水田や畦畔に侵入した特定外来生物ナガエツルノゲイトウに対する有効な防除法を検討するため,水稲用および水田畦畔用除草剤(計23剤)の防除効果をポット試験で評価した。4月,6月,8月の3回本種の切断茎を植え付け,萌芽前,萌芽始期,生育期の個体に除草剤を処理した。湛水処理が必要な水稲用除草剤ではピラクロニル水和剤の萌芽前および萌芽始期処理,落水処理が必要な水稲用除草剤ではフロルピラウキシフェンベンジル乳剤(以下Flo乳剤)の生育期までの処理により地上部乾物重が抑制されるなど,処理時期ごとに有効な除草剤を明らかにした。水稲用除草剤の種類ごとに切断茎と萌芽茎の乾物重について単回帰分析を行ったところ,湛水処理が必要な除草剤の防除効果の主たる変動要因は除草剤処理時の切断茎の乾物重であった。一方,Flo乳剤は切断茎の乾物重によらず高い防除効果を示した。水田畦畔用除草剤では全除草剤が生育期までの個体の地上部と地下部に高い防除効果を示した。DCMU水和剤,グリホサートカリウム塩液剤,ビスピリバックナトリウム塩3%液剤,Flo乳剤(水田畦畔の農薬登録はない)は生育期の個体の地上部と地下部を完全枯殺した。
日本各地の河川堤防や河川敷において,アブラナ属(Brassica)の植物が定着して優占し,春季に一斉に開花する群落が見られている。また近年,穀物輸入港の周辺の路傍で“外来ナタネ”の定着・自生が確認されている。日本では以前からアブラナ属の自生種に対する誤同定が多い状況が続いており,分布や生態に関する実態の正確な理解を妨げている。日本におけるアブラナ属,とくにアブラナとセイヨウアブラナ,カラシナの3種について概説し,その形態的・生態的な特徴を示した。さらに,2000年以降に出版された主要な帰化植物等の図鑑と,図や解説のある主要な地方植物誌におけるアブラナ属の掲載状況を検討した。主要な専門書(図鑑等)において,栽培種と認識されているアブラナが掲載されていない,あるいは誤りを含む記述がされており,それがアブラナをセイヨウアブラナとして誤同定され続けている主因と思われる。今後,アブラナ類の調査について,正確な種同定に基づいて再検討した上で,影響の再評価がなされるべきである。