オオバコの刈取りに対する個体の回復能力と水田畦畔における生残要因を現地調査と育成試験により検討した。神奈川県厚木市の水田畦畔では,オオバコ個体群は主に越冬個体で構成され,概ね300個体/m
2以下の密度で安定して推移し,6~8月にのみ実生の発生とともに一時的に増加した。6~8月の草刈りの度に花茎は未熟段階で切除された。刈取りの終了した11月以降に種子の自然散布が生じた。9月,翌年4月および7月に播種した個体に対し,水田畦畔の頻度で刈取りを行い,無刈取りとの生育を比較した。9月播種個体では翌年の刈取り後の生葉数は刈取りの度に無刈取りと同数もしくはそれ以上にまで回復し,茎・根部乾物重は無刈取りと比較してわずかに減少した。一方,4月および7月播種個体では両形質とも無刈取りと比較して明らかに減少した。また,9月播種個体では,翌年6月の刈取り時に切除した花茎のうち,蒴果が肥大中の種子の発芽率は88%を示した。以上から,オオバコ種子は自然散布前に発芽できること,越冬個体では刈取り後の地上部回復能力が高いことが明らかとなった。このことが水田畦畔において個体が生残し,個体群を形成・維持している一因と判断された。
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