わが国の水稲作においては一年生雑草に有効な除草剤が30年近く連用されている。その結果, 除草剤の性能が十分に発揮できる水田では, 防除後に残草する一年生雑草がほとんど認められず, 埋土種子も減少している水田が認められている。こうした水田では埋土種子数の動態を把握することにより, 雑草発生予測を行い, 次年度以降の防除対策を策定することが可能になると考えられる。
本研究では実際に水稲を栽培している21水田における雑草の埋土種子数を発芽法により推定し, その動態を調査した。埋土種子の動態を明らかにする方法として, 耕起前に表土から採取した一定土壌中に存在する種子数と耕土中~下層に存在する埋土種子数を比較した。防除の結果, 表土の種子数が耕土中層より減少した水田では, 同様の防除と耕転を続けることにより, 耕土中~下層の埋土種子数も順次減少し, これらの埋土種子数の間には相関性が認められた。一方表土の埋土種子数が増加傾向にある場合には埋土種子数が低下傾向となるように防除対策を強化する必要性が判断できた。
埋土種子の増減率は埋土種子数によって異なり, 埋土種子が増加傾向にある場合には種子数が少ないほどその増加率は大きくなった。また, 減少傾向にある場合には, 面積1m
2で耕土層1.5cmあたりの埋土種子数3,000粒が分岐点となり, 3,000粒以上では12.2~18.5%, 3,000~1,000粒では12.2~3.4%の減少率であった。
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