雑草研究
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62 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 橘 雅明, 藤本 寛
    2017 年 62 巻 3 号 p. 97-109
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    水稲乾田直播栽培において,ヒメタイヌビエとクサネムを対象に,埋土種子数と防除に必要な除草剤処理回数との関係を検討した。ヒメタイヌビエの埋土種子数が少ない場合(1,000粒/m2以下)は,水稲出芽直前のグリホサートカリウム塩液剤処理と乾田期ノビエ5葉期のビスピリバックナトリウム塩液剤,カルフェントラゾンエチル・フルセトスルフロン水和剤またはペノキススラム水和剤処理からなる計2回の除草剤処理で防除できた。ヒメタイヌビエの埋土種子数が多い場合(5,000粒/m2以上)は,入水後の一発処理除草剤を含む計3回の除草剤処理で防除できた。一方,クサネムについては,埋土種子数が多い場合(900粒/m2)でも,水稲出芽直前のグリホサートカリウム塩液剤処理と乾田期ノビエ5葉期のビスピリバックナトリウム塩液剤,カルフェントラゾンエチル・フルセトスルフロン水和剤またはハロスルフロンメチル水和剤処理からなる計2回の除草剤処理で防除できた。乾田期に出芽したクサネムが残存した場合は,入水後のピラクロニルを含有する一発処理除草剤の処理が有効であった。

  • 石岡 厳, 窪田 潤, 橘 雅明, 沖 陽子
    2017 年 62 巻 3 号 p. 110-116
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    土壌圧密程度の違いがマルバルコウの出芽可能深度や出芽数に及ぼす影響を検討するために圃場試験およびポット試験を行った。圃場試験では,灰色低地土で圧密程度の異なる処理区を設置し,出芽数・出芽深度等を調査した。ポット試験では,灰色低地土およびマサ土で土壌圧密程度の指標として仮比重を用い,仮比重が低い区(耕起播種した区に相当),仮比重が高い区(耕起後踏圧し部分耕播種した区に相当)およびその中間の3水準での出芽試験を行った。

    圃場試験でのマルバルコウの最深出芽深度は仮比重が低い区では8 cmであったが仮比重が高い区では4.5 cmと,仮比重が高くなると最深発芽深度は浅くなり,ポット試験でも同様の傾向を示した。ポット試験でのマルバルコウの出芽率は,いずれの土壌でも播種深度1 cmでは全ての仮比重の区で95%以上と高かったが,播種深度5 cmでは仮比重が高くなるにつれて出芽数が減少し,播種深度10 cmでは全ての区で出芽が認められなかった。

    以上より,土壌の仮比重を指標として土壌圧密の違いがマルバルコウの出芽可能深度や出芽率に及ぼす影響を評価したところ,仮比重が高いほど深い位置からの出芽が妨げられることが明らかとなった。

  • 松田 晃, 岩上 哲史, 青木 大輔, 内野 彰
    2017 年 62 巻 3 号 p. 117-125
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    山形県内に発生したオモダカ(Sagittaria trifolia L.)のスルホニルウレア系除草剤(SU剤)に対する抵抗性の発生状況を,地上部再生法による抵抗性検定とアセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子解析により調査した。SU剤抵抗性オモダカは県内に広く分布し,作用点抵抗性(Target-site resistance: TSR)と非作用点抵抗性(Non target-site resistance: NTSR)の両方のバイオタイプが検出された。感受性,NTSR,Pro197変異型TSRは広範な地域で発生が確認されたが,Trp574変異型TSRの発生が確認された地域は限られていた。これらのバイオタイプの異なるSU剤抵抗性オモダカを,塊茎から発生させた個体を用いたポット試験に供試し,代替除草剤の効果を調査した結果,非SU系成分のピラクロニル,ピラゾレートおよびテフリルトリオンがいずれのバイオタイプにも高い効果を示した。さらに,地上部再生法でベンスルフロンメチル,ピラゾスルフロンエチル,ピリミスルファンを供試して各バイオタイプの反応を比較したところ,感受性系統には3剤とも効果が高かったが,NTSRにはベンスルフロンメチルの効果のみ低かった。一方,Pro197変異型TSRにはベンスルフロンメチルとピラゾスルフロンエチルの効果が低く,Trp574変異型TSRには3剤とも効果が低かった。従って,無処理区とこれら3剤の処理を設けることにより,地上部再生法によって感受性系統とNTSR,TSRのおよその判別が可能であると考えられた。

  • 薄井 雄太, 青木 政晴, 三浦 恒子, 内野 彰
    2017 年 62 巻 3 号 p. 126-133
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/14
    ジャーナル フリー

    アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤抵抗性イヌホタルイは,作用点となるALSのアミノ酸置換の差異によって交差抵抗性が異なる。本研究では,イヌホタルイの実生の除草剤反応を利用して,アミノ酸置換の異なる抵抗性を簡便かつ迅速に識別する方法(実生検定法)を検討した。イヌホタルイ種子を除草剤水溶液に浸し,実生の生育を観察したところ,第1葉身長において感受性系統と抵抗性系統との間に明瞭な差異が認められた。検定に適した除草剤濃度は,チフェンスルフロンメチルが75 ng a.i./mL,ベンスルフロンメチルが600 ng a.i./mLであった。またプロピリスルフロン170 ng a.i./mLまたはピリミスルファン2700 ng a.i./mLの処理により,アミノ酸置換の異なる抵抗性系統の識別が可能であった。秋田県内のイヌホタルイについて実生検定法を適用すると,3系統が抵抗性と判定された。これは,ポット試験の結果およびALS遺伝子の解析結果とよく一致した。この結果,秋田県内の北部地域にもALS阻害剤抵抗性イヌホタルイが発生していることが明らかとなり,発生地域が全県的に拡大している可能性が示唆された。

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