雑草研究
Online ISSN : 1882-4757
Print ISSN : 0372-798X
ISSN-L : 0372-798X
56 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著論文
  • 中谷 敬子, 橋爪 健, 土師 岳, 澁谷 知子, 三浦 重典
    2011 年 56 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    樹園地等の草生栽培に用いられるオオナギナタガヤとナギナタガヤの出穂性と結実種子の発芽特性を比較検討した。戸外における出穂始期はつくば市,盛岡市ともにオオナギナタガヤの方がナギナタガヤと比較して約3週間程度早かった。オオナギナタガヤは無処理種子を10,13,16時間日長のいずれの条件で栽培した場合でも出穂したのに対し,ナギナタガヤは5°Cの低温条件で30日以上処理した吸水種子を16時間日長で栽培した場合のみ出穂した。したがって,ナギナタガヤは出穂に低温条件を必要とする長日植物であることが明らかとなった。両種とも種子の発芽適温域は10∼25°Cであったが,5°Cおよび30°Cの発芽率はオオナギナタガヤの方がナギナタガヤより高かった。両種とも−3°Cで21日間処理した吸水種子の死滅率は3%以下となり,低温耐性が高かった。一方,35°C 21日間処理したオオナギナタガヤの吸水種子の死滅率は31%であったのに対し,ナギナタガヤの同種子の死滅率は12%となり,高温耐性はナギナタガヤの方が高かった。以上の様に,草生栽培への適用性や国内における自生域拡大に関与する生態的特性が両種で異なることが明らかになった。
  • 石川 枝津子
    2011 年 56 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    北海道十勝地域に導入がはかられている機械収穫に適した主茎型ダイズ品種狭畦栽培の雑草対策を確立するために,ダイズ栽培農家圃場3カ所の雑草調査を2003年に,狭畦と除草剤による防除効果を評価する圃場試験を2005年と2006年に実施した。各農家圃場と試験圃場ともにタニソバの出現頻度が高かった。圃場試験では,2カ年ともに播種後出芽前のリニュロン50%水和剤(0.75kg a.i./ha)とトリフルラリン44.5%乳剤(0.89kg a.i./ha)の混用処理ではタニソバの生残数が多く,30cmの狭畦においても防除効果は不十分であたった。2カ年ともに,リニュロンとトリフルラリン処理に追加して,ビアラホス18%液剤(0.54kg a.i./ha)の畦間処理を行うことでタニソバを有効に防除できた。さらに,専用の散布機を使用することで,30cmの狭畦でもダイズ収量に影響なくビアラホス剤の畦間処理が可能であった。以上の結果から,播種時のリニュロンとトリフルラリン処理,雑草の発生が多い場合にはビアラホスを畦間に追加処理する体系がダイズ狭畦栽培の雑草対策として有効であった。
  • 赤坂 舞子, 渡邊 寛明, 川名 義明
    2011 年 56 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    多収水稲品種である「モミロマン」と「タカナリ」にみられるベンゾビシクロン感受性形質の遺伝要因を解明する目的で,これら2品種と「日本晴」の正逆交配により得られたF2系統のベンゾビシクロン感受性を評価した。感受性評価にあたり,8水稲品種と市販の混合製剤を用いて条件検討を行ったところ,移植1日後の水稲実生にピラゾスルフロンエチル+フェントラザミド+ベンゾビシクロン1kg混合粒剤を標準量の2倍量を処理することにより,供試した水稲品種の大半でベンゾビシクロン感受性評価ができることを確認した。この条件で親系統およびF2系統に除草剤を処理し,処理後29日目の生育程度を調査したところ,親系統である「日本晴」はベンゾビシクロン非感受性,「モミロマン」と「タカナリ」は感受性であった。さらに,F2系統の結果をもとに行った適合度検定において,非感受性個体と感受性個体の分離が3 : 1になることが示された。このことから,「モミロマン」と「タカナリ」のベンゾビシクロン感受性には細胞質側の遺伝的関与は認められず,核に存在する劣性の主働遺伝子に支配されていることが示唆された。
学会賞受賞業績
総説
  • 佐合 隆一
    2011 年 56 巻 2 号 p. 104-110
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換え(GM)作物は,2009年には全世界25カ国の1億3,400万ヘクタールで栽培され,その85%以上が除草剤耐性GM作物であると推定されている。除草剤耐性GM作物を利用した雑草防除技術は1996年頃から本格的に普及を始めた中で,わが国では本GM作物の実用栽培は行われていない。そこで本GM作物を利用した雑草防除技術が,わが国において必須の防除技術であるか,また化学的防除の欠点を補いうる革新的技術であるかについて検討した。glyphosate剤は殺草スペクトラムが広く,環境負荷も含めた安全性の高い除草剤であり,本剤を利用した雑草防除は最も優れた選択肢の一つである。しかし,同一作用点の除草剤の連用や反復使用は,やがてその作用点に抵抗性をもつ雑草の出現を生じることが米国において証明された。特定の除草剤に耐性を有するGM作物の作出による雑草防除は,その除草剤の商品寿命を短命化すること,抵抗性雑草対策が必要な圃場では,GM作物導入によるメリットとされていた事柄が実現し得ないことが明らかとなった。こうしたことから,除草剤による防除を続ける限り,特定の除草剤使用に極端に偏るのではなく,新しい作用点を有し,殺草スペクトラムの異なる新規化合物開発の必要性は不変であり,重要であることが確認された。
技術レポート
資料
feedback
Top