, ツルナシインゲンマメではAPとSOD活性の増加が, 活性酸素種を生成する除草剤に対する植物の抵抗性を高めた一つの原因になっているものと推察される。
  • 徐 錫元
    1998 年 43 巻 4 号 p. 359-363
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
  • 森田 弘彦, 李 度鎭, 小荒井 晃
    1998 年 43 巻 4 号 p. 364-367
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
  • 小荒井 晃, 露崎 浩, 伏見 昭秀, 白倉 伸一
    1998 年 43 巻 4 号 p. 371-375
    発行日: 1998/12/28
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
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